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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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結果報告

静希達が戻ってきたときはまばらだった人々が、目標のザリガニの亡骸を発見した途端に野次馬が野次馬を呼び橋の上と川の近くは人がごった返していた


その視線は胴体から木を生やした巨大なザリガニよりも、そのザリガニを打倒した静希達の方に注がれている


自分たちよりも若く、ただの学生にしか見えない少年少女たちが化物にしか見えないような生き物を倒しほぼ無傷で帰還したことに町民は僅かながらに恐怖さえ覚えていた


「ここでいいだろ、鏡花固定頼む、絶対に動かせないようにな」


「はいはい、残業はこれで終わりだからね」


川の水の流れを利用してここまでザリガニを運んできたが、このまま下流に流されても困るため、これ以上水に流されないように荷台の土台ごと固定する


太いワイヤーに周囲の土を鉄に構造変換し頑丈に固めてしまう


すると騒ぎを聞きつけたのか漁業組合の荻野が野次馬をかき分けてやってくる


「おぉ!見事なものですな、これほどの生き物を軽々と・・・!ぜひ武勇伝を聞きたいところですな!」


どうやら目の前の大物にテンションが上がってしまっているのだろう、少し興奮気味に静希達をたたえるがそれより先に静希は少し休息を取りたかった


「お疲れ様です、荻野さん詳細は後ほど、まずは先生に報告をしなければなりません」


「おっとそうですか、残念ですが仕方ありませんな」


問題は片付いたのだからそれくらい後でもかまいませんよと告げて荻野は辺りに集まっている野次馬への対応に追われ始めた


静希達に近づこうとする者やザリガニに近づこうとするものが絶えないために他の漁業組合の人間も駆り出されているようだった


「ようやく仕事終わりかぁ、疲れたわ」


「ほんと疲れたぁ、お風呂入りたい~!」


「もう少しだから我慢しろ、ちゃんと歩け」


「静おんぶしろ!年長者をいたわれ!」


「はいはい、でもその剣ごと持つのは無理だからな」


巨大な剣を引きずりながら民宿へと全員で戻ると玄関には城島が待っていた


「御苦労、任務は無事終了か」


「はい、問題もありましたが、あとでまとめて報告します」


問題というワードに城島は僅かに眉を動かすが疲労の溜まっている静希達の様子を見て僅かにため息をつく


「早く風呂に入っておけ、昼食の準備も終わっている、報告は食事しながらだ」


とにかく一刻でも早く休みたい生徒達はその申し出に我先にと風呂の準備をして駆けこんでいく


なお雪奈の持つ大剣は部屋に入らないために民宿の玄関に立てかけられていた


風呂に入りゆっくりと体を温めた静希達は身体から湯気を出しながら城島の部屋に行き用意された昼食に舌鼓を打つ


そして同時に任務中に起こった出来事をあらかた話していた


もちろんどこでだれが聞き耳を立てているかもわからないので悪魔などのワードはすべて伏せてある


「大体事情はわかった・・・で、そいつが件のげっ歯類か・・・」


食事中でも静希の頭の上で丸くなっているフィアを見て城島はうむむと悩むような唸りを上げる


「一応俺の能力で収納できるんですけど、隠しておいた方がいいですか?」


頭の上に乗ったままフィアを掴んで城島の前に差し出すと彼女は少し触った後でフィアを静希の元に返す


口元が僅かに緩んでいたのは気のせいではないだろう


「そうだな、隠しておいた方が何かと便利だ、そのげっ歯類に関しては五十嵐お前に一任する、お前のツレが関わっている時点で報告などできんから煮るなり焼くなり好きにしろ」


「焼いても美味くなさそうっすけどね」


「口をはさむな、いいから飯食ってろ」


陽太の茶々を完全に受け流し城島は手元にある静希達の持ち帰った資料とにらめっこしため息をついている


「まず目標だが、息の根が完全に止まっているなら問題はないだろう、この後委員会の人間に研究所でお前たちが戦闘したのも含めて引き渡す」


「え?そんなことするんですか?」


「あれがただの奇形種であればその必要もなかったんだがな、あの研究所から抜け出した素体のうちの一つとなれば死体でも十分調べる価値があるからな」


人工奇形種、城島はそう言ったがあのザリガニと研究所の奇形種が人工奇形種である確証はない


それでも調べてみれば何かわかるかもしれないというのも確かな事実だ


「んじゃ私達の仕事はあの奇形種の死体の見張りですか?」


「そうなるな、またどっかのバカがちょっかい出さないとも限らない、できる限り早く委員会に動いてもらうが、今日の夜までは確実にかかるだろうよ」


「ひょっとしてまた徹夜ですか?」


さすがに二日続けて寝ずの番を続けるというのは肉体的にきつい


何せ今日は戦闘を二度も続けたのだ、精神的にも肉体的にも疲労困憊と言える


「安心しろ、今から連絡すれば深夜まではかからん、お前達が遅くまで見張りをする必要はないだろうさ」


「よかった、今日はぐっすり寝られそうだな」


「うん、疲れたからゆっくり休みたいよ」


夜までであればまた寝ずの番をすることもなくなる、少しは静希達の負担も減らせるだろう


城島の言うどっかのバカがちょっかいを出してくればまた静希達が出張るはめになるのだが


少し席をはずし委員会に連絡を入れたのだろう、戻ってきた城島は書きかけのレポートを見て僅かに眉をひそめた


「ではお前達の戦闘は・・・今回は目標の完全奇形一体と奇形種一体だな、これだけ見れば立派なもんだ」


「先生、もう少し楽な任務はないんですか?私たちばかりきつい内容になってる気がするんですけど」


「なにを言うか、難易度が高ければそれだけ評価も上がるんだ、むしろありがたいと思え、それにな若いうちの苦労は買ってでもというだろう」


「せんせー、このままじゃ俺ら苦労しすぎてすぐ白髪だらけになっちまいますよ」


「お前たちがそんなか細い神経してるとは思っていないから安心しろ」


なにに安心しろというのか疑問だがもはやこの悪循環からは逃れられないような錯覚さえ覚える


どこから狂いが生じたのか、静希達は苦労のオンパレードの中に巻き込まれている気がしてならなかった


誤字報告をいただいたので複数投稿


なんだかいつもの調子で誤字が出始めました、こりゃなんとかせにゃいかんね


という訳でこれからも誤字が多いと思いますがお楽しみいただければ幸いです

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