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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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炎札vs光鉄

エントランスにつきしばらくすると淀川ともう一人、大柄の男子生徒がやってきた


大柄の男子生徒の方は呆れかえりながら渋々付き合っているといった感じだ


淀川と違ってあちらはいくらかまともな思考回路をしていてくれると助かる


「聞かせてもらったよ、お前ら落ちこぼれなんだって?『引き出し』の五十嵐、制御もできない響だっけか?」


どこかで聞いてきたのか、陽太が額に青筋を作り突っかかりそうになるのを押さえ耳ざとい奴だと思いながら静希は淀川を睨む


「俺も鏡花から少し聞いたよ、あいつ並みの天才なんだって?」


「おいおい嬉しいこと言ってくれるなぁ、そうだよ、お前らと違って俺はエリートなんだ」


神経を逆なでる作法でも身に付けているのだろうか、淀川の一挙一動が静希と陽太の怒りを誘う


今までの人生、静希はそこまで多くの人間と関わってきた訳ではない


その中で静希をここまでいらいらさせた人物はいないだろう


ある意味稀有な存在だと認識しながら静希は淀川へ怒りと殺意を向ける


「今謝れば半殺しで許してやるぞ?どうする?」


「謝る?なにも悪いことをしていないんだ、謝ることなんてないね」


最後通告のつもりだったのだが、その言葉もあっさり返された


もう容赦の欠片もない


情けをかけるつもりもない


静希は眉間にしわを寄せトランプを取り出す


「じゃあ互いに勝利条件の提示と行こうか、俺は『お前達を戦闘不能にすること』でいいよ、お前達はどうする?」


「あぁ?んなもん」


「陽太待て、俺らの勝利条件は『お前に俺が聞きたい言葉を言わせる』だ」


その言葉を聞いて淀川は笑う


「なんだいそりゃ?一言二言ならすぐ終わっちゃうじゃないか」


「安心しろよ、お前が死んでも言いたくないような言葉だろうからな」


「・・・へぇ、そうかい」


淀川の目つきが変わる


先ほどまでのさわやかなものから鋭く淀んだ物へと変化していく


どうやら淀川も静希達を敵として認識したようだった


「五十嵐、その言葉あらかじめあたしが聞いておこう」


「わかりました」


静希は城島に自分が聞きたい言葉を二つ告げる


その言葉は淀川が絶対に口にしたくない言葉であるであろうことを城島は理解できた


「・・・お前も性格が悪いな」


「褒め言葉として受け取っておきましょう」


静希が城島の元から離れると淀川は隣の男子生徒と話をしていた


「おい淀川、手を抜いていいか?」


「ざけんなよ尾道、全力でやれ、叩き潰してやれ」


「・・・はぁ」

尾道と呼ばれた男子生徒は呆れながら腰を落とす


やる気満々な淀川に対して尾道はあまりやる気は無いようだった


恐らく班員というだけでこの場に引っ張られてきたのだろう


「引き分けとかはどうするんだ?」


「引き分けなし、どっちかが勝つまで続く、それでいいだろ?」


「そうか、先生、それでお願いします、引き分けなしで」


淀川は嬉しそうにエントランスの隅にいる城島と自分の担当教師であると思わしき人物に声をかける


その近くには明利、鏡花、雪奈、そしてあの場にいた生徒達も何人かおり、さらに人数は増えているようだ、野次馬根性とは恐ろしいものである


「では、五十嵐、響vs淀川、尾道の演習を開始する、互いに名乗り、礼」


「喜吉学園一年B組一班所属、『歪む切札』五十嵐静希!」


「同じく『藍炎鬼炎』響陽太!」


「鳴哀学園一年C組三班所属、『光麗の士』淀川満!」


「同じく『鉄源峡』尾道豊!」


「始め!」


城島の言葉とともに全員が能力を発動する


最初に動いたのは静希


トランプの中からナイフを淀川に向けて射出


正面から放たれたナイフは一直線に淀川に向かっていく


最初から手加減などない、射出されたナイフ全ては人体の急所めがけて放たれた物ばかり


「危ねえな、当たったらどうするつもりだよ」


淀川は動きもせず、ナイフを止めていた


ナイフを止めたのは淀川の身体ではなく、空中に突然現れた輝く壁


瞬時に静希は相手が発現系統であることを悟るがその事実を陽太に伝える前に壁が消え、鋼の鎧を纏った尾道が突っ込んでくる


鉄の塊となって襲いかかる強力な一撃を喰らえば静希はひとたまりもないだろう


だが静希めがけての突進はその体に届く前に、能力を発動し炎を纏った鬼の姿となった陽太に易々と止められる


「簡単に突破できると思ってんのか?なめんなよコラ?」


どうやら陽太自身のボルテージも相当上がっているようでその熱量はかなり高い


最初から尾が顕現するほどに炎の総量も上がっているようだった


