表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

326/1032

善人に非ず

「エドモンド、俺はこの事件に関しては部外者だ、はっきり言ってお前が捕まればその時点で俺はお払い箱にされる、それじゃ目覚めが悪いんだよ、誰が犯人なのかはっきりさせないと気が済まないんだ」


自分を巻き込んでおいて、十七人も死者を出しておいて中途半端なままはいさよならなんて静希には我慢できなかった


自分の時間を奪っておいて勝手に話を終わらせようとするなど腹立たしくて仕方がない


今静希は義務感で動いているのではない、ただ解きかけのパズルを他人に奪われないようにしているだけ


「お前がこれからどうしたいのかは知らない、お前の事情だって知らない、だけど俺にも事情があるんだ、こんな面倒なことに巻き込まれたんだ、精々あいつらに恥かかせてから堂々と帰国してやる」


それは今までの軍部隊に直に接触して思ったことでもあった


自分を駒としか見ていないようなそんな対応に苛立ちを感じていたからこそ、今こうまでして静希は動いている


静希は元来善人ではない


誰かを助けるなど静希はできない、誰かを守るなど静希はできない


だからこそ静希は自分のしたいように動くのだ


それは他人の為ではなく自分の為であるが故に


「俺はもう行くぞ、これからやらなきゃいけないことが山ほどあるんだ、またどこかでお前に会いに来るかもしれないけど、その時まで捕まるなよ」


静希はメフィをトランプの中にしまい、能力を使用したフィアにまたがる


「待ってくれ!最後に一つだけ・・・」


「・・・なんだ?」


すぐにでも駆けだしそうなフィアを止めて静希は首だけで振り返る


「君は・・・僕の味方なのか・・・?」


その言葉に静希はため息をつく


はたから見れば奇妙な共闘関係を築くに値するだけの功績を静希はこなしてきた


だが静希は首を横に振る


「お前が犯人と共犯である可能性もまだ残ってる、俺はまだお前の味方じゃない、だから警戒してろ」


それだけ言って静希はフィアを高速で移動させる


地下鉄の線路上を移動し続け駅のホームから進入して地上へと飛び出る


何度か建物の屋上を経由してこの辺りで比較的高い建物の上でフィアの能力を解除させる


随分と話し込んでしまった


大野と小岩は上手くやっているだろうかと僅かに心配になり周囲を見渡す


『で?これからどうするつもりなの?』


『俺としてはもう一度現場をしっかり見ておくべきだと思うんだけど、どう思う?』


静希がトランプ内の人外達に話を持ちかけると各々思考を巡らせながらああでもないこうでもないと考えをまとめていく


『エドモンドよりもあのノーマンという教授があやしくなった以上、そちらの調査を進めるべきだな、もう一度部屋に侵入するのはどうだろうか』


『いえ、それよりも教授にわざと情報をリークして泳がせるのもありかと思われます、ああいう手合いはその方が上手く釣れる』


邪薙とオルビアの意見としては教授を調べる方向で決定しそうだが、肝心のメフィはずっと黙ったままだ


『私としてはシズキが言うように現場をもう一度見ておいた方がいいと思うわ、能力を使ったにせよロープで絞殺っていうのはわかってるのに凶器が見つかってないんだし』


探しておいて損は無いと思うと珍しくもっともらしい事を言いながら飄々とした声を響かせながら人外作戦会議は終了する


『じゃ、現場を探した後で教授のところに行ってみるか、さすがにもう一度部屋に侵入ってのはハイリスクすぎるな、そう何度もニコラスから離れるのはまずい』


ただでさえ今日ニコラスのそばから意図的に離れているのだ、一日に何度もそんなことをしたら最悪見張りを増やされかねない


方針としてはまず現場をもう一度見てみる、そしてその後教授と話をする


そんなところか、と静希が辺りを見渡していると建物の下の道路で誰かが手を振っているのが見える


どうやら大野のようだった


移動中に静希を見つけたらしい、近くにはニコラスと小岩の乗る車も見える


静希は階段で屋上から降りてすぐさま三人と合流する


「お疲れ様です、そちらの首尾はどうですか?」


「こっちは問題ないよ、そっちは?怪我とかは無いかい?」


「無事ですよ、結果は上々ですかね、できる事も増えました」


静希の言葉に安心したのか大きく息を吐きながら車に乗るように促す


静希の無事を見て小岩とニコラスも僅かに息を漏らし安心している様子を見せた


「ミスターイガラシ、目標は?」


「すいません、途中で見失いました、土地勘無いとやっぱり辛いですね」


そうかと呟きながらニコラスは無線で静希を回収した旨を部隊へと伝える


その様子を見て後部座席に背を預けて静希は大きく深呼吸する


我ながら無茶をやったということは自覚していた


犯人の可能性のある人物と直接、しかも一対一の状態で話し合った


肉体的疲労は無いが精神的疲労は確実に蓄積している


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