表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/1032

残骸

静希達は二手に分かれて探索を開始する


静希、明利、雪奈の三人は左の扉から、陽太、鏡花、熊田の三人は右の扉から探索を開始した


静希達の入った部屋には小さな籠と液体の中に詰められた標本の並ぶ部屋だった


四方すべてに標本や動物を入れておく籠やケージが置いてある


向かい側にある扉は大きく変形し破壊されているのが見えた


どうやら実験動物の保管場所のようにも見える


液体の中に入っている標本は蛇、ネズミ、クワガタ、トカゲなど小型の生き物ばかり


爬虫類に哺乳類、昆虫までとよりどりみどりだった


「うえぇ、マッドサイエンティストが喜びそうな場所だなぁ・・・」


ガラス瓶に入れられている標本を眺めながら雪奈は警戒を怠らずに周囲を観察する


今のところこの部屋に奇形種の気配はないようだった


良く見ると籠の中に入っている生き物達もほとんどが餓死しているようだった


この部屋の菌などの状況がどれほどかは分からないがまだ骨だけになっていない個体もいくつか見受けられる


死後一週間そこらの個体もありそうだ、白骨化していないのならそれまでは生きていたと考えるべきだろう


他のほとんどの生き物は白骨化しているものばかり、個体差によって生き残っている動物が違うのだろう


特にネズミなどは白骨化しているものが多い


ネズミは種類にもよるが数時間おきに何か食べないと餓死してしまうものが多い


こういった閉じ込められた空間の中では真っ先に死ぬのはネズミだったのかもしれない


籠の中にある死骸のほとんどに静希がザリガニの身体から見つけた紙に書かれたバーコードのようなものを見つけることができた


「どうやらほんとにあのザリガニはここから逃げ出してきたらしいな・・・」


状況からして間違いないだろう


もしかしたら他に生きている個体がいるかもしれない、だとしたら確実に見つけなくては二次被害が起きかねない


そんな中死体ばかり入っている籠の一つが大きく破壊されているのを発見する


「なんだこりゃ・・・ひどいな・・・」


鉄でつくられた籠は見事に破壊されている、破損部分から見て内側からの圧力に耐え切れずに引きちぎれたように見える


しかも中に死体はない


どうやら奇形種か、または能力を持った動物が命の危機を感じて逃げだしたのだろう


幸か不幸かは分からないがまだこの辺りで生きているかもわからない


「ここには資料はないみたいだな、次行くか」


「了解、ここいると気分が悪くなるよ・・・」


さすがに場数を踏んでいる雪奈でもここまで大量の動物の死骸を見せられては不快になるらしい


いやむしろ当然だろう、彼女もただの女子高生なのだ、普通の女の子より死を見る数が多いだけでそこは何ら変わらない


この三人の中で一番精神に不調をきたしているのは明利だ


死を見るのに慣れていないだけではなく先ほど自分の手で生き物を死に追いやった後、まともな精神状態をしているとは思えない


先に進むと部屋ではなく左右に伸びた通路に出る


まずは左に行きその先にある部屋に向かうと、そこはたくさんの棚と大量の袋が置いてあった


「なにこれ?ペットフードかな?」


「全部空になってんぞ・・・」


棚に残されているペットフードの袋はすべて中身がなく欠片さえも入っていない


どうやらここは実験動物の食料庫のようだった


棚のいくつかには紙が張られ「爬虫類用」などといった種別の餌が用意されているようだった


「ここにも資料はないっぽいな・・・次に」


「待て静・・・なんかいるぞ」


雪奈の警戒網に何かが引っかかったようだ


静希がオルビアを取り出して警戒を強める


周囲にはペットフードの棚ばかり、生き物がそこにいるかなどわかりようがない


森の中とはまた違う視界の悪さ、屋内戦はあまり経験していない静希にとってこういう緊張感は初めてだった


警戒を強めていると明利が何かを見つける


「静希君、あれ」


指さした先のペットフードの袋が僅かに動いたのを静希は見逃さなかった


「雪姉」


「はいよ」


二人が同時に静かに近づき袋の中身をみるとそこには衰弱しきった小さなリスのような生き物がいた


「何かいるって、こういうこと?」


「あ、あははは、こんな微細な気配も逃さないとは私の危機感知もなかなかのもんじゃないか」


こんな小さな生き物に反応できるとは、戦闘状態に入った雪奈の感知力は並みの同調能力者に勝るとも劣らない


恐ろしくも思いながら静希は優しく衰弱したリスもどきを手に収める


どうやらここら辺のペットフードを全部食べていたのはこいつらしい


銀と黒の柔らかい体毛


その体はリスに似ているのだがリスというには尻尾が妙に長く、毛の色も違う


リスの本来の体毛は薄い茶色と黒に近い焦げ茶の二種類だ、銀と黒などではない


恐らく奇形種だろう


だがその呼吸は弱弱しい


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