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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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後始末の末に

「ちょっと!?陽太が変な事いうからほんとに爆発したじゃない!」


「嘘だろまじかよ!?ちょっとしたジョークのつもりだったのに!」


陽太と鏡花は船の外壁の方を見ると船底近くに大穴があきそこから大量の海水が船内に浸入してきていた


「こういう大きな船ってちょっとした穴があくだけでもまずいのに・・・何とかしないと!」


困惑する鏡花をよそに静希と雪奈はポカンとしながら船にあいた穴を見つめている


「え?なに?穴開いたの?マジでか~・・・そっか~」


「まずいね、タイタニックだよ、映画のワンシーンとはまさにこの事さ」


「二人とも何呑気に眺めてるのよ!何とかしなさいよ!」


鏡花の叱咤にも二人は何の反応も見せない、振り返ってため息をついて遠い海を眺めている


「なんとかって・・・俺らどうしようもないじゃん、直せないし、できたとしても壊すだけだし」


「私も同じくだよ、もう私達はこの船と一緒に沈む運命なのさ」


「なにやる気なくしてんのよ!こういう時こそ頭使いなさいよ!」


「変換系統能力者の人が船の穴ふさげばいいと思います、以上」


投げやりな提案に鏡花は頭を抱える


だが静希の言うことはもっともだ、この場ですぐにでも空いた穴をふさげばまだ何とかなる


「お前達何してるんだ?」


「あ、先生、何か船に穴が開いたらしいですよ」


「そうか、そりゃまずいな」


船内から現れた城島に未だにやる気のない返答をする静希、この緊迫しているはずの状況に二人の会話が妙に間の抜けたものなのは何故なのだろう


「先生!早く逃げるか直すかしないと!この船沈みますよ!?」


「あー・・・大丈夫だ、もう他の先生が動いてるよ」


「え?」


辺りが揺れ動く中静希達のいる階層よりも上から何人かの乗組員と教師がロープをたらして高速で降下していく


落下し加速がついたらロープを握り減速、また手を離して落下し加速がついたら減速


それを繰り返して教員たちはいとも容易く穴のあいた船底にたどり着く


「手伝ったりしなくて大丈夫ですか?」


「必要ないだろ、後数分もすれば全部元通りだ」


掛け声と共に穴のあいた部分の周りの海が凍りつく


海水の浸入が止まったところを見計らって次々と能力が発動していき船底の穴は見る見るうちにふさがっていく


城島の言う通り数分後には爆発が起こる前のような状態に戻っていた


「うわー・・・すごいですね・・・」


「ほんとだな、海が凍るのって初めて見たかも」


「驚くところ違うと思うよ?」


静希達が作業に夢中になっているところに艦内放送で教師の呼び出しが行われる


先の爆発についての会議でも行うのだろうか


どちらにせよもうこれ以上の面倒事は御免である


怒涛の面倒事ラッシュのせいで静希がやる気をなくしてしまっているのだ、自分の出る幕はないとわかっているのかボケっと海の向こう側を眺めている


「ちょっと静希、しっかりしなさいよ!また侵入者あったらどうするの!?」


「もう大丈夫だって、一日にそう何度も侵入されるほど先生方は無能じゃないっしょ」


「言ってくれるな・・・まぁいい、お前達はおとなしくしていろよ」


その場に静希達を残して城島は呼びだし元へと向かう


「ほら静希、先生もいないんだし少しは頭働かせなさい、なにがあるか分からないんだから」


「何かあったらその時考えるって、というかもう疲れたよ・・・モズクになりたい気分だ」


一体それはどんな気分だろうかと一瞬考えたのだがまったく理解できない


「まぁ静希の気持ちもわかるよ・・・俺はワカメでいいや」


「あ、じゃあ私昆布~」


「えっと・・・じゃあ私は海苔で」


「なんでみんな海藻になりたがるのよ・・・」


わけのわからないテンションについていけなくなっている鏡花は額に手を当てて呆れ果てる


「そう言ってやるな、一日にこれだけ動けば疲れもする、大目に見てやれ」


「そう言う熊田先輩は平気そうですね」


「俺だって疲れている、だがそうも言ってられなくてな」


フォローを入れている熊田は姿勢正しく凛としている


しかも先ほどから何やら服装まで正している


「何かするんですか?」


「いやなに、ちょっとこれからアプローチでもかけに行こうかと」


「へ?誰にです?」


「艦内にいた女性がなかなか俺好みでな、ちょっと行ってくる、留守を任せたぞ」


熊田はそう言っていそいそと船の中へと向かっていく


残されたのはやる気のない幼馴染四人組


そしてそれらの監督役として残された鏡花だけ


班長になんてならなければよかったとこの時本気で思ったという


その後静希達は問題なく港に到着


長かった一日は終わりを告げる


この日静希は悪魔の契約者として多くの人物に名を覚えられることとなった


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