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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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人工奇形種

『なに簡単な話だ、そこは本来奇形種や能力を保持した動物たちに対しての実験施設、薬物投与や魔素と生き物の関係性を中心とした物でな、その一環で魔素過度注入の実験も行われたんだ、あいつは恐らく忘れ形見を回収したいんだろうさ』


「・・・意味がわからないんですけど、結局どういうことですか?」


静希は元より全員が首をかしげて城島の話に耳を傾けている


今の話で理解できる人物はほとんどいないだろう


『魔素過度注入の実験が人体にまで段階を進めるうえで動物での過度注入の成功素体が何体かいるだろう、資料などが残っているはずだが、吉岡はそいつらを回収してまたなにか実験をしようとしているのかもしれないな』


「成功素体って・・・」


『分かりやすくいうなら人工奇形種だ』


城島の言葉に全員が息をのむ


奇形種は本来遺伝情報の狂いか、または突然変異でしか生まれない


だが人工的に魔素を大量注入することで細胞を強制的に変異させる、それが急激にかそれとも段階的にかは知る由もない


その実験に生き残り、大量の魔素を取り入れても支障のない身体へと変貌できた動物


まさに人工奇形種


「ちょっと待ってください、たしか人体実験の時はエルフが協力してたんですよね?」


『あぁそうだ、プロジェクト自体にエルフの協力があったらしいから動物実験の時も協力しただろうよ』


エルフたちは精霊などの第三の魔素のエキスパートを召喚し自身に宿らせることで大量の魔素を体内に取り入れる


だとしたら成功した人工奇形種にはエルフの召喚した精霊が宿っている可能性が大きい


「一つ聞きたいんですけど、天然の奇形種はどうやって魔素を大量に取り込んでるんですか?」


『あぁん?私は専門家じゃないんだそんなこと知らないよ、本能か何かなんじゃないのか?動物は基本命の危険に瀕しないと能力を発現しない個体が多いからな』


通常の奇形種と人工奇形種、魔素を取り入れる仕組みが同じかどうか知らないが、もし違っている場合があり得るなら、確かに回収してさらなる実験素体として研究の余地があるだろう


「てか静希、フィアはどっちなんだ?」


陽太の何気ない言葉で全員が気付く


静希の頭の上に乗っているリスもどきは、天然の奇形種か、それとも人工奇形種か


鏡花は先ほどフィアを見つけたファイルをくまなく調べ何か情報がないか探しまくっていた


『なんだ?生き残りでもいたのか?』


「あの・・・えと・・・その件なんですがちょっと問題が発生しまして」


『・・・あー・・・お前のツレが何かやらかしたか?』


「早い話そういうことです・・・」


城島は理解が早くて助かる


実際に誰が何をやったなどのことは一言も伝えていないのに状況をほぼ正確に察したようだった


『まぁその件については帰ってから詳しい報告を聞こう、その前に生き残りがいたのであれば、まだその施設に生きた奇形種がいる可能性がある』


「はい、なのでこのまま施設を探索して他に生存個体がいないか調べてもしいた場合は討伐します」


分かっていればいいと城島は僅かにため息をついてそのまま通話を切る


「鏡花、わかったか?」


「ダメね、奇形種のリストって言うのはわかるんだけど、これが天然なのか人工なのかは分からないわ、せめてマークとか付けときなさいよね」


悪態をついてファイルを机に放り投げる鏡花に苦笑しながら静希は頭の上に乗っているフィアをつまんで掌に乗せる


「フィアが人工か天然かはさておいて、封鎖されてから二年か・・・ずいぶん現実的な数字が出てきたな」


「それは二年なら他に生き残りがいてもおかしい年数ではない、ということか?」


もちろんその通りですよとため息をついて改めて見取り図を見る


これがただの動物であれば餌も何もないようなこの場所で生きられるとは思わない


だが相手は能力を有する動物ばかり、しかも奇形種までいる、生き残っている可能性は低く見積もっても五割程度だろう


二分の一の可能性で生きている個体がいるとすればそれは十分に警戒に値する


「下に降りるには・・・この辺りか」


静希が書類の置かれていた棚を動かすとそこには階段に続く通路が用意されている


人一人が通れる程度の幅の階段が伸び、その先は暗闇でなにも見ることはできなかった


「先頭は陽太、次に雪姉、俺、熊田先輩、鏡花、明利の順にいくぞ、陽太警戒怠るなよ?」


「オッケー、任せとけ」


能力を発動し明かりとなった状態で陽太を先頭に全員で下に降りていく


下の階層という割には随分と階段が長く感じた


どれくらい降りただろう、陽太が合図を送り、階段の終わりを知らせてくれる


全員に緊張が走る中階段から抜け出すとそこは真直ぐの道


階段よりは広いがそれでも二、三人横に並ぶだけで手狭になってしまう程度の幅だった


そしてその先には鎖や木材などで厳重に閉鎖された鉄の扉があるのが見える


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