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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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地下の痕跡

「この場所は調べたんですか?」


「あぁ、痕跡のあった場所などはすべて調べた、ここから先は地下鉄に直接つながっている」


「なら決定ですね、許可は取っておいてください」


勝手に入る訳にはいかないのでニコラスに許可申請を頼んで静希はさっさと格子を取り外して中に入っていく


静希達が効率良く動くためには誰かが別行動で移動の許可をとらなければならない


現地で許可をとれる人物は今ニコラスしかいない


「ちょ・・・本当に行くの・・・?」


女性としてはこのような場所から地下に行くのは些か抵抗があるのか小岩は眉をひそめて嫌そうな顔をしている


「なら小岩さんはニコラスと一緒に鉄道会社の方に行って許可をとりつけて来てください、一緒に行った方が許可も取りやすいでしょ」


これが日本とイギリスの合同の任務であることが分かれば会社としてもNOとは言えないだろう、あまり圧力みたいなことはしたくないが自分が犯罪者になるよりは何倍もましである


口に小型のライトを咥えて手や足を突起にかけながらゆっくりと地下へと降りていく


静希の後に大野も続き二人で地下を探索することにする


さすがに人の通るべき道ではないために狭いが人一人なら普通に通過できそうだ


「それにしても良かったのかい?あの二人で別行動させて」


「いいんですよ、いい加減監視もうざかったし、監視は裏を返せば護衛です、何かあってもニコラスが何とかするでしょう」


静希が今回ニコラス達と別行動させようとしたのは二つの意味がある


一つはニコラスの監視から逃れる事、悪魔の事を調べるためには悪魔であるメフィの協力が不可欠だ、いちいち存在を隠していては効率が悪い


もう一つは静希が単独で行動できることだ


今回は大野もついてきたが出来るなら静希は一人で行動した方が早く動ける


いちいち誰かに状況を説明する必要もなければ思った事を即座にすればいいだけだ


普段一緒に行動することに慣れた班員ならむしろ一緒にいた方が早く事が進むのだが今は即席のチーム、単独行動の方がよほど早く進む


通気孔の中は砂埃が大量にあり、お世辞にも綺麗とは言えない環境だったが進めないことは無い、酸素も十分あるらしく呼吸にも困らない


強いていえば悪臭が酷いくらいだろうか


恐らくネズミなどの小動物が根城としているのだろう、ところどころに糞なども発見できた


小動物だけでなく虫なども大量にいるらしく、いたるところに蜘蛛の巣が張られている


「にしてもこんなところに潜ることになるとはね・・・優雅なイギリス探索になると思ってたんだが・・・」


「それだけ相手も必死ってことですよ、日中はかなりの数で動いてるのに見つからないなんてどっかに潜伏してるしか考えられないです」


潜伏箇所が建物かそれとも地下かは分からないが調べる価値はある


探知能力者がどこまで働いているかは分からないが問題は今も地下鉄が運航し続けているという点だ


そんな状況で大部隊による捜索を行う訳にもいかないし地下鉄を止める訳にもいかない


静希なら人の多い日中はどこかに隠れ暗い夜間に動く


静希達が地下に降り立つとそこはどうやら作業員の移動用区画のようで、すぐ近くにレールなども発見できる


「さて、どう探すんだい?このまま歩くつもりじゃないだろう?」


「それじゃ日が暮れます、まずはここみたいな作業員が停滞できるか、または非常用の避難区画とか、地下鉄なら一応あるだろうからそこから見て回りましょう」


こういう時静希が索敵のできる能力であればどれほど楽だったことだろう、わざわざ足を使わずとも周囲の状況を知ることができただろうに


静希の周囲には薄暗い石のトンネル、ところどころ申し訳程度に設置された光源がやっと足場などを照らしている


調べるべき場所はこの地下鉄全体ではない、恐らく駅に進入する前後に感知能力者が網を張っているのだとすれば、潜伏するのはそこよりさらに前


大体駅と駅の中間地点、そのあたりに潜伏している可能性が大きい


もし潜伏していなくてもその痕跡は見つけられるかもしれない


情報の少ない今、僅かでもいいからエドモンドの行動に法則性を見つけたい


もはや藁をも掴むような気分だった


静希と大野が二つ目の作業区画についた時それは見つかった


それはゴミだった、何の変哲もないゴミ、だがその内容が問題だ


どこかで購入でもしたのか、それとも同じようにゴミの中から探しあてたのかサンドイッチや水の入っていたペットボトル


「ここにいた・・・ってことでいいのかな?」


「ここにいたのがエドモンドかどうかはわかりませんけど、ここに誰かがいたのは明白ですね」


能力者の感知能力による索敵も万能ではない


明利の能力が生き物にしか同調できないように必ず索敵には穴があり隙がある


そのため感知能力者は時折その場に残された痕跡を見逃すことがあるのだ


「この先にも通気孔がありますね・・・行きましょう」


「うへえ・・・」


お互いに嫌な顔をしながらまた狭い道とも言えない穴の中を進んでいく


狭い通路なだけに行動がかなり限られるがその分その場にあるものを注意深く見ることができる


「ここにいた奴は少なくともつい最近ここを通ったみたいですね」


「え?何でだい?」


これは先頭を進んでいる静希しか気付けないことだった


「さっき、入るときに通った場所には蜘蛛の巣が結構あったんですけど、ここには一個もないんですよ」


「ってことは、本当についさっきまで?」


「かもしれないです」


蜘蛛が巣を張る時間は平均的に一、二時間もあれば事足りるという


巣自体が餌をとるための重要な罠である以上それが破壊されることは死活問題だ、故に破壊された時の修復は非常に早い


入った場所とは別の場所にせよ一つもないというのは明らかに異常だ


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