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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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無能の苦悩

「シズキ、元気ないじゃない?」


「あぁ?・・・あぁ、そうかもな」


家に帰った後、静希は机に突っ伏して考え事をしていた


陽太と鏡花は残ってまた能力の特訓、静希は明利と一緒に先に帰宅したのだが、静希の頭の中には先ほどの鏡花の言葉がぐるぐると回っていた


教師などに何度も言われてきた言葉ではある、劣等生だの、才能がないだの


だがなんというか鏡花の言葉は芯に響く


「あぁ・・・陽太が鏡花を苦手っていうの分かる気がするよ」


陽太がいつか言っていた、相性が悪いという言葉


静希は元から自分の状況や内容をある程度理解しているからそれほどではないが陽太は基本理解ということをしない


それが陽太の短所であり長所でもあるのだが、鏡花は誰かに何かを説明したり事実を突きつけるのが天才的に上手い


どんな馬鹿にでも的確に分かりやすく伝えることができる


それは説明の仕方とかそういうレベルではない


恐らく天性のものがあるのだろう


変換能力者だけあってその物体の本質を理解するのが早いのだ、そして深くまで理解することもできる


だからこそ陽太の能力も簡単に改良の余地を見つけられるし、その術も見つけられるし導ける


だからこそ静希の能力がすでに限界値に達していることも理解できてしまったのだろう


きっと陽太は強くなる


きっと鏡花と肩を並べられるほどに強くなる


だがその時自分はどうなのだろうか


日々努力はしている


オルビアと雪奈から毎日のように剣術の指南を


体力強化にランニングを


能力の攻撃手段を日々模索し、気体生成に余念はない


だがそれでも、自分はそこまでしかできない


それ以上がない


そう考えると気が重くなる


「マスター、あまり考えすぎてはお身体に障ります」


「あぁ、そうだな・・・」


オルビアの出した紅茶を受け取りながら身体を起こして天井を眺めるが、どうしたって頭の中はぐちゃぐちゃだ


「んなこと言われ慣れてるだろ・・・てか・・・俺も人のこと言えないな」


それは鏡花と初めて会った時、初めて会話した時に陽太に言った言葉


バカにされても才能ないと言われてもそんなこと慣れたものだ


誰に言われたってそんなこと別に分かっていたことだからしょうがないというのは理解できる


いや分かっているからこそ、周りが変わっていく中自分だけ変われないことが口惜しいのだ


「なあオルビア、お前生きてる時、強くなりたいって思ったことあるか?」


突然の主の問いにオルビアは僅かに首をかしげたが、すぐに姿勢を正し凛とした表情を向ける


「あります、いつも、そして今も強くなりたいと思っています」


「・・・そっか、そういう時お前はどうする?」


「精進します、止まっていては何も変わりません、常に前を向き進もうという意思を持ち行動するものだけがその先にあるものを掴むことができるのです」


「・・・お前はそれを掴めたのか?」


「今はまだその途上に御座います」


オルビアの答えに静希は全身の力を抜いて大きく息を吐く


「なにシズキ?人生相談?そういうのはお姉さんに任せなさいよ、オルビアよりずっと長生きよ私」


「お前悪魔だろうが、悪魔に人生相談してどうする・・・ていうかそういう相談乗るのは神様だろ、どうなんだ?」


静希の問いに神棚にいた邪薙がリビングに胡坐をかいた状態で現れる


「神は無責任なものだ、一方的に語られ耳を傾けるだけ、迷い子の道を示すのは神の信仰者だ、神自身が道を示すわけではない、神は自らの内側に語りかけ道に気付かせるのだ」


実際に神が言うとなんだか真実味がある


いや実際真実なのかもしれない


宗教も何もかもほとんどは人間が作ったものだろう


中には神が定めたものもあるかもしれないが、ほんの僅かな上にほとんど改変されてしまっているかもしれない


何より教会の懺悔室でも話を聞くのは人間だ、人の道を示すのは人にしかできないということなのだろう


「なによそれ、神様の癖に役に立たないわね」


「守り神に道を聞くのが間違いなのだ、私はその場にいるものを守る、ただそれだけの神なのだから」


邪薙は大きく息を吐きまだぐるぐると何かを考えている静希に視線を移す


静希の元に一匹のリスもどきが駆け寄ってくる


それは静希の使い魔となった奇形種のフィアだった


その体をすりよせて静希を慰めているようにも見える


「ありがとなフィア、俺はお前がうらやましいよ」


付き合いが長いとは言えない人外達にとって、静希が何かを考えているところは何度も見てきた


そして少し悩む姿も見てきた、そんな姿も少しだけで静希は即座に最善と思える策を練り行動してきた


だが答えの出ないことにいつまでも悩んでいる姿は非常に珍しかった


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