陽太が尾道を止めている間に静希はオルビアを取り出し飛び出る


「お?お前収納系か?」


「だったらどうした!?」


思い切り叩きつけた剣はまたしても先ほどと同じ光の壁に何なく防がれる


「収納系が前に出てんじゃねえよ、目ざわりだろうが!」


淀川が叫ぶと同時に光の球体が形成され静希の身体を強打する


静希が吹き飛ぶと同時に尾道が陽太によって淀川の後ろの壁まで吹き飛び叩きつけられる


「はっはっは、たいした事ねえな鎧野郎!」


炎を滾らせて喜びながら怒りを発散させている陽太ははたから見れば化物のようだった


どうやら互いの実力ははっきりしたらしい


淀川は静希よりも強く、陽太は尾道よりも強い


「あいつはちっとはやるみたいだな、尾道、相手交代しろ、お前あっちの方が向いてるわ」


「・・・分かった」


尾道がゆっくりと立ち上がると同時に静希も立ちあがる


あちらのブレインは淀川のようで尾道もそれに従っている


恐らく淀川の能力は発現系統でポジションは中衛と言ったところだろう、前衛への支援と攻撃を主にした発現系統、防御も攻撃もこなせるとなるとその汎用性は高い


だがその能力の内容がいまいちまだ分からない


見た目はメフィの使う能力の一つに酷似しているが


『メフィ、あの光の弾、どう見る?』


『ありゃ私のとは違うわね、私の使ってるのは発光体を打ち出してるだけだけど、あれは光そのものを触れられる様にして操ってるっぽい、威力は・・・平気そうね』


『当然!』


メフィによる能力の解析の内容を考慮に入れて静希は思考を巡らせる


怒りを燃やすのはいい、攻撃への原動力を常に補給できる


だが思考まで燃やしてはいけない、常に頭の一部は冷やしておかなければ状況を正しく理解できないからだ


「静希、俺らはどうする?」


自らの元に駆け寄る陽太に静希は息を整えながら状況を整理する


この状況、相手の思惑に乗るのはあまりいい気分はしないが淀川の能力は静希では受けきれない


先ほどは一発だけだったが鏡花と同程度の才能があるというのであれば何十発も同時に放てると考えた方がいいだろう


大量に能力を連発される場合静希の耐久力では確実に倒されてしまう


「願ったりかなったりだ、お前があいつ殴っとけ、お前なら痛くもかゆくもないレベルだ」


静希の腹部に残る鈍い痛みはあの攻撃が殴打に近いものだと告げている


だが生身の人間にこの程度のダメージしか与えられないのであれば強化状態にある陽太には毛ほどのダメージも通らない


「どんな能力だ?」


「メフィの使った光弾に似てるけど、威力がない分あっちの方が応用力がある、壁、弾、多分剣や鎧にもできるだろうな、壁出したらそこから回り込んでぶん殴ってやれ」


「発現系統か、上等じゃねえか、鎧のは任せて平気か?」


「それはいったい誰に言ってやがんだ?」


静希が鎧を纏う尾道を選択したのには意味がある


攻撃に関してどのような物が来るか分からない相手より鎧であり人型である以上、今の静希であれば持ちこたえることは十分にできる


「そりゃ失礼した、んじゃ行くぜおらぁぁ!」


炎を滾らせて陽太は淀川めがけ襲いかかる


そしてすれ違うように尾道が静希めがけ襲いかかる


襲い来る鉄の塊に静希は剣を横から薙ぎ払うようにその体に叩き付け、そのまま体を移動させ、突進を簡単に受け流す


突然目標が消えたように見えたのか、尾道は急ブレーキをかけ静希の姿を探し再度突進をかける


今度は姿勢を低く横に逃げられないように腕を広げ猛スピードで突っ込んでくる


だが静希にはあたらない


今度は正面上から叩きつけるように剣を振り下ろし、その剣を起点に尾道を跳び越える


一カ月近くの雪奈とオルビアの剣の鍛錬が静希に回避の方法を徹底的に教え込んだ


なんせ指南役は多くの戦いを経験した騎士と、いつでも最高の剣技を使用できる姉なのだ


しかも片方は下手をすればいつ死んでもおかしくない程の攻撃を繰り出してくる


僅かな時間とはいえ毎日のように死線を潜り抜けてきた静希には必然的にどのようにすれば安全に生き残れるか、どうすれば回避できるかなどの生存本能と剣術を組み合わせた独自の回避法を編み出していた


だがそれは対人、しかも体術においてのみ


しかもまず最初に教えられたのが防御と回避だったためにほとんどと言っていいほどに攻撃の指南は受けていなかった


だがそれでも静希は尾道の攻撃を避け続ける


雪奈やオルビアの鋭い剣筋に比べればこのような愚直な突進は動物のそれとなんら変わらない


この程度の攻撃は静希にとっては避けやすい攻撃でしかないのだ


攻撃はおざなりでも回避することに関して静希は一定以上の能力を保持していた


誤字報告を受けた分を含めて二回分まとめて投稿


この辺り結構ノリノリでかけたところだから誤字が心配です


これからもお楽しみいただければ幸いです

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