二年生の成績
「そうだ、雪姉たちの成績表も見せてくれよ」
「えぇ!?わ、私達はいいって、今日は静達が主役じゃないか」
「たいしたことは書かれていないぞ?それでもいいなら」
静希達は全員首を縦に振り熊田の能力成績表を受け取る
実習の個人成績としては以下の通り
『能力使用適正』S『対応力』A『思考力』B『意外性』D『精神安定性』A『連携・協力性』A
その評価に全員がおぉふとなんとも言い難い反応を示す
「なんというか、意外性がないってことはわかりました」
「だから言っただろう、特にたいしたことはないと」
備考欄には『サポートに関しては定評がある、だがチームを引っ張っていく程ではなく裏方に徹する節がある、もっと積極的に行動するとよし』と書かれている
「確かに先輩はあんまり表立って行動しませんよね」
「当たり前だ、五十嵐と同じで隠密行動の方が得意でな、あまり表立って行動するのは得意じゃないんだ」
静希も前衛として前に出るようなタイプではない、そして敵に姿を捕捉されることもあまりいい状況とは言い難い
どうやら熊田と静希は似た系統のようだった
「さて雪奈さんのは?」
「い、いや私のはいいって、そんな面白いものでも」
「これだ」
「あぁぁあぁあ!やめろぉぉぉ!」
熊田の裏切りにより一年生の元に渡された雪奈の実習の個人成績は以下の通り
『能力使用適正』B『対応力』A『思考力』D『意外性』B『精神安定性』S『連携・協力性』S
全体的に陽太よりも評価が高い、そこら辺はやはり先輩としての経験の差だろうか
「前衛としてはいい成績なんじゃないの?何であんなに嫌がって」
「いや鏡花、備考欄見てみろ」
静希に言われて備考欄を見てみるとそこにはこう記されている
『戦闘能力は非常に高いのだが一度スイッチが入ると止めるのに苦労する戦闘狂、もう少し落ち着きを持って行動するようにすると有り難い、実習先での周辺住人からの印象もあまりよくないようだ』
その内容に静希達は全員雪奈を見る
「な、なんだよ!しょうがないじゃないか!こう血を見るとテンションあがっちゃうんだからさ!」
「いや、まぁ・・・うん」
雪奈のこの評価は半分は仕方ないものだと思う、なにせ彼女は刃物がなくては能力を使えない、実習には常に刃物を所持している
そんな人間が周辺住人の評判が良いはずがない
だからこそ戦闘狂という部分が若干気になるのだ
長い付き合いの静希、陽太、明利だって雪奈の戦闘を何度も見たことがあるわけではない
特に彼女が高校に入ってからはほとんど見ていないと言ってもいいだろう
彼女がどんな実習でどんな戦いをしたのかを見ていない彼らとしては、この年上のお姉さんがどんな殺戮の限りを尽くしたのか興味はあるのだが、聞くのは少し怖かった
「もー・・・だから見せたくなかったんだよ、皆変な目で見てくるし」
成績をとり返しながら雪奈はしょぼくれてしまう
どうやら自分の見てほしくない部分を見られてしまったようだった
「ちょっと意外かも、面倒見のいいお姉さんってイメージあったから」
「鏡花ちゃんは見る目があるよ!私は面倒見のいいお姉さんなのさ!こんな評価は皆を惑わす悪魔の甘言なのだよ!」
「昔から雪さんは変わってないけどな、特に能力使ってる時ってオンオフ激しいし」
「あぁ確かに、手加減する時と殺す時で結構変わるよな」
「ちょっと二人とも妙なこと言わないの!私の評価がだだ下がりじゃないか!」
元からその一面を僅かながら見ていた二人はそんなに評価に変化はないが明利は首をかしげたままである
「そんなに変わるの?実習中はそんなことなかったように思うけど」
「俺らの実習中では一度もないな、結構前に山で遭難した時はすごかったぜ?」
「遭難って言うと小学校の時の話?まえ言ってた」
「そうそう、明利が運よく、いや運悪くいなかった時の話だ」
以前イギリスへの海外交流の際に孤島に流されたときに夕食時に話していたのを思い出す
「なんだその時の事話したんだ、ならそんなに気にすることもなかったかな?」
「いや細部までは話してないぞ、山に行って遭難したって事しか言ってない」
静希の言葉に雪奈の顔が見る見るうちに情けない顔へと変貌していきそれと反比例するかのように鏡花の顔が興味津々といったものに変わっていく
「さぁお祝いの席なんだ、なにか食べ物を」
「そうはいきませんよ雪奈さん、こんな面白そうな話逃すものですか」
「いやぁぁ!堪忍したってぇぇ!」
口が滑ったのが運のつき、雪奈はすっかり捕獲されじたばたと最後のあがきをしているが話を知っている静希からすればこの反応もいた仕方なしかなと思いながら当時のことを思い出していた
誤字報告をいただいたので複数投稿
個人の評価に関してはすごく迷った部分があります
これからもお楽しみいただければ幸いです




