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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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情報開示と組織の歪

静希がその言葉を言い終えるとテッドは眉間にしわを寄せてその目をまっすぐに向けてくる


目をそらさずに無言で答えると根負けしたのかテッドは額に手を当てる


「どうやら冗談ではないようだな・・・一応聞いておくがその根拠は?」


「まだ状況証拠しかないが、それでもいいか?」


その言葉に静希は今まで考えていた可能性の話をする


「まずエドモンドじゃ十七人は殺せないってのはそっちも考えていた通り、それに対して教授は変換系統だと言っていた、形状変換だけだとしても現場に残されていたロープを使えば十分あの数を殺すことはできるだろう」


変換能力で形状変換のみ使用できる能力は珍しくない、今回のような場合なら天井から見えないようにロープを仕込み油断したところでロープと天井の形状を変換、一気に上に引き上げることで絞殺する


その場にロープを残していては自分が怪しまれることを恐れて教授は調べられそうにない換気扇の空洞を利用、そしてエドモンドの後を追う際に監視カメラの存在を思い出す


警察と軍部への連絡を終える前に管制室に向かい記録されているデータをいじる


すぐに逃走したエドモンドに比べノーマン教授はまだ時間的猶予があった、この程度の工作は能力者であれば十分可能だろう


「次に・・・教授の提出した今回の実験の報告書、これが気になる」


「報告書?」


静希にはこの情報は開示はされていないはずだがと訝しむがこの際細かいことは抜きにしようとそのままの姿勢を保っていた


静希からすれば質問されなくて助かったというところだ


もし実月に調べてもらったことがばれれば彼女にも迷惑がかかる


いや、彼らの反応を見るに恐らく彼ら自身も報告書の詳細を知らない


恐らくは情報規制がかかっているのだろう


国家プロジェクトなら関係者以外には内容は明かさないのは当然だが、まさか軍の人間にまで情報閲覧の権利が与えられていないとは思っていなかった


この事に関しては静希にとって好都合だった


「途中経過報告書では全て実験予定日が事件当日になってた、なのに最終報告書だけがその三日後の日付に変更されていた」


「それだけなら特におかしい事は無いのでは?急遽不手際があったり・・・」


「不手際があって遅らせたなら当日まで召喚陣は発動できないはずなんだ、その不手際が軍のものかそれとも実験に対してのものかは分からないけど、どちらにせよ事件当日に召喚陣が発動したのは偶然なんかじゃない、それも変更しているのは教授だけ、あからさまじゃないか?」


それは何者かによって引き起こされた明確なる必然、それを起こすことができるのは実験に直接関わっていなかったエドモンドではなく、実験の指揮をとっていたノーマンであると静希は考えていた


そのことを告げるとテッドは何やら悩んでいるようだった


今まで重要証言として扱ってきたものが一気に怪しくなってきたのだ、悩みたくなるのもわかる


「それと、これは参考程度にとどめておいてほしいんだが、エドモンドの能力は一度自分の目で見た物を空中に立体的に映し出す能力・・・その能力で事件当時の映像を見せてもらったんだ」


静希はあのとき撮影した映像をテッドに見せるとその表情はさらに雲っていく


実際この映像は確定的証拠にはなりえない


何故なら実際の映像ではなく、エドモンドが能力によって発現した映像であるからだ


能力である以上、改竄は容易い


だがエドモンドの能力が『自分の見たものを映しだす』能力だった場合、この映像は非常に有用な参考資料になる


「これを・・・どうやって・・・」


「エドモンドに接触した時、落ち着いて話をできる状況を作ってその時に聞いた・・・そんでその後教授にちょっとカマをかけてみたんだけどな」


当たりくさい反応をしてくれたよと笑いながらその時の話をするとテッドはいくつか資料を見ながらウォルトと小声で話し始める


さすがに今までの捜査形式を変えなくてはいけない事態に混乱しているようだった


今回の事件は悪魔が関わっているのも含め国柄というのもあるのだろうが警察ではなく軍が主体で動いている


警察の関与がない時点では非常にありがたいのだが、このままでは軍の面目が丸つぶれになる可能性だってある、何せずっと見当違いの犯人を総出で追っていたことになるのだから


恐らく国のプロジェクトが関わっているせいで重要書類の情報開示がされなかったのだろう


軍はただ怪しいと思われる人物を追うだけ、完全な連携をとれないのは組織の弱点でもある


「だがエドモンドの嫌疑もそうだが、今集まっているのは状況証拠のみ・・・決定的なものがなければ逮捕は難しいぞ?」


エドモンドに関しては悪魔を使用し軍部の人間に怪我を負わせたという理由で逮捕も可能だろう、もっとも殺人容疑が晴れれば正当防衛として扱われる可能性の方が大きい


それに対して教授はまったく証拠もなければ逮捕する口実もない


こうなってくると八方ふさがりと言ってもいい状況だった


「そうだろうな、そこで頼みがあるんだよ」


「頼み?」


静希は先ほどの内容が本命などと言ったが、今回ここに来た理由の本命はこれだった


現状静希だけでは行えない、そして教授を捕らえたうえでエドモンドを救うにはこうするしかないのである


少々危険ではあるがそこは上手く事を運ばなくてはならない


無事でいられるかどうかわからないのは静希ではなくエドモンドだ


そう言う意味では軍の協力が不可欠になる


何せ今エドモンドを狙っているのは軍そのものなのだ


これで協力を得られなければ静希が単独で行動しなくてはならなくなる、そうなった場合の成功率はかなり低い、それだけは避けたい事態だった


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