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J/53  作者: 池金啓太
一話 「引き出し」

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接触

今回は話の切り分けが難しかったのでちょい長め


もっと上手く話を構成できるようになりたい

すでにクラス内は静寂の糸が切れざわざわと立ち歩いてしゃべりだす奴もいる始末、当然と言えば当然かもしれない


「さて、どうする?この暇な時間何をしようか」


暇を持て余したのか陽太がふらふらとやってくる、その視線の先には注目の的だった少女転校生清水鏡花がいる


「何をしようかっていうより、何をするんだろうかって感じだな、その眼は」


「ばれた?」


ばればれだ、明らかに面白いものを見る目だ


だが本人からすれば切実な問題だろう、周りは知らない人たちだらけなのにほぼすべての人間がある程度のコミュニティを確立してしまっているのだから


「俺は読書をするに一票」


「また賭けか?」


「おうよ、明日の昼飯分も奪ってやる」


こいつは本当に救いようがない


だが先ほど負けてしまっている静希、ここは何とか巻き返しを図りたい


「んじゃ俺は誰かに話しかけられるに一票」


「いいのかよ、清水さん趣味は読書って言ってたのに、負け確定か?」


第一先に読書の選択肢をとったのはお前だろうが


と悪態をついてみせるが、それでも静希は読書の選択はしなかっただろう、なぜならすでに動きそうとしていた人間を目にしているのだから


「あの・・・清水さん・・・」


「・・・なに?」


話しかけているのは明利だった、少ない勇気を振り絞ってゆっくりと何か話題を見つけたのか断続的に話を続けている


「なんだと・・・!馬鹿な!あの明利が」


「明利は人一倍優しいからな、放っておけなかったんだろ」


この場合怖さと臆病さよりも明利の優しさが勝利したというところだろう、それに趣味が読書という点でも共通点が近かったと言える


「さて陽太君、賭けに俺は勝ったわけだが、何を頂こうか」


こういえば何か提案を出してくるだろうが、昼飯一回などで終わらせるわけがない


「んじゃ今日の昼飯を」


「さっき俺が奢ることになっちまっただろうが、それに賭けとはいえ友人に昼飯をおごらせるのは俺としても心が痛い」


「そ、そうか!さすが静希だ、俺はお前を信じて」


「晩飯一回で手を打ってやろう、ファミレスあたりでいいぞ?」


「んな!昼飯のレベル超えてるじゃねえか!」


「お前が先に賭けの報酬を用意しないのが悪い」


「じゃあ俺もあともうワンコイン要求するぞ!」


「お前はさっきすでにワンコインでいいと言ったぞ、そして賭けに負けるのが悪いともいったな」


「ぬぐぐ・・・」


「口頭で俺に勝てると思うなよ」


「ちくしょう・・・」


あっはっは、愉快だ愉快だ、ここまで悔しそうな人間の顔を見るのは本当に愉快だ


と、そうこうしている間にどうやら明利はずいぶん清水と打ち解けたようだ、何やら話がはずんでいる

この分ならこのクラスになじむのもそう遠い話ではなさそうだ


さて肝心の俺はどうやって時間をつぶそうかと悩んでいると目の前に頭を抱えたままの陽太が目に入る


「ちくしょう・・・ファミレスってことは・・・一人千五百弱で・・・二人で三千円も消えるじゃねえか、二千五百円の損だよちくしょう」


よし、俺はこいつをいじって時間を潰すとしようと静希は決める


どうやら陽太をいじることは静希にとってずいぶんと楽しかったらしく四十分はあっという間に過ぎて行った


能力測定は憂鬱である


特に静希のようなたいして能力値の高くない人間にとっては苦行に等しい


精神力、つまり能力使用可能回数の基準となる値はそこそこ高い、だが能力応用力やら基礎能力値が低すぎる


やはり収納系で一キロも入れられないというのは大きなデメリットだ


ため息をつきながら計測を終えて肩を落として教室に向かう


「おい、どうだった?」


結果表を見せびらかしながら陽太が駆け寄ってくる、結果が分かっているというのにこの陽気さだ、若干腹が立つ


「相変わらず基礎能力値は最低ランクだよ」


「ダメだなぁお前は、もっと能力の向上を」


「そういうお前だって能力操作最低ランクじゃねえか」


測られるのは基礎能力値、能力応用値、精神力、能力操作、制御率の五項目である


「う、うっせえ、もとより細かいコントロールとかは苦手なんだよ」


そう、陽太も陽太であまり成績はよろしくない


陽太の場合結構いい能力を持っているのにもかかわらずそれを操る技能がないのだ


いや陽太の能力の場合操ること自体が困難かもしれないが、ここでは割愛しておこう


「静希君、陽太君」


肩を落とす静希たちに後ろから小さく声がかかる


小さく儚いが特徴の明利だ


「おぉ、どうだった?少しは伸びてたか?」


「うん、まぁまぁかな、二人は?」


「相変わらずだよ、伸びしろがあるかも怪しいね」


「俺の方はもっと繊細にだってさ、無茶をおっしゃる」


もはや能力に関しては何度も何度も繰り返されてきた言葉だ、今更隠すこともないし気を使うこともない


「幹原さん」


