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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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目標の正体

茶色い髪、充血した瞳、そして額には壊れて鼻より下部分が欠損した仮面がずれた状態で装着されていた


静希はその仮面に見覚えがあった


「人・・・よね・・・?」


「何の冗談だよこれは・・・」


「え・・・?どういうこと?」


「・・・?」


全員が混乱している中、目の前の少女は牙をむき出しにして威嚇しながら静希達から距離をおこうと後退する


「静!皆大丈夫か!?」


先行していた雪奈も帰ってきた、ちょうど少女を挟み撃ちにする形になる


その状況をまずいと判断したのか、少女は姿勢を低くし力を込める


「やばい!静希!後ろに飛べ!」


「あ、あぁ!」


「え?きゃあ!」


陽太の指示に反応しきれていない明利を抱えて少女から距離を取る


雪奈も危険と判断したのか道脇の物影に避難する


それが合図だったかのように少女が衝撃音とともに跳躍する


その方角は壊れたフェンスのある村の西部


「まずい!逃げる気だぞ!」


「やめろ!この暗闇じゃ山に入った時点で向こうの勝ちだ、それよりも問題は・・・」


「問題は・・・あれがいったい何なのかってことだな」


物陰から出てくる雪奈は右腕を抑えながら静希達のところに歩み寄ってくる


「雪姉!怪我したのか!?」


「あぁ、ちょっとしくじったかな、はっはっは」


笑って見せているが、さすがに辛いのか、額からは汗がにじみ出ている、腕からは血が少量流れているのも見て取れた


「動物だって聞いてたのに、いきなりあれだろ?びっくりしちゃってさ」


「無理にしゃべらなくていいから、村長の家に戻ろう、ちゃんと消毒しないと」


変形させてしまった地面を元に戻し、静希達は城島の待つ村長の家へと戻っていった


負傷して戻ってきたことには驚いていなかった様子だが、負傷したのが雪奈だという事実に城島は驚愕していた


「お前が怪我をするとは、どういうことだ?」


「それはこっちが聞きたいです、なんですかあれ」


痛みをこらえながら、雪奈は静希の肩を借りて玄関に横になる


「陽太君、すぐにお湯をつくって、すごく熱いの」


「おう、任せろ!」


「静希君は私のカバンから医療キットを」


「わかった!」


医療に関してはこの場の誰よりも明利が精通している、そしてこの分野ではさすがに自信があるのか、迷いのない指示を飛ばす


何事かとやってくる村長夫妻を城島に抑えていてもらい緊急で処置を始めていった


「ちょっとだけ患部が熱くなるかもしれないけど、雑菌も全部処置したし、これで一安心」


数分後、雪奈の腕には傷痕一つなく、全員が息をつく


「大丈夫かい?救急車とかは」


「へ、平気です、お湯で傷口を消毒して、雪奈さんの中に入った少量の雑菌も拡散する前に雪奈さん自身の抗体で撃退しました、傷口もふさいだし、これで問題ないはずです」


「よかった、さすが明ちゃん、頼りになるぅ」


「いえ、そんな」


明利と雪奈の近くにはお湯とガーゼと清潔な布が大量に置いてある


そのほとんどに血が付き、明利の手にも少しだけ血が付着していた


明利の治癒、先ほどの場合自然治癒をするだけではなく体内の抗体の力も強化し、雑菌を排除、その際に出る膿をガーゼなどで拭き取ってから傷口を清潔な布で覆い、治癒によって塞ぐ、洗練された、そして能力を使用した適切な処置だった


「で、何があった?深山が負傷するなんてただごとじゃないぞ」


さすがの城島も雪奈の負傷の原因が気になるのか問いただす


「まあまあ、とりあえずここじゃなんですから、続きは食事をしながら」


「そうですよ、せっかくの料理も冷めてしまいますよ?」


夫妻の提案に全員が食事の途中であったことを思い出し、食卓についた


もっとも、議論する内容はずいぶんと変更させられてしまった


ただの奇形種の犯行と思っていた、だがあの姿は明らかに人間、獣とは思えなかった


食事を取りながら先ほど起こったことを順々に報告していった


城島は腕を組んで唸りだす


雪奈は先行し、陽太の光に照らされながら目標に接近、姿が見えたところで先制攻撃を加えようとした時、目標の姿が人であることに気付き、その動揺の隙をつかれ負傷


陽太が目標に攻撃を仕掛ける直前、目標が力を込めるような動作をした瞬間、衝撃が体に加わり、後方に弾き飛ばされた


これが二人の報告だった


後の四人の報告はまったくの同一、獣ではない、人を見たと


「ったくどういうことだ、狼少年、あいや狼少女とでもいうのか?」


城島も事態を測りかねているようだ、だがその時、携帯を見ていた静希が手を止める


「先生、これ見てください」


携帯画面に映し出されたのは先ほど移動中に起動していた録画機能だった


途中までは暗くてほとんど何も見えていないが、陽太が弾き飛ばされてきたあたりからところどころ見えるようになり、火力をあげた瞬間の目標の姿を捉えていた


「これが目標か、確かに獣には見えないな、二つ目があるっていうのも、仮面がそう見えただけ・・・」


「この仮面、見覚えないですか?」


自分で言っていて気がついたのか、城島は自分のカバンをあさりだし一つの資料を取り出す


「どういうこと?」


「お前らも今朝見ただろ、エルフの行方不明の女の子の捜索任務の資料」


城島が取り出し、テーブルの上に置く


そしてその横に、先ほどの目標が映し出された携帯画面を並べる


目標の仮面は下半分が破損しているものの、上半分の特徴的な文様は一致している


「これって・・・」


「そういうこった・・・」


全員が驚愕に目を疑う、だが目の前の事実は変わらない


「目標は、エルフだ」


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