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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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城島の尋問

「お前達はいい意味で躊躇がない、やると決めて作戦を立てて、不都合がなければ実行する、それだけをする連中だ、今までの実習でやる時はやるというある種の現場慣れがあるが他の奴らは違う、護衛だの捜索だの、ぬるい現場にいた奴らがいきなり人一人さらって来い何て言われて実行できるかは怪しい、それが武器を持っている相手ならなおさらだ」


城島の言葉はもっともだ、今まで何かを相手にしてきたかもしれないがそれは命をかけるほどの相手ではなかったかもわからない


逆に静希達はほとんどの実習も行動内容が命にかかわるような内容だった


やらなければやられるという考えが身にしみてしまっているため躊躇わない


だがその行動を他の生徒ができるかといわれれば微妙といわざるを得なかった


城島は捕縛してきた男を小部屋の床に転がす


「清水、椅子を用意してほしい、できる限り頑丈で両手足捕縛できるものがいい、床ごと固定してくれると助かる」


「わかりました」


鏡花は近くにあった椅子を二つ持ってきて形状変換と構造変換を駆使して少し大きめの椅子を作り上げる


そして全員でその男を椅子に座らせ目隠しした状態で手足を拘束する


「五十嵐、響を残して全員退室しろ、二年二人は周囲の警戒にあたれ、清水、幹原はこの部屋に誰も入らないように見張りだ」


全員が了解ですと言ってその場から出ていく中、静希と陽太は何故自分たちが残されたのか分からず目を白黒させていた


「さて、では尋問を開始するか・・・五十嵐、響、お前達には協力してもらう」


「協力って・・・」


「一体何を?」


疑問符を飛ばす二人に城島はとびきりの笑顔を向ける


「なにたいしたことじゃない、お前たちが船でやったことをもう一度やるだけだ」


そう言って城島は男の身体のつぼをいくつか刺激して無理矢理に意識を覚醒させる


痛みがあったのか呻きながら男は目を覚ましたようで目隠しのせいでなにも見えない状態に気付きながらも辺りを見ようと首を振り続ける


「なんだ?どこだここは?」


「初めまして侵入者君、君にはいくつか聞きたいことがあってね、ここに招待した」


「何を!?お前は一体誰だ!?」


当然の反応なのだが、城島の表情を見るとそれがまるで授業中の風景のように見えてしまう


笑みを浮かべて嬉しそうに話をしている


だがその認識が間違っている事に二人はすぐに気付いた


僅かに見える城島の目が、それを二人に気付かせた


城島は男の髪を掴んで思い切り引っ張る


「お前は私の質問に答えていればいい、それ以外の発言を許したつもりはない、分かったら首を縦に振れ」


髪を引っ張っているのに首を縦に振れなどという無茶を言われるが、男は顔を動かせない


「なんだ分からないのか?なら発言を許してやろう、分かったか?」


「・・・死ねこのクソが」


必死の抵抗だったのだろう、男は敵意をむき出しにした声を放つ


本来ならば怒るところだと思ったのだが、城島は怒らない


それどころか声を上げないようにしながら満面の笑みを浮かべている


その笑みは静希の浮かべる邪笑をさらに恐ろしく、楽しそうにしたような悪魔のような笑みだった


「OK、どうやら君は素晴らしい人物のようだな、よく見ておけお前達、軍流の尋問法を見せてやる、トランプの準備をしておけよ?」


そう言われ静希はその通りにトランプを用意する


二人はこれから起こることを何となく理解していた


船の中での再現がこれから起こる


しかも静希達なんかが行うよりずっと残虐で的確な方法で


「じゃあまずお前のことを何と呼んだらいいかな?名前が分からなきゃ始まらない、名前を教えてくれ」


「バカが、誰が教えるか・・・!」


どうやらこの男は徹底的に抵抗するようだった


無駄な抵抗をせずに従順にしていればいいのにと静希と陽太は冷や汗を流しながらその様子を見ている


城島は先ほどから笑いまくりだ、腹を押さえて声を出さないように必死にこらえている


何がそんなに楽しいのか静希と陽太には理解できない


「では私はお前のことをジョンと呼ぼう、ジョン、私はお前にこれから選択肢を与える、君はそのどちらを選んでくれても構わない、十秒以内にどちらかを選んでくれ」


「・・・あぁ?」


男は警戒しながらも城島の話を聞く


断ったら何をされるか分からないという恐怖感か、それともとりあえず話を聞いて情報を聞き出そうという魂胆か


「一・・・お前の部隊の構成と目的の詳細をすべて私に話す、二・・・私と楽しいおしゃべりをする、さあ選べ、無言の場合は二であると判断する」


その選択肢はもはや選べと言っている段階で破綻している


ここまで反抗している人間が一を選ぶはずがない


城島はそれをわかった上で聞いているのか、それとも何か別の目的があるのか、静希達は顔を合わせて首をかしげる


「なら2だ、顔は見えないとはいえ女としゃべるのは好きだぜ」


「OK、すばらしい、すらすら答えてくれて助かるよ、では質問だ、君は右手と右足、どちらを良く使う?」


「・・・は?」


城島の問いに男はキョトンとした


そしてその問いの意味を静希は理解した


「私としては十秒以内に答えてくれると嬉しいな」


「・・・そりゃ足だ・・・手より足の方がよく使う、右足だ」


「すばらしい!こうもすらすら答えてくれるとこちらもやりがいがある・・・」


城島は静希に合図する、城島の指は男の右足を示している


そこでようやく陽太も理解したのか眉間にしわを寄せた


静希はため息をつきながらトランプのうちの一枚を男の右足に近づける


「では、感謝のしるしだ、受け取れ」


城島が指を弾くのと同時に静希は男の右足めがけ釘を一本打ち込む


打ちこまれた釘は男のふとももの肉を裂き、深々と突き刺さっている


「ああぁぁぁあぁぁぁぁぁあああ!!」


男は悲鳴を上げながらもがこうとするが床ごと固定された拘束用の椅子はびくともしない


「さてジョン、お前にまた選択肢だ、一・・・お前の部隊の構成と目的の詳細をすべて私に話す、二・・・私と楽しいおしゃべりをする、さあ選べ、十秒間無言の場合は二であると判断する」


