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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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重い身体

静希が自身が思い浮かべる作戦を二人に説明すると部隊を預かる隊長と副隊長は眉間にしわを寄せて唸り始める


理屈はすべて話した、これからの流れも話した、成功率も話した、後は二人が納得するかどうかである


実際これをやって上手くいく可能性は五分五分だろう、人の生き死にが関わっているだけに重要性は非常に高い


だがこのまま手をこまねいていれば取り返しのつかないことになるかもしれない


「・・・ミスターイガラシ、君としてはこの事件をどう捉えているんだ?」


「言葉の意味がわかりませんね、どういうことですか?」


「この事件に関わっているのは上からの要請があったからと聞いている、金銭程度で引き受けるほど君が無能だとは思えない・・・なにが目的だ?」


随分遠回しな言い方から直線的な言い回しに変わったものだとため息をつきながら静希はテーブルの上に座る


ある程度態度を演出することもこの場では必要だ、少なくともこちらにいるまでは


「こっちとしちゃ面倒事はごめんですけど、いろいろと上には弱み握られてるんでね、こっちもそれなりの物を掴んで関係を対等に持ち込みたいってのが一つだな」


静希からすれば自身が悪魔の契約者であることを知られている


それはイギリスの政府関係者か、それとも能力関係の人間かそこまでは分からないが今静希は政府が承認した実験が発端の事件に関わっている


この事件を解決すれば城島の言っていたように関係をイーブンに持ち込めるだろう


「・・・他にも理由が?」


「あぁ・・・こっちはあくまで個人的な主義だけどな、こんなところまで来たんだ、どうせなら完璧にこなしてやりたいって気分でね」


机から降りて静希は迷惑そうに頭を掻き毟りながらテッドの目を見る


自分の性分としても、そしてあのエドモンドという人間と会って実際にそう思った


不可解なことが多いまま放置するというのは静希は耐えられない


特に今回は悪魔が関わっている、そして以前静希がメフィと契約するきっかけにもなった事件にも繋がっているかもしれない


これを放っておくなど静希にはあり得ない


「わかった・・・こちらも協力しよう・・・だがまず第一条件がクリアされていないようだが・・・」


「問題なし、俺が直接交渉するよ、発見したらすぐに俺の方に知らせてほしい、だけど絶対に手は出さないでくれよ?それは徹底させてくれ」


静希はよろしく頼むよと言い残して部屋を出る


大野と小岩が不安そうに見る中、静希は額から出た僅かな汗をぬぐいながら大きくため息をつく


「どうだった?」


「交渉自体は成功、次はもっと面倒な奴を説得しなきゃな・・・」


成功という言葉に二人は安堵しているが先ほどとはまた別の障害が立ちふさがっている


実際こっちの方が面倒だと言わざるを得ない


時間はそろそろ三時になろうというところ、活動時間も短くなってきている


何より疲労が徐々に蓄積されている、何せ朝から動きっぱなしだ


静希は悲鳴を上げる体に鞭を打って大きく伸びをする


「うっし・・・それじゃ最大の難敵にお話をしに行きたいんだけど・・・どうすっかなぁ」


静希がこれから会おうとしているのは今回の敵に設定されていたエドモンド


だが彼は今絶賛逃走中である、そう何度も遭遇できるとは思えない


「一度ホテルに戻って休憩した方がいいんじゃないか?さすがにノンストップじゃ・・・」


確かに静希の身体はかなり疲労がたまっている


今日だけで相当濃密な時間を過ごしているのだ、肉体的にもそうだが与えられた情報が多すぎて脳がパンクしそうになっている


活動時間自体はそう大したものではないのにその行動の濃さと考える事の多さ、そしてまだ完全に慣れていない時差のせいで訓練以上の疲労が静希を襲っていた


「まぁ・・・今はできることは報告を待つか接触を待つくらいですけど・・・」


「なら休みましょ、休むことも仕事の内よ」


二人に言われ、勝手にニコラスに行き先を指定され仕方なく静希は一度ホテルに戻り休憩をとることになってしまう


一刻も早く事件を解決したいというのもあるが、早く日本に帰りたいというのもある


まだこちらに来て一日経過したところなのにもう何週間もここにいるような錯覚を受けている


ホテルの部屋に戻ってベッドに横たわると身体が疲労を自覚しだしたのか、それとも安心したせいなのか、どっと身体が重くなる


「それにしても、そうしているとただの学生にしか見えないんだけどね」


「確かに、あんな風に戦える人と一緒とは思えないわね」


疲れを見せている静希に対して大野と小岩はそこまで疲労がたまっているというわけでもなさそうだった


静希程多く戦闘を行っている訳ではないにせよ行動時間と範囲は同じようなものなのにこうまで疲労のない姿を見せられるとは、やはり経験の差だろうか


「実際ただの学生ですよ、俺自体は特別なものなんてなにもないただの能力者なんですから」


その言葉通り、静希にこれと言って特別な何かは無い、ただの収納系の能力者


能力に僅かに付与の力が含まれていることが最近になって分かったがそれも特筆するほどの事ではなく能力ならよくあることだ、今まで気づくことができなかった自分も相当間抜けであると思うが、自分の能力を誤解することは良くある


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