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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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呪い

この状況では人間なら即死だろうと判断できた


だが相手は悪魔


その事を静希とメフィは正しく理解していた


しかしその場にいた部隊は違った


一定時間攻撃を続け何の反撃もないのを確認すると攻撃をやめてしまったのだ


「バカ!攻撃をやめるな!」


攻撃の余波のせいで煙が上がっている中、部隊の人間が近づこうとすると煙を引き裂いて黒い弾丸が部隊の人間に襲いかかる


足や腹部に黒い弾丸を受けた隊員は黒く変色した被弾箇所を押さえてその場に倒れ込む


煙がはれるとそこには何の負傷も受けていない悪魔と同じくかすり傷一つないエドモンドの姿がある


悪魔の耐久力ははっきり言って異常だ、陽太の全力での攻撃もまったく意に介さないことから並みの能力者の攻撃ではびくともしないことは予測できた


先ほどの波状攻撃も全て悪魔自身が盾となって防いでいたのだろう


攻撃自体は効かないだろうがその場に悪魔をとどめておくことができたという意味であの波状攻撃は正しかったのだ


だが攻撃の手を止め、反撃を許してしまった


攻撃を受け続けていた悪魔が威嚇をした後、咆哮する


大気が震え、襲い来る音が肌を刺し、獣の周りに黒い球体が大量に顕現する


「やばいわね、あいつら死ぬわよ!」


「くそ!メフィ、邪薙、フィア!頼む!」


その声と共にフィアは跳躍、部隊と悪魔の間に滑り込む


邪薙の障壁が正面からの弾幕を防ぐも十発程度受けただけで障壁は破壊されてしまう


防ぎきれなかった黒い弾丸をメフィが能力でかき消していく


だがそれでも撃ち漏らした能力が部隊の人間に襲いかかりその体にダメージを与えて行く


そうやって能力を防いでいる間に目の前から悪魔とエドモンドはいなくなっていた


こちらは負傷者が多数


これ以上の追跡は無謀というべきだろう


そして先ほどまで能力を消し続けていたメフィの顔は何やら浮かない顔をしていた


「メフィ、どうした?」


「あ・・・ううん、何でもない」


言い淀んだ状態で周りを飛翔するメフィを不思議そうに見ながら静希はこの惨状をため息をつきながら見ていた


足や手など、被弾した箇所は黒く変色し異音を出し続けている


肉が蒸発しているような今まで聞いた事のない種類の音だ


「ミスターイガラシ、すまない・・・追い込んでもらったというのに・・・」


「いえ、気にしないでください、それより負傷者の手当てを」


他の人間にこれ以上見られる前にメフィとフィアを回収し静希も負傷者の手当てに向かう


と言っても静希に治療の技術は無い、道端に負傷者を集めておくくらいしかできなかった


「それにしてもこの症状って一体なんだ?火傷とも違うし・・・」


負傷者の被弾箇所を眺めて静希はその傷をカメラで撮影しておく


黒く変色した部分は服を貫通し皮膚まで至っている


皮膚は音を立ててさらに変色を続けてその範囲を広げているようにも見えた


毒か何かとも思えたが被弾箇所からまるで蒸気のように噴出される黒い煙が明らかに毒ではない何かであることを物語っている


『メフィ、この能力、なんだかわかるか?』


『これは呪いよ、ヴァラファールの能力は発現系統で・・・早い話、呪いを作る』


呪い


人を呪わば穴二つという言葉が残っているように呪いとはかなり昔から理論だけは残っている


だがそれが実在するとは思っていなかった、いや実在するというのは正しくない、なにせ能力で作られたものなのだから


『実際どんな効果があるんだ?』


『いくつかあるけど・・・そうね、被弾箇所に不幸が訪れるっていえばわかりやすいかも』


不幸、メフィはそういったが目の前で起こっている浸食は不幸というにはいささか凶悪すぎる気がする


そもそも不幸というと酷く抽象的だ、何が起こるのかさっぱり分からない


『具体的に言えば・・・骨折だったり皮膚が爛れたり、まぁ現実に起こるような不運が襲いかかるのよ』


またそんな適当なと言いかけた瞬間今まで聞こえていた異音が途切れ聞いた事のある蒸発に似た音が聞こえ始める


先ほどまで皮膚を覆っていた黒い何かは消えその代わりに皮膚が焼けただれ始めていた


それだけではない、並べていた負傷者の被弾箇所が次々と変化を起こしていく


焼け爛れる者、肉が裂ける者、骨が折れる者


メフィの言う通りの不幸が次々と襲いかかっているのがわかる


「うわぁ・・・あたりたくないな・・・」


症状が出始めたあたりで即座に治療のできる隊員が負傷者の対応に追われ始める


以前にも戦闘を経験しているだけあって慣れているようだったが、それにしてもこの状態は酷い


いや静希が割って入らなければもっと酷くなるはずだっただろう


これであの悪魔を包囲網の中に抑えておけるのかと思うと疑問が残る


「おーい!五十嵐君!」


遠くから日本語で叫びながらこちらに向かってくる影が二人、大野と小岩だ


そういえば屋上の上に放置していたのをすっかり忘れていた


「二人とも、無事で何よりです」


