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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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歓喜の後のグーパンチ

「よっしゃ、大勝利!」


「イェイ!イェーイ!イャッフゥ~!」


二人はテンション高くハイタッチして自らの勝利を喜ぶ


そしてそんな傍ら医療能力のある能力者生徒が連れてこられたのか、淀川と気絶したままの尾道に駆け寄る


そして同じく静希達に鏡花と明利、そして雪奈と熊田が駆け寄る


「おぉ明利!鏡花!雪さん!熊田先輩!俺ら勝ったぞむぐ!」


鏡花から贈られたのは賛辞の言葉ではなく、称賛の笑みでもなく、想いのこもったグーパンチだった


顔面に拳骨を喰らった陽太は鼻血を出しながら身体をのけぞらせるが踏ん張ってそのまま起き上がる


「いってえな!何しやがる!?」


「やりすぎよ!バカなの!?あんたらバカなの!?どこに友達が殴られた仕返しに拷問するようなバカがいるのよ!?」


「拷問じゃないぞ!あれは誘導だ!俺らの勝利条件を満たす為にしかた「手段が惨すぎるって言ってんのよ!」ぐむごはぁ!」


静希に向けてもグーパンチが飛んできたところで明利は静希に近付く


「あ、明利、大丈夫だったか?あいつに殴られて痛かっただろ?」


「まったくだ、いたいけな少女に酷いことをしたんだ、あれくらいしょうがないと「あんたは黙ってなさい!」うごふぅ!」


今度はボディブローを入れられた陽太がその場にうずくまる


「私は大丈夫だよ・・・だから・・・そんな顔しないで」


静希の顔はいつの間にか笑みから悲しそうなものになっていたのか、明利が少し背伸びして頬に触れると静希は笑って明利の頭をなでる


「ま、静を本気で怒らせるとああなるってこと、よくわかったかい?」


「ええ、あの時雪奈さんがあ、やべって呟いてた意味がようやくわかりました」


今まで数カ月静希と行動を共にし怒ったところは何度か見たことがある


いや今までは本気で怒っていなかったのだろう


今日まさに先ほど、静希が本当に怒ったらどうなるのか、この場にいる生徒全員に見せつけた形になる


以前鏡花が味わったあの静希はほんの一面でしかなかったのだ


「ていうか、あんたの新兵器ってあの釘なの?」


「おうよ、いい感じに機能してくれただろ?」


先ほど淀川に打ち込まれた釘は今床に転がっている


血で汚れた釘を見ながら鏡花はため息をつく


「あんなのどうやって打ちこんだのよ、あれだけの勢いで」


「んなもん釘打ち機でちょちょいのちょいだよ、ホームセンター行けば釘打ち機も安く借りられるしな」


「で・・・なんでその釘はハートから打ちだされたわけ?ハートは日用品じゃなかったの?」


「へえ、気付いたか、さすがエリート」


この釘は以前邪薙の神棚を買う時にホームセンターに行き思いついた攻撃法で、静希のトランプのハートシリーズの中に入れられている


あの戦いの中それを見抜いているあたりさすがは鏡花というべきか


「で?ナイフとかの武器はクローバーに入れてるんじゃなかったの?」


「だって釘は道具であって武器じゃないだろ?ナイフは武器、釘は道具、この違いだな」


静希に言わせれば釘は日用品だ、日曜大工などでも用い、一般人だって簡単に用意できる


その気になれば先ほど言った釘打ち機も簡単に手に入ってしまう


「ちなみに釘は何発分入れてあるんだ?」


「カード二枚で百八十発」


「ひゃ・・・百八十?」


「あぁ、一キロの本数が大体百八十なんだよ、だから二枚に分けて入れてる」


静希の使っている釘はN75と呼ばれる75ミリの長さを持つ釘で一キロ約百八十本の一般的な釘である


75ミリというと短く聞こえるかもしれないが攻撃面で考えれば人間の腕であれば細い部分なら貫通、手足の平なら確実に貫通しどこかに打ちつけることも可能である


だが軽く、数を持つことができる分、必然的に一発一発の威力はナイフに比べると格段に下がる


そして投擲用ナイフと違い軌道が安定しない


安定した軌道を描いて照準通りに命中するのは精々十m前後といったところだ


それ以上の距離になると上手く刺さらない可能性がある


「釘なんて使うくらいならボーガンとか使えばよかったんじゃないの?あの方が威力あるでしょ?少し重いけど」


「んん・・・ボウガン・・・てかクロスボウも一時期考えてたんだよ、でも断念した」


「なんで?」


「矢が高いんだよ・・・」


あまりにも学生的な理由に鏡花は力が抜ける


「そんなに矢って高かったっけ?」


「ピストルクロスボウはそこまで高くない・・・っていっても十本ちょい入ってるので千円、高い奴なら千五百円から三千円、両手で構えるクロスボウの矢なんて六本で八千円だぞ?バカらしくなってくるだろ?」


それに比べ釘は百八十本買って三百五十円


釘打ち機をレンタルさせてもらってもクロスボウの矢を調達する金額にも届かない程お得だ


「あんたって・・・なんていうか苦労してんのね」


よくよく考えれば水素酸素両方とも自ら作り出すことのできる材料だ、わざわざ材料を購入して作っているのは硫化水素のみ


そう考えると静希の攻撃手段は酷く安上がりに見えてくる


いや、やりくりしていると言うべきだろうか


「おうよ、コストパフォーマンスのいい攻撃を選抜してるからな」


何故だろうか、経済的で良いことなのだろうが、非常に情けなく見えるのは


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