試験の結果
静希達の学校で行われる定期試験
その定期試験には筆記はもちろん能力の検定も含まれる
なかでも七月半ばに行われた期末試験は大々的に能力の審査が行われたのだが
その結果が配られるや否や陽太は床に正座させられていた
それが教師から受けたものであれば納得もできたのだろうが、陽太を正座させているのは腕組をしながら額に青筋を浮かべている静希達一班班長清水鏡花である
「ねえ陽太、私がなんでこんなに怒ってるかわかってるわよね?」
「はい、承知しております」
陽太は足のしびれを必死にこらえながら首を垂れている
鏡花が手に取ったのは陽太の能力成績
そこにははっきりと陽太の成績について記されている
「なんで私が指導してまったく評価が変わってないのよ、あんた本気でやったんでしょうね?」
「本気でやりました、でもだめでした」
かなりご立腹の鏡花にその様子を眺めていた静希と明利は顔を合わせて怪訝な顔をしてしまう
「おい鏡花、そんなに責めてやるなよ、あがらなかったもんはしょうがないじゃんか」
「そうだよ、頑張ってたんだし、なにもそこまでいわなくても」
「二人は甘いわ!この私がくそ暑い放課後ほぼ毎日付き添って指導してたっていうのにまったくの成果なし!?冗談にしては笑えない上にむかついてくるわ!せっかくクラス最優秀班になれるかも知れなかったのに!」
だめだ、鏡花は頭に血が上ってしまっていて聞く耳持たずだ
事の始まり、陽太が鏡花に指導を受け始めたのは六月のザリガニ討伐実習のすぐ後までさかのぼる
「鏡花、頼みがあんだけど」
校外実習のレポートを提出した後、HRを終え全員が帰宅の準備を進めている中の事である
「なに?まさか宿題教えてとか?少しは自分でやりなさい」
「いや、宿題は静希に写させてもらうからいいんだけど」
よくはないでしょと鏡花の突っ込みが冴えるがその場はスルーして陽太は言葉を続ける
「実は付き合ってほしいんだよ」
その言葉に鏡花の全てが停止したのはいうまでもない
表情、動き、思考に至るまでが凍りつく
そして数秒放心した後顔が一気に真っ赤になっていく
「ああああああああんた!こんなとこでなに言ってんの!?ふざけてるわけ?!」
「いやふざけてねえよ、真剣に考えたんだ、俺このままじゃいけないなって、だからこうして」
「最悪!こんな人がたくさんいるってのに!何考えてんの!?静希達からも何か言ってよ!」
「あ、明利この前言ってた料理なかなか上手くいったぞ、ありがとな」
「よかった、お味噌少なくなってたけど足りた?あれに豆板醤とか入れると美味しいよ」
「あんた達はなに所帯じみた会話してんのよ!」
完全に傍観を通り越して関わりを持ちたくなさそうな二人の首筋を掴んで問題の渦中に無理やり引きずり込んでいく
「このバカは昔からこうなわけ?!人にこ、告白するのもこうやってどこかしこ構わない訳!?」
どうやら完全に頭に血が上ってしまっているらしく冷静かつ安定した思考ができていないようだった
「落ちつけよ鏡花、こいつの話を全部真に受けてたら身が持たないぞ?大概主語述語抜けてんだから」
「ふざけないで!さっきの言葉に一体他にどういった意味があるってのよ!?」
静希が大きくため息をつきながら呆れ果てる中、明利が二人の間に立つ
「えと、陽太君、鏡花さんに頼んだことを一から言ってみて、何を?いつ?どこで?誰と?なんで?どうやって?主語と述語しっかり含んでね」
まるで小さい子に言い聞かせるような的確でしっかりとした明利の言葉に陽太は首をかしげる
「あ?能力の特訓を、放課後に、演習場で、鏡花に付き合ってほしくてな、この前の実習ほとんど役に立てなかったし」
その回答をした陽太を眺めてポカンとしている鏡花をみてほらなと静希は呆れながら帰り支度を整える
「こ・・・この・・・」
「どうなんだよ?ダメか?」
「このバカがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
鏡花の能力が発動し陽太の身体が限界ぎりぎりまで地面に埋められたのは言うまでもない
時間は戻って七月半ばの陽太の正座シーンから
「まぁでも陽太の能力の操作性の悪さは折り紙つきだ、一カ月そこらで結果が出ると思ってたわけでもないだろ?」
「わかってるわよ、こいつの能力、直にどんなものかしっかりと解析させてもらったわ、出力は不安定、操作性も悪いし炎の射程距離もほとんど皆無、何でこんな能力で普通に戦えてるのか不思議なくらいよ」
それは陽太が能力を使う上でどれだけ苦労してその方法を身に付けたかが理解できるほどに不安定な能力
いや能力ではなく操作性と制御の問題だろう
だからこそ鏡花が取り組んだのは陽太の能力の操作性の向上の一環
陽太が自分の能力をより操作できればそれだけで陽太の強さは一段階上がる
だが一カ月でそれをこなせるほど甘い話ではなかった
今回から七話がスタートです
今まで通り誤字多く進行遅くまったりと投稿していこうかと思います
これからもお楽しみいただければ幸いです




