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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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新たな情報

だというのに


「あの場で野菜食べるなんてどういう神経してるのよ、聞き込みに行ったって自覚あったの?」


「だって勧められたら食べるのが常識だし礼儀だろうが、それとも何か、せっかく俺らのために用意してくれたもの捨てろってのかよ」


「そうはいってないわよ!私たちが聞き込みしてる間にぼりぼり食べてたのが問題なの!」


「新鮮な野菜は新鮮なうちに食べなきゃもったいないだろうが!」


「お前たちはいったい何の話をしているんだ」


心の底からそう思う、一体こいつらは何をしにここに来たのだと


時間は十三時三十分、集合時間から三十分ほど遅れて聞き込みを終えてきた二人が部屋に入ってきながらしていた口論の内容がこれである


本当に聞き込みをしてきたのか心配になってくる


「聞いてよ静希、陽太本当にあり得ないわ、常識を疑いたくなる」


「いったいぜんたい何したんだよ」


「泥だらけの手で普通に野菜触るのよ?あり得ないでしょ!?」


「んだよ、ちゃんと滅菌消毒したっつーの」


「能力をあんな軽々しく村人の前で使うなんてのも論外なのよ!ちょっとは考えなさい」


「お前らいい加減にしろ、ちゃんと聞きこみして来たんだろうな・・・」


二人の後ろからやってきた熊田は腹を抱えて笑っている、あの様子では笑っていて二人を仲裁するどころではなかったようだ、班の分け方を間違えただろうかと静希は額に手を当てる


「そういうなら熊田先輩もすごいぞ、道端でいきなり女の人口説きだすんだから」


「しかも私たちの親と同じくらいの超年上」


「馬鹿者、あれほどの御仁はそういないものだぞ」


本当に聞き込みをしてきたのか怪しくなってきた


「あ、そうそう、忘れるところだったわ、新しい情報があったの」


「情報?」


「獣の目撃情報よ」


「!」


案外確信に触れる事項に静希の目が丸くなる


どうやら心配するまでもなく情報収集はきちんとしてきたようだった


「時間帯は?場所は?姿とか特徴は分かったのか?」


「落ち着きなさい、それも踏まえて一応話すから」


全員を用意してあったテーブルの近くに座らせて村の地図を出す


「あとお昼食べながらにしましょ?お腹すいちゃったわ」


「そうだな、全員弁当出して食おう、鏡花頼む」


「はいはい、全員集まったわね、ではこれから二時間近くかけて互いに集めた情報を共有しましょう、まず聞き込みから発表するわね」


そう言って赤いペンで地図のところどころにマーキングしていく、どれも畑や作物のある場所だ


「この印をしたのが動物の被害にあった作物の場所、畑だけじゃなくて天日干ししてあったようなものもやられてた」


「村のこの辺りは被害がないな、こっちは何があったんだ?」


「ここは大規模な水田よ、そのあたりはまったく被害はないわ、すぐ食べられる作物だけを狙ってるみたいね」


村の被害マークは西の破壊されたフェンスが近いほどに多くなっている


侵入経路はほぼ確定したと言っていいかもしれない


「次に時間帯だけど、これはまちまち、朝になって気付いたって人もいるし、昼に様子を見に行ったらやられてたって話もあるわ」


「出没時間までは分からないか」


「お腹がすいたらやってきてるような感じなんじゃない?」


まさに動物的だ、人間の考えではなく本能で動いているのだから当然と言えば当然だ


「じゃあ最後、目撃情報よ、まずは資料にあった爆発音を聞いたっていう人の話、被害の出る一週間前、夜の八時頃、次の日の準備もあって外に出て作業をしていた時、奇妙な音を聞いたそうよ、爆発のような衝撃音、ドン!っていう感じだったらしいわ」


八時、すでにあたりは暗い、この村にはほとんど街灯がないからなお暗いだろう


「発光とかはしなかったのか?」


「えぇ、音だけだって言ってたわ、この音は聞いてみたら他にも何人か覚えている人がいたわ、全部この破壊されたフェンスの付近に住む人たちよ」


発光していないということは、熱源、およびそれに属する能力である可能性は完全に消えた


無論見逃した可能性もあるが十中八九ないだろう


「最後に、目撃情報よ、これを見て」


鏡花が一枚の紙を取り出すと全員にそれを見せる


そこには四本足で構えをとっている獣のような姿の何かが描かれている


だが問題はそこではない、獣の顔、通常眼のある場所のさらに上にもう一対目があるように見える


「これが・・・その獣?」


「私も何度も確認したの、でもそれを見た人は目が二対あったって、目撃したのは昨日の夜九時、フェンスから五十メートルほど離れたこの場所よ」


指さすその場所には青いマークが付けられた


その場所は作物のある場所ではなくただの道だった、水田に挟まれた人が歩く用の小道


食事をしていたわけではなさそうだ


「ライトを向けたのは一瞬だったけど眼みたいなのが二つあったって言ってた、大きさは犬より少し大きいくらい、光に気がついたそいつはその場からすぐにいなくなったんですって、怖くて追跡もできなかったとも言ってたわ」


確かに夜の小道にそんな生き物が現れたら腰を抜かしてしまうだろう、その状況についてそれ以上問い詰めるつもりはない


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