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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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静希の能力

「シズキの能力『歪む切札』その効果は五百グラム以下のものを生物以外何でも収納する、保存されるのは質量だけでなく、熱量、運動量など物理的なエネルギーも含まれる」


「そこまでは俺もわかってる、問題はその後だ」


静希が解明した能力の効果はそこまでだった


普通の物体を入れるだけでは気付けなかった部分を人外達は把握している


「五百グラム以下であるということは零も入れられる、それは私達を入れることで理解しているわね、でもオルビアの事だけはある種の例外が働いている」


「本来担い手じゃない俺がオルビアに触れてるってことだろ?」


霊装は本来製作者か担い手しか触れることはできない


それなのにもかかわらず静希の能力の中に入れた途端に担い手ではなかった人間すべてがオルビアに触れられるようになった


ここに自分の能力の秘密があると静希は確信していた


「シズキ、あなたの能力の特殊効果は簡単に言えば『収納した物を最善の状態にすること』よ」


収納した物を最善の状態に


それだけ言うとたいしたことではないように思える


だがその言葉で静希は思い当たる節がある


以前エルフの村で怒り狂う邪薙をトランプに入れた途端その怒りを納め冷静な本来の状態に戻った


精神状態を不安定な状態から正常、つまりは最善の状態にしたと考えればおかしい話ではない


「でもそれだけじゃオルビアに触れられてる理由にはならないだろ?」


「そのことについては私からご説明しましょう」


今まで静希の能力実験に一番付き合っていたオルビアが前に出る


メフィもオルビアの方が上手く説明できるだろうと判断したのかその役をあっさりと譲り渡す


「マスターの能力は収納した物に対し特殊な効果を与えるものであることは確かですがその中にはいくつか限定されたものがあるのだと思われます」


「限定?」


今でさえ容量のことで限定されているというのに特殊効果でさえ限定されるというのかと僅かに嫌な顔をする


「まず、収納した物が持つ独自の能力を最善の状態にすること、例えばナイフであれば切れ味を最大限まで高めることができるでしょう」


物質や道具の性能を最大限まで高めるということは裏を返せば限界を越えられる訳ではない、普通に道具を使っている程度では気付かないはずだと静希は額に手を当てる


最初会った時若干不機嫌だったメフィが急に上機嫌になったのも、怒り心頭状態だった邪薙が急に冷静になったのも恐らく『存在だけの存在』という区分の性能は能力や腕力といった部分ではなく感情や思考といった箇所に依存していると認識されたのだろう


「そしてその特殊能力にはもう一つ効果があるのです、それは収納した物体や道具に付与されていた何らかの効果や制限を除去するというものだと思われます」


「除去?」


除去という言葉に静希は疑問符を飛ばす


なにせ今まで静希が内包した物体は何の欠損もなく保存されていた


何かがなくなるといったことは無かったのだ


「そうです、私の場合霊装としての特性として能力と意識が封じ込められています、そして同時に霊装であることで『限られたものしか触れられない』という制限が発生していました」


そこまで説明されて静希は即座に理解した


限られたものしか触れられないという制限を解除すれば、誰でも触れることができるということになる


静希のトランプの中に収納されたことでオルビアの制限が解除されて誰でも触ることができるようになった


「だから忌々しいけど、私が透過を使っててもオルビアには触れられちゃうのよ、文字通り何でも触れるようになっちゃってるし」


試しに最初会った時のように透過状態で静希を通り抜けながらオルビアに触れるとしっかりとその体を掴むことができている


悪魔の持つ透過の能力をもってしてもオルビアとの接触からは逃れられないということだ


「その制限って、もともとあった物だけか?能力とかにも有効?」


「恐らく問題ないだろう、かつてお前が私を収納した時、この身体を縛っていた能力の鎖がなくなったからな」


そういえば動きを封じていた縛っていた鎖は邪薙を収納した途端に消えてしまったが、あれは拘束対象がいなくなったから消滅したのだと思っていたのだが、よもや自分の能力の影響だったとは


