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J/53  作者: 池金啓太
八話「私の声が届く理由」

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真夏の銃撃

銃声が鳴り響き、辺りに銃弾を模したペイント弾が打ちつけられていく中静希は演習場を駆け抜けていた


その手には銃が握られており合間を縫って断続的に掃射することで弾幕を張っているものの、元より銃撃の才能もないのか静希の放つ弾は誰にも命中しない


遮蔽物を使いながら次々と移動し相手に現在位置を悟られないように行動しているのにもかかわらず目標は的確に静希の元に射撃を与えてくる


どこかで見ているのではないかと思えるほどに的確に遮蔽物ごと静希に牽制をしてくるため静希は弾幕を張ってからでないとろくに動けもしないのだ


これが実弾なら静希は遮蔽物ごと打ち抜かれ身体にいくつかの穴をあけているところだろう、訓練ならではの特記事項だがこの場で静希はすでに数度死んでいる


ならばもはや恥もなにもない


一斉掃射の後リロードし一気に走りぬけようとした瞬間わき腹にペイント弾が直撃


鈍い痛みを覚えるより早く、足、肩、胸と次々と着弾していく


「そこまで・・・これで通算七回目の死亡だな」


その場に倒れ込んだ静希に男性が近付く


城島の同僚だった鳥海である


「もうちょっと手加減してくださいよ・・・こっちは銃握るのだって慣れてないのに」


「なにを言うんだ、もうだいぶ様になってきてるよ」


筋は良くてもこんな大きい銃など自分は使うことはないだろうと思うのだがと静希は自分が持っているアサルトライフルを手に持って立ち上がる


「そもそもなんで能力使っちゃだめなんですか?使えるもの使わないなんて無駄もいいとこですよ」


静希は今回の訓練において使用できるすべての能力を禁止されていた


オルビアを出してもいけない、邪薙の障壁も解除、トランプによる撹乱も不可


使える手札は今持っている銃のみ、なんとも心もとない


「まぁ気持ちはわかるがね、さっき君がああいうふうに動いたように、そして私がああ動いたように、能力が使えないとある程度動きにパターンが生まれるんだ、それを身体に覚え込ませるのさ」


「・・・要するに武装した無能力者と対峙した時相手がどういうふうに動くのかを理解しろってことですよね」


「そう言うことだ、さあ八回目は死なないように頑張ろうじゃないか」


静希は大きくため息をつく


パターンがあるならそのパターンを見たり紙に洗い出した方が覚えるのは早い


肉体的に動いて覚えるのは静希の得意とするところではないため非常に苦戦を強いられていた


死亡回数が二桁を突破したところで静希は解放され演習場の隅で大の字になる


「静希君、お疲れ様」


「あぁ・・・疲れたぁ・・・」


体中ペイント弾の塗料だらけの静希は木陰に座って休んでいる明利が入れた茶を受け取る


明利は基礎体力を上げる訓練と走法を学ぶ訓練、それ以外は軍医の元で医術の勉強を行っていた


静希と同じ訓練をやったところ銃の反動で身体が後ろに動きそのまま転んでしまったのだ


これはあまりに危険だということで鳥海が知り合いの軍医に頼み込んで授業を行ってもらっているのである


以前気になって明利に授業内容を大まかに聞いてみたのだが、高校生が習うような内容ではない事だけは理解できた


「今日もいっぱいあたっちゃったね」


「あぁ・・・もうちょっと上手く相手の位置が分かればなぁ・・・あと何で俺の位置がわかるんだ?」


「んん・・・静希君って結構目立つよ?」


「え?どこが?」


そう返されると具体的に挙げられないのか、明利は困ったように視線を上へ下へと移動させる


「他の人の見ててもなんかこう上手くできないし・・・能力使えないのはもどかしいな」


「私達は能力使えるのが当たり前だけど、普通の人はそうじゃないからね」


静希達はなににおいても能力を使う癖がある


それは幼いころから能力に慣れ親しんできたからこその特性で、能力を使う場面ではそれは非常に有効に働く


だが能力が禁止されている場ではそれはかえってマイナスに働く


例えば静希は自らのトランプを収納だけでなく敵への目くらまし等にも用いている


そのためある程度相手が自分を視認できていてもすぐに別の遮蔽物に移動できると思っていることがあるのだが、能力を禁止していれば簡単に姿を捕捉されてしまう


この訓練でも能力さえ使えれば静希は彼らを圧倒できるだろう、もっとも静希だけが能力を使えばの場合だが


それに能力を使えばそこに能力者がいると知らせ相手に強い警戒心を与える


戦闘においてこの差は大きい


相手が能力者だとわかっているうえでの戦い方と無能力者相手の戦いでは勝手が違うのだ


そして鳥海が静希に能力を使わせない理由は他にもある


本人も理解しているが、静希は表立って行動するよりも隠密行動の方が得意なのだ


だがどのような場面でも能力を使って相手の視線を逸らせる訳にはいかない


時には自分の体一つで隠密行動しなくてはならない場合もある


その体捌きを教えるためにも鳥海は能力の使用を禁止していた


その結果が今の塗料だらけの姿なわけだが、初期に比べればまともになっている


この訓練を始めた当初はヘッドショットばかり受けていたが、最近は身体や足といった部分の被弾が増えている


良く動き、鳥海自身に的を絞らせる猶予を与えていない証拠でもある


今回は予約投稿ですので反応が遅れてしまいます


そして今回から短編八話がスタートします


これからもお楽しみいただければ幸いです

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