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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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教授の証言

「あぁ・・・そのことか、そんなことでよければいくらでも話すよ」


静希は部屋にあったパイプ椅子に腰掛け懐からメモ帳とシャーペンを取り出す


すでに現場の状況などは資料で見ているが、一応確認もするべきだろう


「現場を見たのは貴方だそうですが、何故あの場に?」


「事件当日、私は打ち合わせの為に職員を探していたのだが、そしたら実験室の中にエドモンドと職員が入っていくのが見えたんだ、そのまま私もその場に入ったら・・・大量の死体が・・・」


これだけ聞くと良く正気を保っていられたものだと感心する


いや、唐突過ぎて混乱する時間もなかったのかもしれない


「では悪魔の姿を見たそうですが、どのような外見でしたか?」


「見た目は獣なんだが、ライオンに似ていた、だが細部はライオンとは大きく異なる・・・なんというか、いろんな動物をつなぎ合わせたようだった」


メモに特徴を書いていくのだが静希に絵心は無いため外見的特徴を詳しく聞きながら情報を羅列していく


それだけ見たらただの子供の落書きだ


「では悪魔の能力などは見ましたか?目の前で突然何かが爆発したとか、凍ったとか」


「いやすまない、私が扉を開いて声を上げた途端にエドモンドを乗せて走り去ってしまったから・・・」


悪魔は見ていても能力は見ていない、こうなると研究員を殺害したのが悪魔かエドモンドかの判断が難しい


しかも教授は現場を見ただけで犯行の最中を見た訳ではないようだ


メフィの話ではエドモンドがやったのではということだったが断定はできない


他の研究員を丸めこんでから最後に口封じとして殺害したという事もあり得るのだ


「失礼ですが貴方は能力者ですか?」


「あぁ・・・変換系統の能力者だよ、あいにく形状変換程度しかできないが」


「悪魔を見た際、何か自衛行動は?」


「いや、驚いてそれどころではなかった・・・我ながら情けない」


俯いて静希と視線を合わせようとしないノーマンを見ながら静希は軽くため息をついて思考を始める


『メフィ、外見的特徴で悪魔の個体を判別できるか?』


『無茶言わないでよ、悪魔が一体どれだけいると思ってるのよ、ライオンに似た姿した悪魔なんて腐るほどいるわよ、もっと具体的な特徴があれば別だけど』


専門家、というか悪魔本人に聞いてもこのざまだ、情報が少なすぎる


「では一つ聞きたいんですが、その実験室には観測用のカメラなどは配置されていないんでしょうか?」


政府などの直轄で実験を行っていたのであれば報告用などの為にカメラなどで映像を残していても不思議はない


実際の映像ほど心強い情報は無いのだ


「いや、本来は実験の前日に大型のカメラを入れる予定だったのだが・・・エドモンドは予定の三日前に犯行に及んだ・・・」


「つまり映像もない・・・か・・・」


一縷の望みも断たれ静希はうなだれる


映像もない、能力もわからない、わかったのは大まかな外見のみ


これで悪魔に対応しろというのはさすがに無理ではないだろうか


「ミスターイガラシ、悪魔の映像ということなら大学の方にデータが残っているよ」


後ろで話を聞いていたニコラスから思わぬ情報が入ってくる


「え?でも実験室には・・・」


「映像が残っていたのは実験室前に設置されている監視カメラだ、あまり解像度は良くない上にところどころ破損してしまっているが・・・」


破損していようと情報は情報である、静希からすればこれほどありがたいことは無い


『他に何か聞いておくことはあるか?』


トランプの中の人外達に意見を求めると少し悩んだ後でオルビアが声を上げる


『でしたら、エドモンドという人物について』


今回の犯人とされているエドモンド・パークス


資料にいくつかの情報は載っていたが人柄や能力までは記載されていない


確かに同じ大学に勤めていた人物なら少しは知っているかもしれない


「ではエドモンドという人物についてお聞かせ願えますか?」


「エドモンドは私とは違う部門で研究をしていた人物でな、度々悪魔召喚の実験に協力させてほしいと言っていた、それがまさか・・・」


事件当時の事を思い出しているのか額に手を当ててうなだれている


感傷に浸るのはいいのだが静希が聞きたいのはそういうことではない


「普段の彼はどのような人間でしたか?」


「普段の・・・?さあ、先も言ったが研究部門が違えば関わることはあまりない・・・だが彼は学生とよく交流を持っていたらしい」


学生と交流を持つ研究者、日本の大学で言えば位置的には准教授か、ティーチングアシスタントといったところか


「彼の能力については何か知っていますか?」


「すまない、私はなにも・・・」


どうやら本当に知らないらしく申し訳なさそうな顔をしていた


悪魔についてもエドモンドについてもこれ以上教授から聞けることはなさそうだった


「ありがとうございます、参考になりました」


「・・・君はあの悪魔をどうにかできるのか?」


部屋を出る寸前でかけられた言葉に静希は眉をひそめる


事件解決を望んでいるのかその目は真剣で真直ぐ静希を見つめている


「そのために俺は来たんですよ」


お大事にと言葉を残して扉を閉める


手に入れられた情報はそれほどたいしたものではないが無いよりはましだ


「じゃあニコラス、大学の監視カメラの映像が見れる場所に案内してくれるか?」


「わかったよ、けど映っているのは本当に一瞬だよ?」


一瞬でいいんだよと付け加えながら静希達は病院を後にする


「どうだい?何か対応策は見つかった?」


車の中で大野が日本語で話しかけてくる


実際悪魔の事件と関わるのは初めてなのか少し浮足立っているように見える


「あれだけじゃ正直何の役にも立たないですね、せめて能力だけでも見ていてくれれば良かったんですけど」


能力を見ていればメフィが大体の推測をすることができるし静希としても対策が練れる


実際に悪魔を見たということでかなり期待していたのだが、少々期待外れだった


大まかな姿形だけ知ることができたから突然遭遇しても驚くことは少なくなるだろうが、重要性は低い


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