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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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対策会議

「このめでたい席に面倒事か?一体誰だよ?デモンストレーションかなにかか?」


「だったらいいけどな・・・あ、先生どうでした?」


静希達がひと塊りになっていると話し合いを終えた城島が帰ってくる


「確定している情報では侵入者は十八、全員武器を持っている、横に扇状に広がってこちらに向かってきている」


どうやら明利の能力で索敵したより一人分多い、どこかに抜け穴があったようだ


「相手は森の中を進んでるんですよね?」


「あぁそうだ、何が目的なのか分からんが、こんなときに運がない奴らだ」


ここにいるのは学生とはいえ各クラスでトップの成績を誇るチームばかり


もちろん各機関の高官もいるものの、その護衛もしっかりといる中たった十八人でここを制圧しようというのは無理がある


「相手に敵対意志はあるんですか?モデルガンでサバゲやろうとしてるだけとかは?」


「確認をとったが、感知系の能力者いわく武装には実弾を装填していることが確定している、明らかに敵意むき出しなうえ、この島は私有地だ、勝手に入るだけで裁かれる」


「相手は能力者ですか?」


「いやそれはないだろう、能力者だったら一から教育しなおしだ、あんなお粗末な侵入の仕方があるか」


元特殊部隊の人間としてぞんざいな行動をしている侵入者が許せないのか城島はああしろこうしろとぶつぶつ呟いている


「それでこっからどうするんすか?俺らは黙ってた方がいい感じ?」


「いや、お前達はこれから対策会議に出てもらう、特別賞をもらった褒美だ、時間がないから急ぐぞ」


城島に引っ張られ静希達は会場とは別の一室に案内される


そこには先ほど特別賞をとった別の班もいた


喜吉、士努、鳴哀、楽導、その中でもトップの成績がそろっていることになる


静希達を含め六班、二年生含め総勢三十六人の生徒と数人の大人がこの部屋に集まっていた


「では今接近してきている侵入者について、対策を練ろうと思う、侵入者は十八人、主武装は確認できているだけでM16、何人かは明確には上げられないが拳銃も所持している者もいる、進行速度は遅いが着実にこちらに近づいてきている、陣形は散開扇状、間隔は五メートル程度、中央の者が一番先頭に出ている」


進行役の教師がホワイトボードに次々と情報をまとめていく


先ほど侵入者が発覚したばかりなのにどんどんと情報が明らかになっていく


能力者の利点として情報収集が容易である点だ


索敵系の能力者がいれば相手の位置、装備、進行速度や陣形などほとんどが手に取るようにわかる


現代の攻略戦において物量の次に優先される情報速度


今回は明利のお手柄か発見が早かったために対応も早い


「現状での対応はこの洋館を用いての籠城戦だが、他に提案のあるもの、特に学生諸君の意見には期待する、対人戦闘基本のARGを参考にするといいだろう」


司会のそんな言葉で生徒全員に視線が集中する


こんな場所に呼び出されて一体何をされるのかと思えば、恐らくはこれも何かの評価対象なのだろうが抜き打ちにもほどがある


戦闘基本のARGとは能力者が対人において行う戦闘時に最も気をつけなければいけない項目である


Aはアンブッシュ、つまりは待ち伏せ


Rはラッシュ、つまりは物量戦などの波状攻撃


Gはゲリラ戦、つまり局地戦闘


この三つは能力者に対しても無能力者に対しても最も警戒すべきもので授業の一環としても教わる部門である


何秒か考えた後、他の班の誰かがおずおずと手を挙げる


「あの・・・変換系能力者の手も借りて待ち伏せとか罠を仕掛けたりとか、どうですか?」


「ふむ、いい案だ、協力し合えば不可能ではないだろう」


思っていたよりも好印象、というより本当に意見だけを求めていたのだろうか、その場にいた生徒が全体的に安堵の表情を浮かべる


アンブッシュを基本とした待ち伏せ、相手がこちらに向かってくるからこそ可能な策でもある


「なら逆に背後から攻撃ってのもありじゃないですか?横から後ろに回り込んで一斉攻撃」


「・・・悪くはないがリスクが高い、もし反応されて一斉射撃を受ければ無事では済まないだろう、こちらから手を出すのも避けたい」


ゲリラ戦の基本である背後からの急襲、古典的ではあるが有効な策ではある


だがここにいるのは優秀であるとはいえ生徒だ


生徒を危険な目に遭わせるわけにはいかないという教師の考えなのか残念ながらその考えは却下される


そして相手は武装した状態で不法侵入してきているとはいえ無能力者


こちらが先に手を出せば問題になりかねない


その後もああでもないこうでもないと意見が出るがどれも攻撃や防御に関するものばかり


そんな中静希が手を挙げる


「君か、何か意見が?」


静希を見た司会進行役の教師は僅かに笑みを浮かべて全員が静希の言葉を聞くように仕向ける


「そもそも、なぜ彼らがここを攻略しようとしているのかを知るべきです、そうじゃないと守ることも攻めることもできない」


「ふむ、だがどうやって?」


「相手の陣形の端、一人か二人を捕縛して回収します、その後吐かせればいい、人質にもなる、目的も装備もわかる」


その言葉に生徒も大人も悩み始めてしまう


「だが先も言ったが反応されては危険だ、君達を危険にさらすわけには」


「うちの先輩は音を使って索敵できるし、逆に音を消すことだってできる、優秀な変換能力者もいる、声をあげさせず捕らえることは可能です、あの森なら五メートルも離れていればほとんど暗闇、万が一敵にも能力者がいた場合即撤退できます」


静希がそう言うのもなにも確信がなくて言っている訳ではない


事実静希の班は直接戦闘よりも生き残るための退却戦闘の方が経験が多い


無駄に強力な相手とばかり戦ってきたせいで多少の相手では気後れすることもないのだ


その言葉に全員が悩み始めていると城島が前に出る


「面倒な言い回しは嫌いだ、できるなら確率はどのくらいだ?」


「能力者がいないなら九割、能力者がいた場合六割ってところですか」


「行動種別は?」


「暗闇に乗じてのアンブッシュです」


時刻は完全に夜、日は落ち街灯などがなければ月の光に頼らざるを得ない


だが彼らがいるのは森の中、その月の光も頼りにできない


「相手が暗視装置を所有していたら?」


「接近時に熊田先輩に調べてもらってそれらしいものを付けていたら一時離脱、状況報告の後再度挑みます」


「・・・十分だな、お前たちなら万が一でも死にはしないだろう」


城島の言葉に全員が気付く、この班は完全奇形を倒した班だったと


実力的には申し分ない


「だが先も言ったが我々から先に手を出すのは」


「相手は武器を持っていて攻撃の意志を持っている、これは確実に敵でしょう?呑気にお話しようとして撃ち殺されたなんて笑い話にもなりませんよ」


先手必勝、先に手を出すにしてもやり方はある


わざわざ正面から行くのではなく、ひっそりと隠れて行動する


先に手を出したのはあちらであるように見せかければいいだけだ


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