成績表 学問
「おいお前ら席つけ、HRはじめんぞ」
授業の終わり、今度は通常授業の成績発表とこのクラスの最優秀班の発表である
クラス担任城島は相変わらず前髪で隠した目で辺りを見回しながら全員が着席するのを待つ
「それじゃお前らお待ちかね成績表の返却だ、首をくくる準備をして粛々と受け取るがいい、出席番号順に来い」
五十音順に呼ばれる中静希は名字が五十嵐の為出席番号も必然的に早めだ
さっさと呼ばれとりに行くと城島は一瞬笑って静希に成績表を渡す
「どうだった?どうだった?」
「まだ見てねえよ、落ち付け」
席に帰ると鏡花と陽太が野次馬のように静希の成績表を覗こうとする
静希達の所属する喜吉学園、いや日本の能力専門学校は科目数が多い
国語の『現国』と『古典』
数学では『数学一~三』や『数学A~C』
理科においては『基礎』、『化学』、『生物学』、『物理学』
地理歴史は『世界地理』、『日本地理』、『日本史』と『世界史』
公民に『現代社会学』と『倫理学』、『政治・経済学』
その他で『英語』『家庭科』『保健体育』『情報工学』
そして能力者専門学校のみにある科目として『能力学』というものがある
これら二十科目はすべて必修である
一年から三年にかけて行う教育がこれらの科目であり、さらに校外実習や演習が入るため能力者は非常に忙しい
普通の学校であれば理系や文系に分かれて履修する科目が変わるところだが、能力者に理系文系という区別はあり得ない
そのようなものでも使えるようにどのような部門でも対応できるように基礎のみではあるが徹底的に仕込まれる
全ての基礎を習得しその中で得意分野を伸ばしていくのが能力者に必要な教育である
静希が祈りながら成績表を開くとそこにはなかなかの評価が待っていた
能力と違いこの評価は通常学務に含まれるため五段階評価、その中で静希の平均は大体4
化学と生物学、そして数学と家庭科は3だったが現国、現代社会、倫理学と政治経済、そして情報処理で5をとっている、他のは全て4だった
「んん、まぁまぁだな」
「なによ結構いいじゃない、3があるのが惜しいところだけど」
「家にやかましいのがいるからな、少し下がったかも、数学が3っていうのが痛いな・・・」
そうこうしていると鏡花が呼ばれる
「ふふん、どうよ」
堂々と見せつける鏡花の成績はほとんど5で4がちらほら
「うわ、相変わらずの天才っぷり、生物と歴史と家庭科、あと古典が4か」
「うえ・・・お前ほんとに人間かよ」
「実力よ実力、あんたもこれくらい頑張りなさいよ」
陽太の特訓を面倒見ながら忙しい通常学業に加えこの成績、さすがというしかない
次に呼ばれたのは陽太
さてはてどんな成績だろうと思い眺めていたのだが陽太は城島からチョップを喰らっていた
もうそれだけでどんな成績かわかってしまう
「まぁまぁ、まぁまぁだよ諸君!」
陽太が開いた成績はなんとも形容しがたいものがあった
2と3と時々4、5をとっているのは日本史だけ
「へえ、あんた日本史得意なの?」
「おおよ、イメージしやすいし何より暗記ものだからな、日本史だけは力入れてんだ」
「次の日にはほとんど忘れちゃってるんだけどね」
「シャラップ明利、お前日本史とか苦手なんだから俺のこと言えねえぜ?」
「こ、今回は頑張ったよ!」
なんやかんやと騒いでいると明利が呼ばれる
明利は成績表を背伸びしながら受け取り勢いよく開いて僅かに肩を落とした
「どうだった?」
「うぅ、やっぱり歴史系は苦手だよ」
明利は理科数学系統がほとんど5、その代わり国語、日本史系統が一部3のものがおおい
力を入れたという日本史は4をとれているあたりかなり頑張ったようだ
「なんだ前回より上がってるじゃんか」
「やっぱ理科はすごいわね、全部5じゃない信じられないわ」
「明利は完全理系人間だな、化学と生物はテストでも九十点台だったからなぁ」
こうしてみると静希陽太は文系、明利鏡花は理系に分かれる
だが能力者に文理の区別はない
四人が分かれることはないとはいえ苦手な部分を補完するにはちょうどいいかもしれない
全員の成績評価が返されたところで全員を静かにさせようと城島が手を叩く
「はいはい死亡した奴も首の皮一枚繋がった野郎どもも静かにしろ、これからこのクラスの校外実習の評価を渡す、各班班長は受け取りに来い、一班」
「はい」
鏡花が城島に評価を受け取りに行く
静希達からすればこれが一番緊張する瞬間だ
なにせ自分達の行動がここに書かれるのだから
勉強はやるかやらないかで決まるが、実習での行動はその場の判断と適応力、対応力が求められる
能力者としては学業よりよっぽど重要な項目といえる




