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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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契約者と契約者

後方から何発かの銃弾と能力が飛んでくるが静希にもエドモンドにも当たらない


狭い地下通路を移動しているというのにその速度と攻撃への回避は恐ろしいまでの精度を誇っていた


やがて静希達が入ってきた地下鉄の駅ホームが見えてくるとそこから強い光が照射される


大野と小岩の両名も協力してエドモンドのいる方向に向けて光を照射しているのだ


「邪薙、頼むぞ」


『任されよう』


光に紛れ駅構内に侵入するための道を邪薙の障壁が塞ぎ、エドモンドはそのまま地下鉄線路を直進することを余儀なくされる


静希もそれに続き高速で移動する


後方からの射撃が激しくなっているが大野と小岩の放つ照明の光が逆光となり照準が定まっていないようだった


静希が二人に頼んだことの一つがこれだった


万が一にもエドモンドに銃弾が当たった場合それですべてが終わってしまう可能性がある


悪魔が回避行動を行っているためエドモンドが被弾する可能性は低いがそれでも少しでも被弾確率を下げる必要がある


直進するエドモンドと静希はいくつかの小隊と接触するがそれらを完全に無視して直進し続け、連絡用通路がある場所で邪薙に障壁を張ってもらいそれ以上移動できないようにする


ヴァラファールはその場で停止し追ってくる静希の方を向く


「ようやく話ができるな、エドモンド・パークス」


「う・・・君は一体・・・」


エドモンドは追い込まれたと思っているのか非常に焦っているようにも見える


少しすると静希達がやってきた方から何人かが追ってくる声が聞こえてくる


静希は指を唇にあてて音をたてないように指示すると、聞こえてきた足音は静希達と接触する前に停止する


耳を澄ますと『了解、これから地上に向かう』という内容が聞こえてくる


静希が大野と小岩に頼んだ二つ目の頼みがこれだ


静希達の姿が見えなくなったら自分たちが他の駅から地上に出て追撃戦をしているという偽の情報を流してもらう


現在静希と連絡をとれるのは大野と小岩のみということになっている、そう難しい話じゃない


実際は静希の携帯は海外では使えないために全く連絡できない状況にある訳だが


「ようやくまともにお話しできるわけね、ずいぶん手間かけさせてくれたわね?」


トランプの中から勝手にメフィが現れるとエドモンドは僅かに警戒を強めるがヴァラファールにはその様子がなかった


「ヴァル、逃げないと・・・!」


「いやエド・・・どうやら今までとは事情が変わっているようだ」


エドモンドと違いヴァラファールは状況を正しく理解できているようだった


少なくとも今の状況で戦闘をする気は静希達にもないということが伝わっている、さすがは悪魔というべきか


「話が聞きたい・・・研究者十七人を殺した犯人についてだ」


静希の言葉にエドモンドは歯ぎしりして静希を睨む


「君達は・・・僕が犯人だと思っているんだろう・・・だから・・・」


「いや、今のところ俺の中でお前はもう犯人じゃない」


その言葉にエドモンドは眼を見開いたが、静希が一体どういう意味でそれを言っているのか理解できていないようだった


事件発生からもうすでに丸二日、すでにエドモンドはかなり疲弊している、当然と言えば当然かもしれない、心休まる暇もなく部隊や警官から逃げてきたのだ


本来所属する大学で研究を行えるほどの知力を持ちわせていてもこの悪状況では思考力も何もかも減衰するだろう


「細かい根拠や証拠は抜きにするが、お前があの十七人を殺すのは不可能だ、俺はそう結論を付けた・・・今一番怪しいと思ってるのはノーマン教授だ」


ノーマンの名前を出したとたんにエドモンドは拳を強く握る


どうやらエドモンドは何かを知っているようだった


ここまでまわりくどい事をした甲斐があったというものだ


「ねえヴァラファール?知ってることがあったら教えてくれない?私たちとっても困ってるのよ」


「困っているのはお前ではないだろうメフィストフェレス・・・いや・・・そちらではないというべきか」


自分にまたがる人間を一瞥し獣型の悪魔は大きくため息をつく


その様子は動物というより少し老けたサラリーマンのようだった


「ヴァル・・・」


「エド、話くらいは聞いて損は無い、敵対したなら返り討ちにすればいいだけの話だ」


ヴァラファールの僅かな攻撃的な発言にメフィも対抗意識を強めて静希の周りを旋回するがこんな地下で悪魔の能力同士をぶつけたら何が起こるかわかったものではない


「まず自己紹介させてもらう、俺は五十嵐静希、今回の事件の解決の為に日本から呼ばれた、こっちは俺の契約してる悪魔のメフィストフェレスだ」


「・・・こっちの自己紹介は・・・いらなそうだね」


エドモンドの言葉に静希は軽く笑いながら二人を作業用区画に連れ、線路上の障壁を解除する


静希が腰を下ろすとエドモンドはヴァラファールから降りて静希とは少し離れた場所に腰を下ろした


「それで、イガラシ・・・君は一体何を聞きたい・・・?」


どうやらエドモンドも静希が今は敵ではないということを知り僅かに頬を緩めるがこちらへの警戒は怠っていないようだった


静希がこれまでにした行動と、そして静希の容姿もまたエドモンドの強い警戒心を緩めるのに効果的だったのだろう


何故なら静希は先ほどから今に至るまで、攻撃できるのに攻撃せずこの場にいる


そして静希の姿は良くも悪くも子供だ、日本人は幼く見られがちだがそのことが今はいい意味で発揮されたというべきだろう


エドモンドの言葉に静希は軽く思考した後に手元のメモを見て一番最初に聞かなくてはならない事を口に出す


「監視カメラに映っていなかった・・・事件当時の事を知りたい、あの数分間で一体何があった?」


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