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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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神の啓示

「珍しいわよね、シズキがこういう姿見せるのって」


「はい、どうしたものか・・・」


女性二人は何やら物珍しく、そして心配しているようだったがどうしたらいいのかわからなかった


だがそんな中邪薙が大きく息を吐く


「シズキ、お前が何を迷っているのかは知らん、そして私にはお前にどんな道も示すことはできん、だが今のお前は視野が大きすぎるか、小さすぎるだけなのではないか?」


「・・・どういうことだよ」


「普段のお前が見えているはずの道が見えなくなってしまっていると言っているんだ、周りが先に進む中、遠くを見過ぎている、そして近くを見過ぎている、そのせいで自分の一歩先さえも見えなくなっている」


一歩先すら


静希はその言葉に自分の足を見た


しっかりとついた自分の足


椅子から先に突き出せばたったの一m


歩きだしてもきっとその程度の距離だ


「お前が自分の足元すら見えなくなっているというなら、一度自分に何が見えるのか一つずつ確認してみることだ、そうすれば自分の足元がしっかりと見える、自分がどこに歩を進めるべきかも見えてくるだろう」


神は道を示さない、自らの内側に語りかけ道に気付かせる


静希は頭の中で整理しだしていた


自分が今何をしているか


自分に今何ができるか


自分が今何をすべきか


「あぁ・・・そうだな・・・」


静希はため息をついてオルビアの入れた紅茶を飲み干す


「邪薙、お前やっぱ神様なんだな、なんかこう、すっきりした!」


なまじ頭の回転が速く、理解が早いせいでごちゃごちゃといろんなことを考えすぎる


それが静希の利点でもあり欠点でもあった


「あれだな、陽太の考えないっていうのも確かに才能だな、こんなふうになることがほとんどないんだから」


「シズキが考えなしじゃ困るわ、これからもたくさん考えてもらわなきゃ」


「全部押し付けるなよ、お前も考えてもらわなきゃ困るぞ」


えー!?とメフィは嫌がって見せるが、内心そこまで嫌ではないというのが静希にも理解できた


「とりあえずは、一旦頭リセットして、何ができるか考えるか」


大きく伸びをして頭の上に乗っていたフィアを以前買ったハムスター用のケージに入れる


「てかシズキ、その子わざわざ籠に入れなくてもトランプの中に入れちゃえばいいじゃない、入れられるんだから」


「だってせっかく家にいるんだ、自由に動いた方がいいだろ」


静希の使い魔となったフィア、もともとはリスの奇形種だったその小動物


元より静希の能力であるトランプは生物は入れることができない


それは幼いころからの実験で確認済みだ


五百グラム以下の物でも蟻などの昆虫、ネズミなどの小動物は一切入れることができなかった


だがこの使い魔フィアはその中でも例外にカテゴライズされた


なぜかトランプの中に収納できたその使い魔


メフィから言わせればフィアは死体と同じカテゴリーらしい


成長することはなく、老化することも腐敗することもない、完全に停止したただの物質として認識される


静希の能力は生物、つまり生きているものを入れることはできないが死骸を入れることはできる


メフィの言う通り使い魔であるフィアは静希の能力としての認識上ただの『死体』として扱われているようだった


元より静希の言うことには絶対服従というかの如く動いているので何かいたずらをするということは一切ない


そういう意味でオルビアに次いで優秀な同居人といえる、わざわざトランプに入れる必要性がない


なによりせっかくペットのような存在ができたのだ、家にいて和ませてくれる分には何の問題もない


「ではマスター、本日はどのように致しますか?」


「そうだな、飯を作るにはちょい早いし、どうせだ、身体を動かすか」


「御意のままに」


部屋から木刀を二本取り出してオルビアとともに屋上へと向かう


静希がオルビアを剣として扱う上で必要な剣術、その指南をオルビア自身から受けている


実際に剣を動かして覚える方が的確、オルビアに剣筋を、雪奈との模擬戦で実戦に必要な勘と対応力をそれぞれ教わっていた


そして最近気付いたことなのだがオルビアは剣の中に入っている状態でも自分の刀身をある程度動かせるようだ


言い方を変えれば静希が何の力を込めなくても、その体を少しだけ操るか導くかして勝手に剣撃を放ってくれる


本当にオルビアは優秀の一言に尽きる


すでに静希の中である種悩みは吹き飛び、もうどうにでもなれというやけくそ感が漂いながらも自分が進む方向は決まりつつあった


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