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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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奇形種の咆哮

静希の掛け声とともに陽太と雪奈が散りながら奇形種に接近していく


「熊田先輩、敵は今どこに?」


「ここから十数mの所にいる、何ら変わりないのだが、妙だ・・・」


「どうしたんですか?」


「さっき戦闘態勢に入った時俺は索敵を怠らなかった、なのに一瞬音が反響してこなかったんだ」


「・・・?どういうことです?」


怠らなかったのに一瞬音が途切れるとは妙なことを言う、静希は熊田の言葉に疑問を持ったが熊田もわからないらしく首を横に振った


今は敵を倒すことに集中しなければ、相手はずいぶんと腹をすかしているらしい、下手すれば自分たちがあの奇形種の昼食になりかねない


「明利は後方、熊田先輩と一緒にいろ、鏡花は俺と一緒に前衛二人をサポートだ、あと明利フィア頼む」


フィアを明利の手に渡し奇形種に向き合う


「了解、いっちょ行きますか」


鏡花と前進した瞬間また奇形種の遠吠えのようなものが響く


そして次の瞬間今度は鏡花に向けて奇形種の大口が襲いかかっていた


「させるか!」


雪奈の刀が奇形種の上顎を捉え僅かに斬り落とす


痛みに奇形種は大きく絶叫を上げるが血を振り乱しながら雪奈から距離をとり静希達に威嚇し続けている


「鏡花ちゃん!静!動ける!?てか生きてる!?」


「あぁ大丈夫!」


「あ・・・あっぶな!雪奈さんありがとうございます!」


二人の無事を確認するのはいいがその雪奈の顔はやけに神妙な顔をしている


「よかった、二人とも返事が全然ないから死んじゃったのかと・・・」


「へ?どういうことだ?」


「呼んでましたか?」


「呼んだよ!あいつが吠えてからそりゃもう大声で!でも二人とも全然返事しないし、近付いてみたら襲いかかられてるし」


雪奈の言葉に静希は違和感を覚える


吠えてから呼んだと雪奈は言った


だが静希からすれば吠えた瞬間に奇形種が襲いかかってきたのだ


なにがなにやら混乱しているとまた遠吠えが聞こえる


「まただ、皆大丈夫!?陽!?明ちゃん?!」


静希達の後方から明利と熊田の大丈夫ですという声が聞こえる


だが少し遠くて火をともしている陽太の声は聞こえない


「おい陽太!聞こえてるなら返事しろ!」


大声で呼んでも陽太の返事はない


そして陽太の近くに向かうと今まさに襲いかかろうとしている奇形種の姿を視認する


だが眼前に迫っているのにもかかわらず陽太はピクリとも動かない


「何やってんだあのバカ!」


トランプを操り奇形種の眼前にナイフを射出すると同時に陽太が急に動き出す


「うわ!?なんだ?!」


あわてながらも奇形種の攻撃を避けながら静希のナイフの隙間を縫って蹴りを繰り出す


奇形種は僅かに身体に炎をともしながら後方へと吹き飛ぶが未だ敵意を収めない


「何だよ今の!?びっくりしたぁ!」


「びっくりしたじゃねえ!ぼさっとしやがって!あんだけ近づかれてんのにボケっとつっ立ってんじゃねえよ!」


「ああ!?だって吠えたと思ったらいきなり近付かれたんだぞ!?反応できるかあんなもん!」


陽太の言い草に静希は妙な違和感を覚える


先ほどの静希の感覚に似ている


そして違和感は強く残り静希は一つ可能性を思いつく


「全員携帯のタイマー付けろ!合図と同時にカウントスタートさせる!」


「ちょっと静!今そんなことしてる暇は」


「いいからやるぞ!3、2、1、スタート!」


慌ててタイマーを起動して全員の携帯が秒数をカウントしだす


「で、これからどうすんの?」


「このまま戦う、そうすりゃ多分相手の能力が確定する」


ただすごい危ないかもしれないけどなと付け加えて静希はトランプの中からオルビアを取り出す


前衛と中衛で四人バラバラになりながら奇形種を取り囲み攻撃を仕掛けようとしていると、再度遠吠えが部屋に響く


瞬間、静希の眼前に奇形種の口が見える


「もうわかってんだよ!何度もびびるか!」


遠吠えが聞こえた瞬間にすでに身構えていた静希はギリギリで噛みつきを避ける


「ちょっと静!何やって」


「雪姉!いまカウント何秒だ?!」


「え?えと」


雪奈の携帯に示されたカウントはもうすぐ五十秒を記録している


だが静希の携帯のカウントはまだ二十秒弱しかカウントされていなかった


その事実に静希はほくそ笑む


「確定だな、能力はわかった、あとは対策だ」


その笑みは徐々に邪なものへと変わっていく


静希にとって手の内を暴かれた奇形種はすでにまな板の上の魚に等しく見えていた


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