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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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嘘と誤解

「ニコラス、今部隊が駐留してるのはロンドン大学の近くだよな?」


「あぁそうだよ、大学の空いている教室に本部を置いてる、とりあえず君達の泊るホテルに行こうと思ってるんだが」


「いや、その前にそっちの隊長さんに挨拶しておいた方がいいと思って、先にそっちに向かってくれないか?」


「あぁ、構わないよ」


車は方向を僅かに変えロンドン大学の方へと向かっていく


静希は頭の中で作戦を練りながら静かに大学への到着を待つことにした


ロンドン大学に到着しその中の一室に案内されると扉の前には二人の軍服姿の男性が立っていた


「日本からの協力員を連れてきた、隊長に挨拶したいそうだ」


「初めまして、五十嵐静希です」


表の二人とも挨拶と共に握手を交わし護衛の二人を紹介した後で中に入ろうとするとそこで止められる


静希の言葉を理解できていることから相手の隊員は静希を能力者、かつ同調系統であると判断したようだった


「中に入るのは一人だけでお願いしたい」


なにが目的か静希には理解できなかったがどうやら複数人数で入られるのは困るらしい


向こうも城島と似たようなことを考えているのかもしれないと思いつつ大野小岩両名には外で待っていてもらうことに


「ボディチェックをします・・・これは?」


静希は服の上から身体を軽く触れられ危険物などがないかチェックをされる


静希の懐からトランプを取り出した男性はトランプを調べる、何の変哲もないトランプのように見えた


「貸して下さい」


何度かシャッフルして一番上を指さし、男性にめくらせるとそこにはハートのA


そして戻すように促し一番上のカードを一回、二回と指で叩いた後にもう一度カードをめくらせるとそこに在るのはハートのAからジョーカーに変わっていた


「これは危険物になりますか?」


一瞬間の抜けた顔をしていたが隊員は僅かに笑いだしカードを静希に返す


「これは恐ろしいものだ、こんな物は是非隊長にも見てもらわなくては」


中に入るよう促されると静希は僅かに笑いながら二人に荷物を頼み隊長のいると思われる部屋の中に入っていく


そこはもともと空き教室を今回の事件の捜査本部にしているのか、数々の書類や機器が置かれ大学の教室とは思えない程物々しく仕上がっている


奥にいる人物は二人


一人はあごにひげを蓄えた黒髪の男性、一人はすらりとした顔立ちをした金髪の男性だ


何かいろいろと話しているようだったが静希が入ってくるのを確認して振り返る


「君は?」


「日本から今回の事件解決の協力要請を受けて参りました、五十嵐静希です」


その言葉に二人は顔を合わせて驚愕の色を強くする


まだ子供ではないかと思っているのだろう、動揺と疑いの色が強く、僅かに警戒も見せていた


「俺の顔に何かついていますか?」


「い、いや失礼した、私はこの部隊の隊長のテッド、こっちは副官のウォルトだ」


「よろしく、ミスターイガラシ」


互いに握手して笑顔を浮かべた後静希は表情を消す


黒髪で髭の方が隊長のテッド、すらりとした金髪がウォルトのようだった


「こちらの隊長にお会いしたら渡すようにと上司から頼まれている物がありまして」


「ほう、何かな?」


静希は僅かに副官に視線を向けて再度隊長に視線を戻す


「・・・あぁすまない、私は席をはずそう」


副官は空気を読んだのか、このような少年なら万が一の事もないだろうと思ったのか部屋から一時退室する


やはり言語が通じるという段階で能力を誤解するのはかなり多いケースのようだ


ここの部隊のほとんどが静希が同調系統であるという誤解を信じきっている


「それで?君の上司は一体何を私に?」


「いえいえ、たいしたものではありませんよ、ちょっとした光ものです」


机の上に懐から取り出したように見せかけたいくつかの道具を置いていきテッドの注意が机に向いた一瞬のすきをついて関節を決め首筋にナイフを押しあてる


「な・・・なにを・・・!」


「この国の軍隊は随分と甘いんだな?警備もまるでざるだな・・・こんなガキ相手にあっさり殺されかけてるんだから」


もちろん、軍の部隊長であるテッドが静希のようなほとんどまともな対人訓練を行っていない人物にあっさりと拘束されるはずがない


だが能力は同調系統、ボディチェックを終え武器は無いただの子供だと完全に油断していたところならば話は別だ


「日本から派遣されたってのは嘘だ、これ以上悪魔に関わると痛い目見るぞ?」


「お・・・お前は・・・一体何者だ?」


「さっき自己紹介した通りだ・・・さようならテッド、もう会うこともないかもな」


静希はできる限り冷酷な声を出しながらナイフに力を込める


完全に拘束された状態のテッドは身動きもできず能力を発動しようとする


もはやそれしかこの状況は脱せないと感づいたのだろう


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