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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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山の異常

「どちらにせよ、奇形種が原因でこうなったなら奇形種はこの辺りに住んでいたわけではないんだろうな」


熊田の言葉に静希はうなずく


「でしょうね、今までここにいたのなら動物たちがいなくなるはずがない、それだけの力を持っているのか、それとも動物たちが逃げるような能力を持っているのか」


「もう休憩はいいだろ?早くいかないと日が暮れるぞ」


「じゃあ、洞窟の中、調べてみる?」


「そうだな、全員ライト装備、陽太お前は能力使うなよ?」


「なんでさ!洞窟の中なら火事の心配もないだろ!?」


「俺達を酸欠にするつもりか、ギリギリまで能力は使うな、いざって時お前は頼りにしてるんだ」


「そ、そうか?しかたねえな」


ちょろいなと静希は呆れる半分でライトを手に取る


洞窟の中はそれほど広くないが、二人三人並んで歩くことができる程度には大きく、さらに奥に続いていた


直線的な洞窟でわかれ道などがなかったのは幸運か、だがその先、行き止まりのところには地下水だろうか、それとも小川がここに流れているのだろうか、水が勢いよく流れていた


あたりにはコケが生え、水のせいか少々肌寒い


「明利、頼む」


「うん、まかせて」


洞窟の岩壁や足場などに生えているコケと同調し、明利が周囲の状況を把握していく


生物であればなんでも同調できるというのは強みだ、明利曰く虫とは同調したくないらしいが


何か見つけたのか、明利は近くの岩場にかがんで捜索している


「みんな、これ」


明利が持っているのは短い毛だった、茶色く細い毛は柔らかく、薄く輝いている


「体毛か、保管しておこう」


静希はトランプから保存用の密封パックを取り出し、その中に体毛を入れる


「他には落ちてるか?」


「うん、いくつかある、そこと、そこ」


「よし、それも回収しよう」


体毛は種を判別する上で重要だ


もしこの体毛が奇形種のものなら、この場に奇形種がいたことになる


すべて回収し終え、静希達は外に出る


外の眩しさに少々目を細めたが、地図を見直して次のポイントへと向かう、次は社、何かを祭っていたところなのだろうか、石でできた小さな祭壇と石像、そして申し訳程度の屋根が付けられている、ずいぶん古いもののようだ


「チェックポイントは回ったか、結局遭遇できなかったな」


目標にも、そしているはずの山に住む動物にも結局遭遇することはかなわなかった


すでに村を出発してから一時間半が経過しようとしている、帰りのことを考えるとここらで撤収した方がいいかもしれない


成果は目標の物と思わしき体毛、明利の索敵範囲の広域化、途中いくつか見つけたマーキングとこの付近の山の精密なマッピング


「日も落ち始めてる、いったん村に帰ろう、明利、村の近くに目標の気配はないか?」


「大丈夫、ネズミ一匹もいないよ」


それが防護力の強さならよかったのだが、今回に限っては異常の兆候だ


はっきり言って嫌な予感しかしない


村の破壊されたフェンスの場所に戻ってくるのに、それから枝を払いながらゆっくり歩いて四十分ほどかかった


どうやら壊れたフェンスと洞窟、古びた社は等間隔の場所にあるようだった


戻ってくるころには日は沈みかけ、あたりはすでに紅色に染まり、夜の到来を告げていた


先ほどまでは緑一色だった村の風景が真っ赤に染まるその景色に一年全員が息をのんだ


都会の夕焼けとはまるで違う、世界その物の色を塗り替えたような風景だった


フェンスのところで待っていたのは引率教師城島だった、腕を組み仁王立ちして静希達を待っていた


「時間には少々早いが、切り上げか?」


「はい、これ以上潜ると真っ暗で散策できなさそうなので、待っていてくれたんですか?」


「獣が来た場合、足止めくらいはしてやるつもりだったが、少々残念だ」


「本当にそれだけですか?俺達のこと心配だったとかじゃないっすか?」


陽太が軽快に顔色をうかがうが、城島は深々とため息をつくばかり


「落ちこぼれ二人に引率で狂人までいる班が心配じゃないはずがないだろう、さっさと帰るぞ」


「狂人!?先生!まさかそれは私のことじゃないですよね!?違いますよね!?」


とっさに雪奈を標的にして回避していたが、城島もやはり教師ということか


さすがにいい加減でも教師としての責任なのだろうか、もぐっている間ずっと待っていたのであれば城島の評価を改めなければならないなと静希達は感心していた


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