先ほどと同じ問い、男は痛みにもだえており答えられない


「残念、お前の返答が聞きたかったんだが、では二であるとして私と楽しいおしゃべりだ」


「あ・・・くそがぁ・・・!」


「では質問だ、お前は左足と左手、どちらを良く使う?」


先ほどと似た質問


つまり城島はこの男が一を選択するまでこの問答を続けるつもりなのだ


男は答えない


答えれば良く使う方に攻撃が入ることが分かっている


ならば答えないのが賢明


「むぅ、答えてくれないか・・・残念だ」


城島はまた笑顔で男の左腕と左足を指さす


静希は何も言わずに釘の入った二枚のトランプを男の左手足に近づけ、城島の合図とともに釘を放つ


男の悲鳴が部屋中にこだまする中、城島だけが笑っている


「答えなければ両方だとみなすから気をつけろ?さぁ選択肢だ、一・・・お前の部隊の構成と目的の詳細をすべて私に話す、二・・・私と楽しいおしゃべりをする、さあ選べ、無言の場合は二であると判断する」


まったく同じ問答をまったく同じトーンで繰り返す


壊れたラジカセのように続く問答に男は身体を振るわせ続けている


「答えないか、では二、私と楽しくおしゃべりだ、では質問、お前は右手と右耳どちらを良く使う?」


「・・・あ・・・み・・・右手だ・・・!」


「そうかそうか!答えてくれて助かるよ、従順であることはいいことだからな」


そう言って城島は右手を指さし静希に合図を出す


今度は右手に釘が打ち込まれる


再度男の悲鳴がこだまする中、静希と陽太は顔をそむけて悲痛な表情を浮かべている


「お・・・俺を殺したら・・・情報は手に入らないんじゃ・・・ないのか?」


「お前に質問への返答以外に口を使うことを許可した覚えはないぞ」


そう言って城島は構わず男を殴り付ける


と、ここで城島があることに気付く


男の手足から流れる血の量が増え始めている


今はまだたいした量ではないがこのままいけば危険域に達するだろう


「あぁ・・・まずいな、これだと出血多量で死ぬ・・・ちゃんと治療はしてやらにゃあならんな」


「は・・・はは・・・やっぱりな・・・お前らに俺は・・・殺せないだろ?」


「あー・・・いや、他の奴らが何人かお前の仲間を連れてくるだろうから別にお前が死んでも構わないんだけど、ほら、お前が死ぬと書類とかが面倒なんだよ」


城島のその返答に男は絶句している


人一人の命よりも後に襲いかかる書類の面倒くささの方が重要


自分の命が書類よりも軽いという事実に男は何も言えなかった


「だがそうだな・・・死んだ方がましだと思えるようにしてやるから、安心しろ」


城島はそう言って男の手足に刺さっている釘を無理やり引き抜き始める


ひと思いに勢いよく引き抜かずにゆっくりと時間をかけてぐりぐりと痛みを与えながら


男の悲鳴が部屋を支配する中、城島は四本すべての釘を引き抜き、名前を出さず手招きで陽太を呼ぶ


「このまま死なれると面倒だ、止血しろ」


「止血って・・・やっぱ・・・あれっすか?」


「そうだ、はやくやれ」


陽太はため息をつきながら能力を発動する


そして邪魔な衣服を燃やし傷口に炎の手を添える


肉の焼ける匂いが辺りを包むが空調の利いた環境のせいですぐに匂いはかき消えていく


そして陽太によるダイナミックな止血が終わると扉を僅かに開けて部屋の外にいる明利に声をかける


「すまん幹原、どうやら連れてきた段階で怪我をしていたらしくてな、治療してやってくれ」


「あ、はい、分かりました」


防音のせいかなにも知らない明利は血を流していた男に駆け寄り同調しその傷を治し始める


「すごい火傷でしたけど、ちゃんと治しました、箇所が少なかったので輸液の必要もないと思います」


なぜ火傷を負っていたのかは分からないが治療を終えた明利は何の疑いもなしに報告を終える


どうやらこの傷を彼らがやったものだとは思っていないようだった


「あぁ、良くやった、引き続き警戒していてくれ」


「了解です」


完全に治し終え、明利が退室すると同時に城島の顔が歪む


「さて・・・じゃあおしゃべりを開始しようか、うちにはたくさんお前を治療できる奴がいる・・・お前が死にたくなるまで・・・いや喋りたくなるまで続けようじゃないか」


誤字報告があったためにまとめて投稿


今回の話を書くために火傷においての死亡理由やその治療法について少しだけ調べました


ほとんど書かれてませんけど・・・


これからもお楽しみいただければ幸いです

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