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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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同じ血の疑惑

『もしもし?どちら様かな?この番号を知っているのは数少ないはずだが?』


電話の向こう側にいるのは静希の知人、そして友人の姉


「もしもし、五十嵐静希です、お久しぶりです・・・実月さん」


そう、今回の電話の相手は陽太の実姉、響実月だった


本当にできる限り頼りたくなかった人物である


『おや、番号が変わったのか?だったらメールで知らせてくれればよかったのに』


「いえ、諸般の事情で携帯を借りているんです、実は折り入って頼みがありまして・・・」


静希がそう言うと実月は少し待ちなさいと告げて何やら作業を始めてしまう


その数秒後にほう・・・と興味深そうな呟きの後にまた受話器に声を向け始める


『何故君がそんなところにいるのか、それと関係があるのかな?』


「・・・はい」


恐らくは携帯とパソコン両方に同調をかけて静希の使用している携帯がどの基地局や衛星を経由しているかを突き止め現在地を割り出したのだろう、その作業すら数秒で終わらせる、実月は本当に敵に回したくない人物だ


『そして君がわざわざ私に電話をかけてきたのだ、自分だけではどうしようもなくなったといったところか?』


「えぇ、正直このままだと手づまりです・・・出来るなら迷惑はかけたくなかったんですけど・・・」


静希の言葉に実月は軽く笑い声を届け始める、面白い事を聞いたという少しだけ浮ついた笑みだ


『君らしいといえば君らしいな、だがそう気にすることは無い、いつも陽太が世話になっているんだ、少しくらい頼ってくれた方が私としては嬉しいよ』


「そう言ってくれると有り難いです」


静希の中の『姉』のイメージは完全に二分する


自らの姉貴分雪奈のような普段はダメダメだがやる時はやるというメリハリ型


陽太の実姉の実月のような常に凛とし隙のない様相を漂わせる完全型


雪奈に対しては適当な態度をとれる静希であってもこの実月と言葉を交わす時は毎度僅かながらに緊張してしまう


『では時間もないだろう、本題に入ってくれるか?』


「その前に、この会話は盗聴とか大丈夫ですか?一応結構重要な話をするんですが」


『はっはっは、私の直通回線を盗聴しようものなら一秒もかけずに割り出して見せるさ、少なくともプロテクトとダミーを今三十くらい張ったところだ、気がねなく話すといい』


こちらと会話しながら完全にプライベートな会話ができるように保護までかけているあたり本当に優秀だ


この人が本当に陽太と同じ血をひいていると言われて十年以上、何度疑ったか分からないが純然たる事実なのがなんとも性質が悪い


「じゃあ、実月さんはイギリスで行われる予定だった悪魔の召喚実験の事はご存知ですか?」


『・・・まさか君の口からその言葉が出るとはな・・・少し意外だ・・・そこに陽太もいるのか?』


「いえ、俺だけです」


その返答に少しだけ安心したのかそうかと呟いて実月は大きくため息をつく


この場に陽太がいれば確実に危険が弟に襲いかかるだろう、そこを心配しているのだろうが陽太は今、日本である意味悪魔よりも恐ろしい教官にしごかれているところだろう


少なくとも命の心配はいらない


「実月さんはこの実験どの程度まで知ってますか?」


『・・・実験がおこなわれる前に何者か・・・具体的にはロンドン大学の研究員エドモンド・パークスによって研究員が十七人死亡、そして悪魔を召喚した後逃亡した・・・この程度の情報しか入っていないよ、確証のない情報でしかないが、現地・・・そちらではそういうことになっているらしいね』


今回の事件の概要のほとんどをすでに知っている


実際に事件が起きてからまだ丸二日しか経っていない、一般報道もされていないのにどうやってその事を知ったのか


いや、この人の事だ、興味半分で警察やイギリス政府の統括するサーバーにハッキングして情報を引き抜いたのだろう


痕跡すら残さないところは流石の一言だ


「確認したいのはその実験の研究途中経過報告書と最終報告書の内容です、どうしても見せてくれなくて」


『・・・そうか、そう言うことか、日本に極秘裏に応援を要請したのは・・・』


実月は何度か呟いて先ほどよりも大きなため息をつく


呆れているというよりもどうしてこうなったのだと僅かな動揺と焦りも見える息だった


『一つ確認・・・いや、聞かなければならないことがある、事によってはご両親に報告も必要になるかもしれない、君は一体どれほどの事に首を突っ込んでいるのかわかっているのか?』


実月の言葉には重さがある


それは経験から来るものでもあり、その言葉の裏に潜む状況を静希が理解できるからこそ重みを持つものだった


「今回のことは俺がヘマこいたことへの尻拭いです、どれだけのことかは分かっているつもりですが・・・もう、こうするしかないんですよ」


その重さを理解しているからこそ静希は言わなければならない、自分の行動の結果が招いたからこそ、こう言わざるを得なかった


今回の件でこの国に対して恩義を作れば悪魔の契約者であるという事を知られた事を隠してくれるかもしれない


何せこちらは国家プロジェクトの失敗の一端に関わっているのだから


相手が手玉に取っているのはあくまで一個人の情報、対してこちらが握っているのは一国が手掛けた研究が引き起こした事件の顛末


どちらが重要かは火を見るより明らかだ


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