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J/53  作者: 池金啓太
八話「私の声が届く理由」

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私の声は届かない

静希と陽太、雪奈と雫はテーブルを囲んで談笑している


なんとも仲がよさそうでただの友人の家族としての付き合いとは違うように思えた


「ねえ明利、あんた達っていつ頃からの付き合いなの?」


「え?えと・・・子供のころから」


「何歳とか覚えてないの?あの様子だとかなり長い付き合いみたいだけど」


ただの交友関係だけでなく親とも面識がありあそこまで親しくしているところを見るとかなり長く一緒にいたことになる


小学校低学年というのは知っているが具体的な年齢までは知らない


「出会い方とか気になるじゃない、どうして静希と仲良くなったの?」


「え・・・えと、最初は近所の公園だったんだけどね」


「ふむふむ」


明利の記憶を頼りにその時の状況を説明していく


時間は明利達が小学校に入学したばかりの頃に遡る


当時明利の家、幹原家は少々仲たがいをしていた


両親の口論は絶えず、明利は怯え泣きそうになりながら二人を見ることが多かった


口論の原因は明利のことである


小学校に入学直後、明利が能力者であることが分かったのである


母雫が料理中に怪我をしたことがきっかけとなり、その怪我を見た明利は無意識のうちに泣きながら能力を発動し治療を施した


だが当時の明利の能力は今ほど洗練されたものではなく、僅かに傷痕が残っている


口論の内容は明利を専門学校に入れるか否か


父親としての意見は能力を伸ばす為にも明利の才能を潰さないためにも専門学校に入れてやるべきだということ


母親としての意見は専門学校に入れたら危険な目にも遭う、だからこのまま能力を隠して普通の子として育てたい


両親の意見はどちらも正しい


専門学校に通わせればそれだけ能力の事に詳しくなりその能力を大きく活かせる


だがその分危険な目にも遭う、そして明利が能力者であると知っているのは両親と明利本人のみ、まだ委員会の方には報告していないためにまだ隠すことはできる


どちらも子供の事を思うが故に衝突しているのだが、子供の明利にはそのことがまだ分からなかった


ただ二人が喧嘩しているということしかわからなかった


だから休日の日中、明利は近くの公園の遊具の中に隠れていた


昔から臆病だったために外出もあまりしなかったが、家にいると両親の喧嘩の声が聞こえてくる


それなら外に出てじっとしていた方がいい


勇気が出せずに喧嘩をやめてということもできない


かといって家にいる事も耐えられない


明利が今できるのはこうしてじっとしている事だけだった


「だいじょぶか?」


ふと近くで声がする


明利が顔を上げるとそこには幼い顔立ちの男の子がいる


年の頃は自分と同じ位だとわかり、明利は僅かにおびえた


「お腹いたいのか?けがしたのか?」


ずっとうずくまってじっとしている明利を心配したのかあれこれ聞いてくる


両親以外に心配されたことなどない明利はなぜかその場で泣いてしまう


嬉しさから来るものか、悲しさか、怖さか


ぐちゃぐちゃになった感情がとにかく眼から涙を流させた


「うえぇ!?な、何でなくんだ!?えと・・・だ、だいじょうぶだぞ!」


背中をポンポンと叩き、さすりながら男の子は必死に明利を慰める


なにに対して慰めているのかもわからないが、男の子はずっと明利の背中をさすり続けていた


「おーい、しずー?どこー?」


「あ、雪姉ちゃん!こっち!」


しずと呼ばれた男の子、この子こそ幼いころの五十嵐静希で、遊具の外からやってきた茶髪の女の子が幼いころの深山雪奈である


「あ!しずなにやってんの!?女の子泣かしちゃいけないんだぞ!」


「ち、ちがうよ、ずっとうずくまってていろいろ聞いたら泣いちゃって」


何とか状況を説明しようとしているのだが言葉足らずで上手く説明できない


だが何となく雪奈は状況を理解したようで明利の隣に座る


「大丈夫?どっかいたいの?だれかにいじめられた?」


雪奈も心配して声をかけるが明利はより一層顔をうずめて小さくなってしまう


静希と雪奈は困ってしまいお互いに顔を見合わせてしまう


「おーい、しずきぃ!雪ちゃん!なにやってんだよ」


外から元気の良い男の子の声が聞こえてくる


遊具の外から顔をのぞかせたのは幼き日の陽太


三人で固まっている様子を見て首をかしげる


「なにしてんの?そいつだれ?」


ひょいひょいと遊具の中に侵入しうずくまってしまっている明利の顔を無理矢理に上げさせる


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