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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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生き残り

「いかにもなんかいますよって感じだな」


「ここ開けたらボス戦だな、セーブしたいな、インクリボンあるか?」


「いい加減ゲームから離れなさい、開けるわよ?準備はいい?」


全員に目を配り、鏡花は能力を発動し封鎖してある扉をいとも容易く開ける


ゆっくりと開かれた鉄の扉を潜ると妙な部屋だった


ひびの入ったガラス、そしてその手前にある多くの機器


まるで管制室だ


最初に静希達がやってきた空間の隣にあった部屋に似ている


そしてガラスの向こうに広がる空間


暗闇のせいでなにがあるのかもよくわからないが、その中に何かいるのを全員が見つけていた


「陽太、見える?」


「ガラスが邪魔だな、でも何かいるのはわかる、なんだありゃ」


陽太が強化した状態の視力で見ても何がいるのかは判別できない


暗すぎるというのもあるがひびの入ったガラスがさらに視界を悪くしている


「熊田先輩どうですか?壁越しでもわかりますか?」


「視認できているなら問題ないだろう、少し待て」


熊田が能力を発動しあの場にいるのが何なのかを調べようとするのだが、その顔が一瞬歪む


「なんだ?判別できん」


「どういうことです?能力が届かなかったんですか?」


「いや、能力は届いた、だが何かがいるあの場所、あそこから一定空間が何か大きな箱のようなものがあるように思える」


「どれくらいの大きさです?」


「二メートル四方くらいか、かなり大きめだな」


箱、熊田はそう表現するも実際には何も見えない


ただ何かがいるだけのように見える


だが音を介した熊田の索敵能力を疑うわけにはいかない、熊田がそういうからにはきっと透明な何かがあるのだろう


とはいえこれ以上無為に時間を過ごすわけにもいかない、静希達は互いに合図をし、隣の部屋に入っていく


陽太に照らされたことにより部屋の内装がはっきりしてくる


先ほどまで暗くてよく見えなかったその内装は、有り体に言えば血の砂漠だった


脈々と流れる血がそこにあるわけではない、瑞々しい肉と骨があるわけでもない


長時間放置されすでに凝固し黒く変色した血が床や壁に撒き散らされているだけ、あちこちに乾いた動物の骨のようなものが散乱しているだけ


命が枯れ風土と化した成れの果て


どうやらこの部屋にはたくさんの動物が入れられそして弱肉強食の縮図を繰り返していたようだ


そしてその自然の摂理から相当数の時間が経過しているのが理解できる


その部屋の中心に、そいつはいた


「いって!なんだ!?」


近付こうとすると陽太は何かに顔をぶつけたようで手で覆っている


だが陽太の目の前には何もない


静希が近寄って陽太がぶつかった辺りに手を伸ばすとそこに確かに何かがあるように異物感が手から伝わる


「なんだこりゃ?壁か?」


見る人が見ればそれはパントマイムのように見えただろう、なにもないはずの見えない壁にぺたぺたと手をくっつけているのだから


全員で確認していると不意にその壁が消失する


驚くのも追いつかず、眼前に見えていた何かがゆっくりと唸りを上げて立ちあがる


それは犬のようだった、だが鰐のようでもあった


大きく裂けた口、長い胴体に鱗に覆われた尾と太い四肢に茶色い体毛


奇形種、ワニの奇形種か犬の奇形種かは分からないが間違いなく能力を持っている


先ほどの見えない壁がその能力の一端かもわからない


開かれた大きな口からはよだれをたらし、明らかにこちらに敵意と食欲を向けているのが見てとれる


「やっべ!全員戦闘態勢!」


静希の掛け声とともに全員が構えた瞬間、奇形種が吠える


瞬間、今まさに喰らいつかんとする奇形種が静希の目に入った


「んな!?」


動きが全く見えなかった


驚いて身を引いてかわそうとするが間に合わない


すぐ横にいた陽太も鏡花も突然のことにほんの僅かに間に合わない


万事休すと静希は諦めかけた時、奇形種の身体が邪薙の障壁によって阻まれる


奇形種が動揺しているその隙をついて陽太がその長い身体を殴りとばし静希が後方へと跳び距離を取る


「あぶねえ!助かった・・・何だよ今の!?何が起きた!?」


邪薙の障壁が展開されたままでなければあの大きな口にかじられていたことだろう


速度がどうとかそういう問題ではなく、相手が吠えたと思ったら目の前に大きく開かれた口があった


「陽、今の見えてた?」


「いや全然、気付いたら近付かれてた」


前衛二人にもあの動きが見えていなかったらしい


最も動体視力と反応速度に秀でた二人が反応しきれていないのでは他の四人などお話にならない


「とにかく動くぞ!相手が速いなら固まってるのはまずい!」


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