雪奈に頼んで能力が解除されるかどうかだけでも試しておけばよかったと悔やまれる


そうすれば能力がかかっている物も能力が除去されるかどうかがわかったのに


「じゃあ今回の場合は・・・」


「悪魔の心臓にかかってる能力・・・これは悪魔自身への制限とみなされるはず、そうなれば悪魔は自由の身」


最も警戒すべきが悪魔である以上、その悪魔を解放できれば後は野となれ山となれ


操られている状態から解放されれば自分たちと敵対することは無いだろう


静希が接近し悪魔を収納するその隙はメフィにになってもらう


オルビアが透過使用状態の悪魔にも触れられるというのは大きな強みだ


これならばいくらか作戦の立てようがある


人外達との対話の後大野小岩両名を加え着々と悪魔に対しての対策が練られていく中、静希の眠気はピークに達しようとしていた


時間はもうすでに十八時を過ぎようとしていた


日本時間で深夜三時である


「さすがに・・・きついな・・・」


「ここまでいったら起きてた方が楽だよ、疲れてるかもしれないけど・・・」


瞼がトロンとして閉じかけてしまっている状態を自制しながら静希は必死に意識を保とうとする


徹夜するくらいは普通にできるのだが疲労が蓄積していれば話は別、静希の身体は即座に床につくように命令を飛ばしていた


「少し早いけど夕飯食べに行きましょうか、ホテルの食堂って使えるの?」


「もちろん、五十嵐君は一回顔を洗ってきた方がいい、食べながら寝てしまいそうだよ」


「・・・了解」


部屋に備え付けられている洗面台で冷水を顔にぶつけ強制的に脳を覚醒させたあと静希達はホテルの食堂で少し早めの夕食をとり時刻は十九時


かなり早いが時差による活動誤差をなくすために就寝していた


目を閉じて眠り始めてからどれくらいの時間がたっただろうか、心地よく睡眠をむさぼっていると辺りが急に騒がしくなり始める


またメフィと邪薙が口喧嘩でもしているのだろうかと思いながら耳をふさいでいると急に部屋の電気がつき辺りが急激に明るくなる


「・・・なんだ・・・?」


しっかりと寝ていた静希はふらふらと起き上がり辺りを見回すと大野と小岩が大急ぎで着替えているのが確認できる


頭をふらふらさせ瞼をこすりながら状況を理解しようとするのだがどうにも頭が働かない


「五十嵐君!急いで支度して!」


「・・・なにがあったんです?」


小岩に肩をゆすられて静希はようやく二人が慌てているという状況だけは理解して部屋においてある時計を見てみると時間は深夜二時


七時間は寝られている訳だから睡眠時間的にはバッチリなのだがまだ外は深夜、日の光などかけらも入っていない


「ニコラスから連絡があった、街を警戒していた部隊がエドモンドと思わしき人物を発見したと」


「もうホテル前でスタンバイしてもらってるわ」


一瞬エドモンドって誰だと思ったのだがようやく頭が回転し始めたのか静希はベッドの上から跳ね上がる


「なんだってこんな深夜に見つかるんだよ!こっちの都合考えろっての!」


「まぁ・・・その気持ちはわかるけど・・・」


静希も同じように慌ただしくも身支度を開始する


寝ぼけた頭を完全に起こす為に顔を洗って服を着て装備を確認していつでも戦闘ができるように整える


大野小岩も同じように戦闘の準備を終え軍服に着替えている


そして二人の両腰には拳銃と警棒が取り付けられ、彼らの両手にはアサルトライフルも握られている


対して静希の武装は腰にナイフのみ、その他は全てトランプの中だ


「君はそれだけでいいのか?銃とかは?」


「あいにく先生が持たせてくれなくて、使うなら自分で手に入れろだそうです」


「あはは、先輩らしい」


部屋を飛び出てホテルの前に止まっているニコラスの車に飛び乗ると車は急発進する


荒い運転に揺られながら静希は運転し続けているニコラスに目を向ける


「ニコラス、状況はどんな感じ?」


「今部隊の索敵できる能力者全員で目撃した場所付近を探してる、他の連中も人海戦術みたいに探しまわってるところだよ、とりあえず先行部隊の中心に君達を送るから」


完全に出遅れたなと舌打ちをしながら静希は窓から外の様子を確認する


街灯はところどころきれているというのもあるが、街自体の明かりはほとんど消え月と星の明かりだけで周囲を照らされているような状況だった


かなり速度を出して運転していたらしく先行した部隊と合流できたのはそれから数分後、静希達は車から降りて捜索に加わる


話を聞くにエドモンドらしき人物が目撃されたのは深夜一時、包囲網の人員を交代するために移動していたところ不審人物を発見し職務質問をしようとしたら突然巨大な何かが現れてその人物を連れ去ったとのこと


大学の監視カメラに映っていた状態と酷似していたために部隊で捜索を開始したそうだ


「それにしても本当に包囲網の中にいるなんてな・・・」


てっきりもうすでに逃げているのかとも思ったのだがどうやら本当にこの部隊の人間は優秀なようだ


「五十嵐君、もし戦闘になったら・・・」


「まずは様子見、メフィは出さずに俺自身で戦います、数回なら邪薙が防いでくれるでしょう」


無茶を言ってくれるなと少しだけ嬉しそうに邪薙がつぶやくのを確認して静希はいつでもオルビアを引きぬけるように準備していた


海外での戦闘は初めてではない、だがあの時は孤島だった


市街地戦はまだ経験したことがないのに加えてこの暗さ


静希にとって初めての状況がかなり多かった


誤字報告大量発生につき複数まとめて投稿


ノリノリで書いたところはやっぱり誤字が多いですね


お恥ずかしい限り、チェックが間に合いませんよ


これからもお楽しみいただければ幸いです

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