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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」

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才覚の有無

「こうなったら二学期までには間に合わせるわよ、夏休みなんてないと思いなさい」


「え!?待ってくれよ!俺んなことになったら何時遊べば」


「人が教えてやるって言ってんのよ!黙って従え!こうまで進歩してないと私の沽券にかかわるのよ!」


鏡花は明利などに勉強を教えているのをよく見かける


明利の物覚えがいいのか鏡花の教え方がいいのか、すらすらと理解し覚えていくのだが、いかに優秀な監督指導役がいても陽太の相手は苦戦するようだった


「何度か特訓やってるの見たけど、あれって何やってんだ?でかい箱に手を突っ込んでるだけに見えたけど」


静希が帰りがけに見たのは三mはある巨大な箱に陽太が右腕を突っ込んで能力を発動しているところだった


しかもその横には鏡花がいて何やら罵倒やら叱咤している場面、あれを特訓というのだとしたら一体何をしてるのか見当もつかなかった


「そりゃ分かんないでしょうよ、こいつにしかできないしこいつにしか意味ない特訓してるんだから、はたから見りゃ私がこいつを罵ってるようにしか見えないでしょうね」


自分のやっている特訓が特殊であることは十分理解しているようだ


今まで陽太の行ってきた特訓というと、とにかく炎を出して総量を上げたり炎の熱を上げようとしたりといった事を目的とした精神修行の方が主だった


能力を発動させた状態での座禅をやっていたのを思い出す


炎の威力が弱まったり強くなったりを自分で感じ取って能力を高める


運動第一の陽太には似合わない訓練だが精神状況や感情に左右される陽太にとっては一番つらく、一番適切な訓練である


「今度は何を安定させるんだ?それとも出力アップか?」


「どっちでもないわ、そんなの本人に勝手にやらせる、私が指導するのはまったく別よ」


いかなる状況でも安定した出力を出したり、高い能力を引き出したりするための精神的なトレーニング、鏡花はそういう訓練をさせるのだとばかり思っていたのだが、どうやら違うらしい


炎の出力でも熱量でも安定性でもないのなら、陽太の一体何を強化するのだろうか


「さっき間に合わせるって言ってたけど、二学期までに何か変わるのか?」


「変わるわ、二学期が始まる時、早ければ夏休みの終わりごろにはある程度形になってると思う」


「それって、実力的にどれくらい変わるの?」


「そうね・・・銃が大砲になるくらいかしら」


あっさりそういってのけた鏡花の台詞に静希も明利も目をむく


今の陽太の力はかなり強い、それこそ並みの能力者では防戦一方になるだろう


鏡花のように能力も高く、判断力も並はずれた天才型の人間ならその行動パターンの少なさから簡単に勝利に持ち込むことができるだろう


だが本来炎を纏っての攻防はそう簡単には破れない、弱点を知っていたとしても速い攻撃と強い力に大概が強いプレッシャーをかけられ防戦を強いられる


今のその陽太の力を銃として、大砲までその戦力が上がる


長年陽太を見てきているがそれほどの劇的な変化を陽太が起こすとは考えられなかった


「あんたが私のやってる方法を思いつかなかったのは仕方ないわよ、分かっていても訓練のしようがなかったんだから」


「お前ならできるのか?」


当たり前よと当然のように言い放ち正座させられたままの陽太の肩に手を置く


「こいつは変わるわよ、一度決めたら標的を変えない、一度決めたら迷わない、考えない、こいつのバカは才能よ、私にもあんたにも明利にもない、こいつの才能絶対開花させて見せるわ」


いつの間にか陽太を高く評価している鏡花のその言葉に静希も明利も目を丸くしていた


「お前らいつからそんなに仲良くなったんだ?」


「仲よく?なってないわよ、うちの班は前衛こいつだけなんだから意地でも強くなってもらわなきゃ」


「こいつの特訓ははっきり言って地獄だぞ、ちょっと気を抜くだけで鉄拳が飛んでくるんだから」


鉄拳、多分比喩ではなく実際に鉄でつくった拳で殴っているんだろう


だが陽太の不安定な出力もそういった刺激によって安定へと向かうかもしれない


そしてなおかつ陽太のレベルが一つあがるのであればこれほどうれしいことはない


「じゃあ鏡花、俺の能力も何かこう強くしてくれよ」


「あんたのは無理よ、自分で試行錯誤しまくってそれなんでしょ?こいつは試行錯誤に余地があったからまだ伸び代があるけどあんたのそれはもう限界値よ」


確かに静希は幼いころから自分の能力をあらゆる面で強化しようと試行錯誤を繰り返してきた


今更自分の能力に改良の余地があるとは思っていない


「厳しいことを言うならあんたの能力はそれ以上成長しない、多分伸び代自体がないんだと思うわ、あんたはこれからもずっとその能力で戦わなきゃいけない、どうやって戦うかはあんた次第、私は口を出せないわ」


「やっぱな・・・そうだよなぁ・・・」


改めてそう言われると厳しいものがあった


はっきりとお前には才能がないと言われているようなものだ


努力しても才能ある者には届かない


特に鏡花のような努力する天才には絶対に届かない


陽太だって才能はある、今まではそれを指導する、いや正しく指導できるだけの人間が近くにいなかったからこそ静希と同じような劣等生扱いされていただけだ


鏡花という指導者が見つかった今陽太は変わる、それもものすごい速度で変わるだろう


静希は自分が置いていかれているような感覚に陥っていた


誤字報告をいただいたので複数投稿


誤字を見つけ出す才能が欲しい


これからもお楽しみいただければ幸いです

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