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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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牙とリス

「それと、明日でいいんだがさっきのことを一応隊長に報告してほしいんだ、これも義務なんでね」


報告など自分たちで行えばいいとも思ったのだが張本人の静希の報告が最も重要度が高いということなのだろうか


どちらにせよこれ以上静希は起きているつもりは無かった


睡眠時間は十分なのだがこれ以上行動していると時差を修正できなさそうなのでさっさとこの場を後にしてホテルに戻ることにする


しっかりと睡眠をとり起床したのは朝の七時


身体に残る僅かな倦怠感を引きずりながら静希は大野と小岩をひきつれて大学の一室にいる隊長テッドの元へと向かう


「やあミスターイガラシ、昨夜はうちの部隊が世話になったそうだな」


「気にしないでくださいよ、こっちも十分厄介になってるんで」


軽く挨拶を交わした後で静希は作戦本部におかれているイスに座る


昨日見た地図の中に戦闘場所、目撃地点の印がつけられているところを見ると部隊の人間に詳しい状況などは聞いたようだった


「それで、聞きたいんだよ、君はいったい何者なのか・・・どんな能力を持っているのか」


「それはいう必要があるのか?」


「もちろん、これからの作戦に必要不可欠だからね・・・」


テッドは真直ぐに静希を睨みつける


どうやら静希の戦闘能力が有能だと部下から聞いたのか、どちらにせよ上手く利用するつもりのようだ


先日の対応とは随分と態度が変わっているように思える


だが何でもかんでも話してしまっては無駄な面倒事を引き寄せられる可能性もある


さてどうしたものかと静希は僅かに考える


「俺の能力教えた程度で今回の事件が解決するんですか?」


「するとも、君が正直に話してくれさえすれば」


その眼には僅かに敵意も含まれている


こうなると面倒だ、どこまで話したものかと静希は頭をフル回転させる


そもそも昨日いた部隊の人間がどこまで見ていたのかが問題だ


まずフィアの姿は確実に見られただろう


だがメフィの姿に関しては微妙だ、相手の攻撃の最中だった事もあり数人しか視認できていないのではないかと思える


「まずは昨日の状況を報告した方がいいかな、悪魔と遭遇したあたりのことは必要か?」


「あぁ、特に君が乗った正体不明の生物についても教えてほしいね」


テッドの瞳が僅かに鋭くなる


なるほどどうやらメフィの目撃情報はあまりなかったようでメインはフィアについての言及のようだ

ならば話は早い


「あれは俺のペットだよ、見せてやろうか?」


懐から取り出すように見せかけながら静希は掌にフィアを乗せる


机の上を駆けまわり地図の上で止まるフィアは自分を注視するテッドを興味深そうに眺めている


「ミスターイガラシ、隊員の話では三人乗っても余裕で高速移動が可能な程に大きな生き物だったと聞く、これはさすがに私をバカにしているのか?」


嘘をつくにしてももう少し上手くやりたまえと付け足し呆れながら煙草に火をつけ始めた


確かにフィアの外見は少し色と尻尾の形が違うただのリスだ


こんなのがあの獣ですと言っても信じられないだろう


百聞は一見に如かず


「フィア、変身だ」


静希が指を鳴らすとフィアが能力を発動し机の上に巨大な獣が顕現しテッドの顔すれすれのところで大きく口を開き咆哮する


呑気に煙草をふかしていたテッドは椅子ごとひっくり返って転がりながら銃を構える


外で警備していた隊員が何事かと入ってくるが静希が平然とし隊長であるテッドが警戒しているところを見てどうしたものかと慌てていた


「そんなにビビらないでくださいよ、中身はただの小動物なんですから」


巨大化したフィアの頭を撫でるとフィアもその頭を嬉しそうに静希の身体にすりつけていく


二、三警戒を繰り返しながら立ち上がりフィアに近づくテッドはかなり驚いているようで一歩一歩確かめるように歩を進める


「これがさっきの・・・鼠だというのか?」


「この子は能力保持動物でして、俺の言うことはよく聞いてくれますよ」


その頭に触れようとするのだが静希に僅かでも敵意を向けたテッドはフィアの中では敵だと認識されているらしく威嚇しながらその手を払いのけた


その様子を見て静希はカラカラと笑う


部屋に侵入した隊員も敵が来た訳ではないのかと理解すると再度退室していく


「あーあ、嫌われましたね、で?他に何か聞きたいことは?」


自分の前に立っているのは武器も何も持っていない少年一人


なのにそれ以上テッドは何かを言える気がしない


何せ目の前には少年を守るように身体を盾にし自分に威嚇を続けている巨大な獣がいるのだ


変なことを言えば、いやこれ以上静希に敵意を向けようものなら問答無用で攻撃を仕掛けてきそうなほどにフィアは牙をむいている


「わ、わかった、わかったからこの子を下げてくれないか、こうも威嚇されては話もできない」


「わかりました、フィア」


静希の呼びかけにフィアは能力を解除して元の小さなリスの姿になり静希の頭の上に駆け上がり丸くなって眠り始める


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