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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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捜索の合間に

「この後どうする?聞き込みに参加するのか?」


「いや、もうちょっとここら辺の探索範囲を広くしておきたい、後二十mくらい広げておきたいな、明利、できるか?」


「大丈夫、ちょっと集中しなきゃいけないけど」


「OK、んじゃ雪姉にしっかり護衛してもらおうか」


「わかったよ、気ぃ張っとく」


ナイフに手を添えながら雪奈は周囲への警戒を強める


こうして戦闘態勢になると実勢経験が豊富なのが見て取れる


構えや視線だけではなく、その雰囲気、彼女が纏う空気とでもいうのか、落ち着いていながらにわずかに含まれる未知への敵意が静希にも感じられた


「それにしても・・・」


周囲の風景は木々で埋め尽くされている、見通しが悪いわけではないが、葉によって日光は遮られ、木の幹がさらに可視範囲を狭めている気がする


野生動物がどこにいたとしても不思議はない、彼らはここに住み、ここでずっと生き残ってきたのだから


身を隠し、相手の様子をうかがうことに関しては彼らを上回ることはできないだろう


もし山で目標を探すことになったら明利と熊田の索敵が生命線になる


その前に作戦を立てて何とか村に侵入したところを捕縛したい


「静希君、終わったよ」


「あぁ、お疲れ様、さて、どうするか・・・」


フェンスを眺める静希は村を囲っているフェンスを眺める、大きくサークリングしているこのフェンスを自分ならどこから攻略するか


「報告ではフェンスの破損はここだけだけど、一応ぐるっと見て回ってみるか、破損があったらそこにも中継点を置いていく形で・・・明利、いけるか?」


「うん、マーキングするだけならそれほど疲れないよ」


「それじゃあ行きますか、雪姉、このまま村の外周を沿って移動するよ、内側を通るから警戒解除して大丈夫」


「そうか、やっぱ気ぃ張ってると疲れるな」


ずっと集中していたのだろう、ちょっとその指示を出しただけで即座に集中状態を作れるというのは見事だ、歴戦、その表現が一番正しいだろう、静希達にはない強かさだった


できるなら早くこの村の状況を把握しておきたい、村の出入り口となる車道、破壊されたフェンス、そして他にも侵入経路があるならそれも確認しておきたい


そうすれば罠を張るにも、待ち伏せるのにも断然優位に立てる


「時に静よ、あの二人喧嘩ばっかしてるけどそんなに仲悪いのか?鏡花ちゃんってこの前あったばっかりでしょ?」


「あぁ・・・あの二人はなぁ」


あの二人の相性の悪さはさすがに雪奈でも気付くようだった、そもそも出会って半日も経たないうちに敵対関係になれる存在などそうそうあり得ない


恐らく、根っからお互いのことを認められないのだろう


「鏡花は陽太がまともな力を持ってるのにそれを扱いきれないでいるのを怠けてると思って、ちょっかいというか指摘というか、そういうことをしてるんだけど、陽太は自分じゃ頑張ってるつもりだからやってるのにやれって言われるような、そんな理不尽な感じなんだろうな」


陽太に向ける鏡花の対応はまるで母親か教師のそれだ、的確に正しいことを指摘する


だがその言葉が攻撃的すぎる


だが陽太とて鏡花の言葉が正しいのがわかっているからこそ強い言葉で反論するのだろう


そうして互いに攻撃的な言葉の応酬になる、言葉のドッジボールという表現が一番あっている二人かもしれない


「陽太はあぁいう教師みたいっていうか、世話を焼くタイプって結構苦手なんだよ、年上とか年下だったらまだ違ったかもしれないけど、同い年の奴にああまで言われちゃ引き下がれないだろ」


いくら優れているとはいえ鏡花は同い年なのだ、同じ経験はしてこなかったにせよ、同じ才能には恵まれなかったにせよ、同じ年月は経てきた


安いプライドと言ってしまえばそこまでだが陽太だって男だ、簡単に引き下がることのできない程度の物は持っている


「あの二人・・・なんとかならないかな・・・」


さすがに多少慣れてきたとはいえ他人の口論を楽しく見る者はいない、それが臆病な明利ならなおさらだ、珍しくため息をついて村の方を見ている


「さっきも言ったけど、だから今回一緒にしたんだよ、どうせ口論はあるだろうけど熊田先輩が上手くまとめてくれるのを期待するしかない」


「静はやらないのかよ、お前仲裁役だろ?」


「同い年の俺が言うより、年上の人が仲裁した方がいい時もあるんだよ、特にあの二人の場合は」


互いがライバルや研鑽しあう仲だからこそ衝突するということもある、そういう場合自分より立場が上の人間に諭してもらうのが一番効率的だ


そもそも静希の言うことを陽太や鏡花が素直に聞くとは考えにくい、思い切り口論に参加してしまう可能性だってある、というより諭すのを越えて挑発してしまったことさえある


きっかけさえあればいいのだ、何かお互いを尊重することのできるきっかけさえつかめればきっと変われるはず


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