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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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帰還

「これなら人一人くらい簡単に乗せられそうだな」


静希は冗談で言ったのだがフィアはその内容を理解したのか明利の身体の下にもぐりだす


「え!?なに?!なに!?」


スカートの中にもぐられるのが恥ずかしいのか必死に抑えながらも簡単にその体を持ち上げてしまう


まるで小型の馬に乗っているような高さだ


明利は落ちないように必死にフィアの身体にしがみついている


「結構賢いみたいだな、こっちの言ってることわかるのか?」


「試してみましょう、フィア、ちょっとジャンプしてみなさい」


鏡花が何か言ってもフィアは何を言っているのか分からないのかその体を鏡花にすりよせるだけだった


「だめか?なら座ってみてくれ」


熊田の言葉も理解できないらしく、明利を乗せたまま辺りをくるくると回っている


「フィア、そろそろ明利を下してやれ」


静希がそういうとフィアはその言葉を理解したのか伏せるようなポーズをとって明利が降りられるように高さをなくす


「静の言うことだけわかるのかな?」


「えぇー、なんか不公平じゃない?」


「俺の使い魔ってことになってるしな、このくらいはしょうがないだろ」


静希が頭をなでるとフィアは嬉しそうに尾を振り乱し戻っていいぞと告げると元のリスの姿に戻る


「さて・・・」


静希達は先ほどフィアが喉笛を噛み砕いた奇形種の元へと向かう


傷は深く血を脈々と流しながら横たわっている


動く気配はなく完全に絶命しているようだった


「結局こいつはどうやって生き残ってたのかしら?二年も時間を止めてたの?」


「それもあるだろうけど、この辺りの血を見るに同じような動物を食べて食いつないでたんだろうよ、連続して能力を使えば自分ごと時間を止められる、さすがに最後の方は腹が減ってただろうけどな」


途中までは同じ境遇の動物を喰らえばいい話だが、自分以外の動物はどんどん餓死して死んでいく


そんな中自分だけ生き残り耐えるように能力を発動させ続けたあの奇形種


フィアと同じように静希達がやってきたのはある意味幸運だったのかもしれない


「先輩、この部屋から別の部屋への道ってありますか?」


「うむ、左右に伸びて大きな部屋があるようだ、確認するか?」


「こいつが生き残っていた以上他にも可能性ありですから、探しましょう」


熊田の言う地点を調べ、鏡花の能力を使って扉を開くとそこには大きめのケージというか牢屋のような頑丈そうな鉄製の籠がいくつも設置されていた


どうやら上の階は小動物が、この階層には大型の動物が収容されていたらしい


だがその籠の中には動物が一匹もいなかった


恐らく全ての動物が先ほどの部屋に収容されていたのだろう


その中の生き残りがあの奇形種だった


「なんだ、もっとたくさんの動物がいるかと思ったのに」


雪奈の動物という言葉が静希には獲物といっているように聞こえる


戦闘時において雪奈の猟奇性は班内でも随一だ


相手の能力が停止などというものでなければあの一瞬で奇形種など真っ二つだっただろう


「敵がいないのはいいことだ、いくつか資料を持ち出してここから出よう、長居することもない」


打ち捨てられた奇形種の死骸に僅かに手を添えて静希達は上の階層に戻る


静希達が持ち出した資料は全部で二種類


まずはこの研究所の人員一覧、後に吉岡が何か言ってきたときの対策、そしてこの研究所に収容されていた生物の一覧、これだけで大きなファイル七冊分くらいあるのだから始末に負えない


その中で一番重要だったのが今回の目標であるザリガニの奇形種と静希の使い魔となったフィアの資料

さすがに六人いると言ってもそれだけの数を持ちだすのは苦労した


洞窟まで戻り資料を急ごしらえのカバンの中に押し入れザリガニの亡骸の元に戻る


「で、こいつもどうしようか?埋葬する?」


「できるなら町に持ち帰ってきちんと報告したいな、鏡花、一仕事頼めるか?」


「なによ今度はなに作らせるつもり?」


「このデカブツを乗せられる荷台だな、引くのは陽太がやってくれる」


静希の言葉に大きくため息をついて鏡花は集中してザリガニの亡骸の下に巨大な荷台を作り出す


ザリガニの体重にも耐えられるものというだけあって相当大きい


「静希、ずっと俺が引かなきゃいけないのか?さすがに疲れてるんだけど」


「ふもとの川まで行けばあとは水が運んでくれるだろ、そこまでは頼むよ」


それならいいかなと了承し陽太が能力を使って荷台を引き始める


「これでようやく終わりかぁ、長かったなぁ」


「あぁ、奇形種と二戦するとは思わなかったよ・・・疲れた」


「お疲れ様、今日はゆっくり休みたいね」


疲労感に満ち満ちた身体に鞭を打ち、山を下って互いに疲れを訴えながら静希達は町へと戻っていく


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