そうこうしている間にやってきたのは噂だった転入生清水鏡花だ、うむうむ、自発的に話しかけられるようになったか、よいことだ


「あ、し、清水さん、どうだった?」


「こんな感じだった」


どれどれと覗く明利の目が見開かれる


何やら驚いている様なので静希と陽太も覗きこむと五項目すべてSとAの目白押し


ちなみに評価はS、A、B、C、D、EでSが最高評価である


「うわ!なんだこの値!お前本当に高校生か!?」


「すごいなこりゃ、脱帽もんだわ」


「すごい人がいるんだね」


三種三様で驚いているとどうやら突然わいた二人に驚いたようだった


「あの幹原さん、この二人は」


「あ、まだ紹介してなかったね、こっちの黒髪のが五十嵐静希君、とっても優しいんだよそれでこっちの茶髪なのが響陽太君、とっても前向きなんだよ」


明利、その紹介、必死にいいところをあげたのだろうけど好評価は期待できない、特筆すべき点が前向きというのはどうなのだろうかと静希は頭をひねる


「五十嵐君に響君ね、清水鏡花よ、よろしく」


「おう、君はいらないぞ、俺ら基本呼び捨てだし」


「そう、なら五十嵐に響ね」


どうやら順応性は高いようだ、陽太のあっけらかんとしたキャラにもしっかりとついていけている


「三人の結果はどうだったの?」


「うぇ、そこ聞いちゃう?」


「あんま見せたくないんだけどな」


「い、いまのを見た後だと・・・ね」


三人とも目をそらしながら結果を見せるのを渋っていたがすでに鏡花の結果を見てしまっている手前、自分達だけ見せないというのは居心地が悪い


三人の結果を見せると、鏡花は何とも微妙な形容しがたい顔をして見せる


静希は基礎能力値と能力応用値が低く、それ以外は優秀のA


陽太は能力応用値、制御率が低く、その他の値はC、B、A


明利はどの値も平均的だが、能力応用値のみSの評価を受けている


「幹原さんはそうでもないけど、五十嵐と響はこれどうなのよ、特に響」


能力の強弱に関しては個人の努力によってかなりその優劣が変わるがそこは生物の発する能力なだけある、結局は才能なのだ


どれだけ努力しても結局のところ才能に勝る補正はない


そして制御、能力操作、精神力の値を見て静希は十分以上に努力していることはこの結果を見ただけでも十分にうかがえた


だが陽太のこの結果、はたから見ればよい能力を持っているのに持ち腐れにしていると思われがちである


「何を言うか!これでもかなりましになったんだぞ、最初なんてそりゃもう大変だったんだからな」


「あたり一面火の海になりかけたしな」


「消火たいへんだったよね」


当然比喩ではない、実際になりかけたのだ、能力者はそれができるから始末が悪い


「へぇ、ってことは響の能力は炎系なの?発現系統だっけ」


「あー、どっちなのかは意見が割れてるんだよな、小学校のころからずっとふらふらしてる」


実際陽太の能力はどの系統に部類していいものか非常に区分に困る


大まかに分ければ発現系統なのだろうが、それだけではない要素が混じり合ってしまっているから専門家の中でも迷うところなのだ


だが鏡花が気にしたのはそこではなかった


「・・・なに?小学校からずっとこんなところにいたのに制御の一つもできないの?」


「あ?なんだよそれ」


さすがの陽太も少しカチンときてしまったのか、一瞬不機嫌な声が飛ぶ


だが今の言葉は鏡花も十分に喧嘩腰であることははたから見ても明らかだ、挑発しているようにも見える、これが無意識なのかどうなのか、静希も明利も測りかねていた


「制御なんて一番最初にやらなきゃいけない部門じゃない、十年近く指導受けてこれはちょっと酷過ぎ、一体いままで何してきたのよ」


「これでもかなりまともになってきてんだよ、お前みたいに全部うまくいくような成績じゃなくて悪かったな、どうせおれは落ちこぼれだよ」


「落ちこぼれとかどうかじゃなくて最低限の制御を身につけるのは私達の義務よ、その義務を怠る時点で論外、本当にわかってるの?」


「んだと?人の能力も見てねえ奴がわかったような口きくんじゃねえよ」


陽太の反論とともに周囲の温度が急に上昇する


これはまずい


「なあ陽太!検査も終わったんだ、とっとと昼飯買いに行こうぜ奢ってやるから!」


「ほ、ほら清水さんもお昼食べよ?お、お腹すいちゃったよ」


静希と明利はアイコンタクトしあい何とか二人を引き離そうとする、このままだと喧嘩になることは火を見るより明らかだ


未だ火花を散らす二人を別の方角に連れて行かねば


俺は陽太を購買に連れて行くからお前はそいつを学食にでも連れて行ってくれ


と明利に目で訴えかけると明利は軽くうなずいて鏡花を学食の方向に引っ張ろうとする


長年の付き合いが織りなすアイコンタクト、何とかこのままならお互いにクールダウンしてくれるだろう、なんとか危機は脱出できた


陽太も納得していないようではあるがここで争うのはさすがにまずいと判断したのか渋々引き下がる姿勢を見せている


ここまで流れを掴めばさすがに一安心か


ちょい長くなってしまいましたが今回はここまで


お楽しみいただければ幸いです

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