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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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危険の肯定

返答次第では小岩は静希を拘束するつもりだった


いや、拘束したところで静希ならいとも容易く抜け出して見せるだろう


だがそれでも彼の安全を任されている身としては止めなくてはならない


それに対して静希の言葉はあまりにも当たり前に危険性を肯定しつつそれを除去しようとしている


静希は本心からこの言葉を放っていた


その理由は誰かが死ぬのを見たくないなどという理由ではない、この事件の裏で手を引いている人間がいる、それを確信しているからだった


教授の部屋から見つかった召喚陣の記された書類の束


あれがただの書類であれば特に気にすることもない召喚実験の研究書類だと思えただろう


だがその中に静希の見たことのある召喚陣とメフィが召喚されたと証言する召喚陣が載っていて、そこに意味ありげな消去線が付けられていてはそう言う訳にもいかない


静希が巻き込まれた事件と関わった誰かが教授にあの資料を渡したと考えるのが普通だ


だからこそ今回の事件でこれ以上誰かが死んではいけない


少なくとも絶対に生かしておかなければいけない人物の中にエドモンドとノーマン教授は入っている


「それは・・・誰が危険なの?」


「・・・どちらかと言えばエドモンドです、もしかしたら殺される」


殺されるという単語に大野小岩両名の表情が強張る


今まで静希が戦う中で、そして何かを調べる中で可能性として死ぬのではなく殺されるという言葉を使うのは珍しい


そして今その言葉を使う程の重要な局面にいるということだ


「・・・じゃあこっちの隊長に一体何を話すつもりなんだい?」


「簡単に言えば協力の要請です、ここまで露骨に怪しくなってきたんじゃ、きちんとこっちのお偉いさんにも話さないと」


さすがに今回の事件は静希一人の手に負える事件ではない


すでに人は大量に死に、なおかつ事件解決の為協力を要請されたものの静希はただの学生だ


いくら悪魔を引き連れているとはいえ限界はある


餅は餅屋にという訳ではないが出来ることはきちんとやってもらわなくてはならない


「でも、信じてくれるかしら?今まで被害者の側だった教授が犯人だなんて」


「信じてもらわなきゃ困る、今までがどうであれ、あの人も能力者です、この事態も十分想定の中に入っていたでしょう」


だからこそ先に提案した教授への護衛強化の件をあっさり了承したのだろうと静希は言うが実際のところ確証はあっても証拠は無い


証拠なしに軍が動くかと言われると微妙なところだった


静希達がニコラスの運転する車で軍の駐屯地にたどり着きすぐさまテッドのいる部屋へと向かう


そこにはいくつもの資料を新しく机の上に積み上げてそれらを読み上げている隊長テッドと副官のウォルトがいる


実動部隊で何度かウォルトの姿は見かけたがこの場にいるのは珍しいなと静希は周囲を見渡す


「やぁ、今日は忙しそうだね、何か用かな?」


「用がなきゃこんなところには来ませんよ、ちょっと重要な話がありまして」


静希が目を細めるとウォルトは事態を察して周囲に部隊の人間以外が誰もいないことを確認したうえで扉を閉めて鍵をかける


盗聴などもないかを厳重にチェックした後にウォルトが僅かに頷くと座ったままのテッドは大きくため息をつく


「どうやらあまりいい知らせではなさそうだが・・・」


「いえいえ、いいニュースと悪いニュース両方ありますよ、いや、どっちもこちらとしてはいいニュースなんですがね」


「・・・聞こうじゃないか」


テッドの眼差しが鋭くなると同時に静希はテーブルに歩み寄り顔を近づける


「今回の殺人の犯人はエドモンドじゃない、これはほぼ確定だ」


静希の言葉にテッドは大きく息を吐く


そして椅子の背もたれに体重をかけて天井を仰ぐ


「やはり君もそう思うか・・・」


「てことは、そっちもそう思ってたんですね」


静希の切り返しにテッドはその通りだと言って静希に資料を渡す


そこには先ほどの戦闘、いや地下鉄でエドモンドが逃走時に使用した能力や状況のことが記されていた


そう言えばあの状況を見ていた軍人も大勢いるんだったと思いだして静希は僅かに笑う


「部下の報告を見る限り、エドモンドは発現系統、しかも映像を出すだけの能力者だ、だが被害者は全員ロープで絞殺・・・あぁそうそう、君が見つけた天井の換気口にあった異物、あれが凶器だと断定されたよ、僅かに被害者の皮膚が見つかった」


なるほどさすがは軍、静希が感じた違和感とは別のところからしっかりとエドモンドが犯人ではないのではないかという辺りをつけていたという訳だ


きっかけは静希の行動によって生み出されたものだがさすがにここまで証拠が出てきてこのままエドモンドを追い続けるほど無能ではないようだ


「そのニュースはいいニュースか?だとしたら興ざめだぞ?」


「いいや、こっちは悪いニュースのつもりだったんだけど、もう一個のほう、こっちが本命・・・犯人はノーマン教授である可能性が高い」


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