「それはこっちの台詞だよ、一応君の護衛ってことでここまで来てるのに・・・」


こちらの立場も考えてほしいよと注意されると静希は苦笑いしながら謝意を述べる


確かにこの二人は静希を守るためにこの場にいる、その静希が自分達の傍から消えてしまっては何のためについてきているのかわかったものではない


「それにしても随分早く追いつきましたね、結構とばしたと思ったんだけどな・・・」


静希はフィアに乗りながら悪魔を追いまわしこの地点まで誘導していたためかなりの速度で移動していたように思うのだが、彼らはものの数分でここまで来た


「この場所に追い込むってあらかじめ言ってたじゃないか、君がいなくなってから結構急いでここまで来たんだよ?」


「結局間に合わなかったみたいだけどね・・・」


確かに、実際この二人は悪魔の戦闘や能力を見ていないのだ、こんなところまで来てせっかく悪魔の戦闘を見れるかと思っていただけにその期待は大きかったらしく落胆の色も同じように大きい


「あはは・・・すいません、逃がしたらいけないと思って急ぎすぎました・・・」


「まぁ、あれについていけなかった俺達にも責任はあるしな、君だけを責める訳にもいかないか・・・」


「あんな動き、私たちじゃ無理よ・・・」


建物の屋上から跳躍して建物を足場に次々と移動を開始、高速での能力戦を続け目標を誘導する、飛行能力を有している能力者でもない限りついていくことは難しい


静希だってフィアの背に乗っていたからこそ後を追えた訳で、フィアがいなければあのままメフィに任せきりになっていただろう


「それで?相手の実力はわかったのかい?」


「んん・・・一応わかったんですけど・・・」


能力はメフィが把握していたがその実力がどれほどなのかが分からない


それに今回はエドモンドはまったくと言っていいほど動かなかった


あの状況では役に立たない能力だったのかそれとも隠しているだけか


どちらにせよ未知数だがあのまま部隊が攻撃を続けていれば捕らえられたかもしれない事を考えればそう大した能力ではないだろう


自分が危機に陥っているのに能力を使わないなんて能力者としては不適格だ


能ある鷹といえど爪を隠し続けて殺されては意味がない


問題はエドモンドよりも悪魔ヴァラファールの方だ


邪薙の障壁で数発は防ぐことができるのは証明できたが、十発を越えると耐えられずに破壊されてしまう


ヴァラファールの放ったあの黒い弾丸、メフィに言わせれば呪いの塊は少なくとも陽太の能力発動時の拳よりも強いということだ


だが問題がある


その威力と症状の違いだ


邪薙の障壁はいとも容易く破壊できるというのに人間に直撃した時の症状、つまりは襲いかかる不幸が皮膚の損傷または骨折のみ


どうにも比率がおかしい気がする


被弾箇所に不幸を起こすというなんとも曖昧な能力、非常に強いのは理解できるのだが敵として迎えた時にイメージがつかみにくい


直接対峙する以上ある程度の被弾も覚悟で戦うつもりでいたためこの被害状況はとてもいいデータなのだが、その状況が千差万別、はっきり言って法則性がなさすぎる


「強いには強いが、人体への効果が不明確・・・か・・・なんともいい難いね」


今までの状況を踏まえて説明を終えると大野は腕を組んで悩み始めてしまう


今まで物体への威力=人体への被害という法則が能力での主な解釈法だったために今まで見た事のない現象に三人は大いに頭を悩ませていた


「でも少なくとも攻撃を受けた人も死者はいなかったんでしょ?」


「えぇ、でもそれは被弾箇所が全部手足や腹だったからってだけかもしれませんよ?頭に受けたら即死かも・・・」


対物に対しての能力か対生物に対しての能力か


どちらにせよ当たればその身に不幸が訪れかなりの痛手を被るのは必定


当たらないことは大切だが相手は悪魔、そうも言っていられない


日本人だけで話しあっていると三人の元に案内役のニコラスが駆け寄ってくる


どうやら部隊の方での負傷者の対応も終わりかけているようだった


「ニコラス、この後はどうすればいい?」


「今日はここまでだ、街の巡回は行うが君達は宿で休んでいてくれ、切札がいざって時に使えないと困るそうだよ」


「切札・・・ねえ」


先ほどの戦闘を見て考えが変わったのか先ほどまで僅かに疑いの視線も向けていた部隊の人間の目が僅かな尊敬と大きな畏怖を含んだ物に変わっているのに気づく


彼らが見たのは一瞬だっただろうが静希は悪魔と得体のしれない動物を我がもののように操ったように見えただろう


本人からすればそんなことは無いのだが見え方というのは恐ろしいもので角度を変えればどんなふうにでも解釈できるのだ


その態度の変化に大野と小岩は気を良くしているようだが静希は僅かにやるせない表情を浮かべていた


実力がすべてなのはわかりきっていることだが、静希からすればこれは自分の実力ではないのだ


やるせないのもある種無理のないことかもわからない


誤字報告が五件たまったので複数まとめて投稿


はっきりいってノリノリで書いただけあって誤字は半端でなく多いです


なので誤字ゼロ運動実施中!徹底的に誤字をなくそうと努力しました


結果は・・・正直わかりません



これからも誤字の多い作品ですがお楽しみいただければ幸いです

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