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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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悪魔の所業

「明利、こいつ何とかなるか?」


「うわ・・・ちょっとまってね」


自分の手の中に収まった小さな生き物に明利はすぐさま能力を使う


「栄養失調が酷い・・・何か食べるもの、それに水が必要!」


「食べ物って言ったってここにはなにも・・・、水だって戻らなきゃ」


「まった、ポケットに飴入ってたよ」


何時から入っていた飴かは分からないがこの状況ではもはや何でもいいと言わんばかりに明利は飴を包み紙から取り出し小さく砕いてリスの口元に持っていく


「お願い・・・食べて・・・」


リスは口元に持ってこられた飴に反応するのだが口を開こうとはしない


「・・・ダメ?」


「・・・う・・・うぅ・・・」


明利の能力はその生き物に対しての同調と、その生き物の持つ治癒力や成長力などの強化


同調した生き物がそれだけの身体能力を保持していなければ意味がなく、そこにない栄養を補うことはできない


以前東雲風香を治療した際に、栄養失調などを治せなかったように明利の能力は万能ではない


この小さな生き物はすでに明利が治せるレベルをはるかに超えた段階まで衰弱が進行してしまっている


「明利・・・」


小さくうずくまる明利に手を置くが、小さく震えるその体に静希は何もしてやれなかった


そしてやがてその体は動かなくなる


どうやら絶命したようだ


生死確認の為に静希がトランプの中に収納するとリスは抵抗なくトランプ内部に吸い込まれていく


静希のトランプは生き物は入れられない、それはつまりこのリスの奇形種がすでに息絶え肉と骨の塊になったことを示す


リスをトランプから出し明利の掌へと戻すと明利は僅かに身体を震わせた


「呼ばれた気がしてジャジャジャジャァァン!」


静寂に包まれていた部屋の中にメフィの声が響き渡る


「メフィ・・・お前空気読め、こちとらしんみりしてるってのに」


「まぁまぁ、そう堅いこと言わないの、ここなら誰かに見られる心配もなさそうだから手を貸してあげるのよ」


またトランプの中から勝手に出てきたメフィは明利の前に座りその手の中におさまっている小さな生き物の亡骸を自分の手の中に入れる


「メーリ、この子を助けたいのね?」


「・・・助けられるの?」


明利の顔に僅かに光が戻る


希望が見えたのだろうが、悪魔の差し出す希望はそんな生易しいものではないことを静希は知っている


なんせすでにこの生き物は死んでいるのだ


「なにするつもりだメフィ」


「助けるとは少し違うかも、私がするのはこの子を生まれ変わらせること、身体を作りかえるの」


「そんなことできるの?」


「悪魔に限らず、異能の存在はいろいろ特殊な力が使えるのよ、能力とは別にね、ただそのためにはシズキの協力が不可欠だけど」


話を振られた静希は嫌な予感が強くなる


だが助けられるかもという期待に明利はすがるような目を向けてくる


「この悪魔め、明利を誑しこむなんて的確なことしやがって」


「いいでしょ?私にも貴方にも得があるし」


「代価は?」


「今回はいいわ、私がしたいことだからね」


何を企んでいるんだかとため息をつきながら静希は頭を掻き毟る


「わかったよ、なにをすればいい?」


明利が満面の笑みになる


こうなっては静希は悪魔の言うことをただ聞くしかないのだ


「血を一滴、この子に垂らして、後は私がやるわ」


「了解」


ナイフを取り出して自分の指を僅かに切り、リスの身体に一滴自分の血を落とす


「準備完了」


メフィが呟いた瞬間、その手に収まっているリスの身体が淡く輝く


身体に落ちたはずの静希の血が宙に浮き、光となってリスの身体に吸い込まれていく


するとリスの身体が徐々に丸みを帯びていく


衰弱しきった細い身体ではなく正常な身体へとその姿を変えていく


「ふう、終わりよ、こんなの久しぶりにやったわ」


明利の手の中にリスを戻すと、数秒した後にリスは起き上がり辺りを見回す


そして明利の方に乗り自分の身体をすりよせた後、静希の身体に跳び移る


先ほどまで完全に死んでいたリスが生き返ったように見える


「なんだ?ずいぶん人懐っこいな」


もともと飼われていたにしても初対面の自分たちに対して随分と慣れ過ぎている気がして静希は嫌な予感がする


ニヤニヤと笑っているメフィがその予感を加速させている


「わぁ・・・可愛いじゃないか、ほれほれこっちにおいで」


雪奈の誘導にリスは素直に従いその手に乗ったと思ったら肩から頭、あらゆるところを器用に駆け回りすぐに静希の肩に戻ってくる


「なんだか静が一番懐かれてるみたいだね」


「そりゃそうよ、この子はシズキの使い魔になったんだから」


「・・・は?」


メフィの言葉に静希は思考を止め眉間にしわを寄せ、メフィを睨みつけた


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