施設の中
「そっちなんかあったか?」
「なんか小難しい本がたっぷりとね、そっちは?ハンドガンの弾はあった?」
「ダメだ、全然ダメ、弾薬どころかハーブさえありゃしない、このステージはナイフで応戦するしかなさそうだな」
「見て静希君!前探してた本があったよ!」
「お、いいじゃんか、お宝発見だな、この調子なら地下施設に行って妙な化け物と戦うのも時間の問題か」
そういいながらふざけている静希達に半分怒りを覚えながら鏡花はさっさと次の部屋に行く
それに引き続いてゲーム脳四人衆はナイフを構えて腰を低くしながらぞろぞろと妙な動きをしながら扉を越えて部屋に侵入する
その部屋はガラスの扉によって保管されたファイルの数々の保管場所のようだった
多くの棚が並びその数は軽く十を越える
静希達が入ってきた扉から見て左右にまた扉がある、どうやらまだ他に部屋があるようだ
「あぁもう、暗いから何て書いてあるかも読みにくいわね・・・電気とか通じてないのかしら」
「てかここ地下なのか?それとも地上なのか?それすら分かんないぞ?」
辺りを捜索しても窓らしきものは相変わらず存在せず、明かりをつけるスイッチらしきものはあっても全く反応しなかった
静希の持っているライトと陽太の明かりだけではどうしても限界がある
なんとか照らしながらガラスの棚にしまわれているファイルを一つ取って中を見る
だが相変わらず鏡花には何が書いてあるのかさっぱり理解できない
謎の言葉の羅列ばかりで頭が痛くなりそうだった
「これって・・・これも・・・」
だがそんななか明利はその内容を理解できているようで神妙な面持ちでファイルの資料を読みあさっている
この子すごいわねと心底感心しながら眺めていると明利が他のファイルを手にとって読みだす
やっぱりと呟いてゆっくりファイルを閉じた
「静希君!」
「どうした明利?なんかお宝発見か?」
「・・・ここが何の施設か・・・わかったよ」
「・・・本当か?」
先ほどまでふざけていた静希も急に真面目になり明利の見ていたファイルを読む
だが静希もなにが書いてあるのかはほとんど理解できなかった
「この施設は・・・たぶん奇形種の研究を行ってた場所なんだと思う、その、動物実験を行うような、研究所だったんだと・・・」
「じゃあこのファイルは?」
「それは細胞に魔素を一定量注入した時の細胞の変質効果、他にも普通のネズミに対してだったり、奇形種のネズミに対してだったりの実験の結果が書かれてる」
動物実験という単語に明利は先ほどまでの喜びを消し、沈んだ表情を見せている
「・・・やばいな」
「え?」
静希が考え出し、すぐさま身を翻す
「陽太、雪姉、警戒態勢!冗談じゃなく戦うかもしれないぞ」
「え?」
「静・・・どゆこと?」
静希の言葉に陽太は辺りを見回して驚いているが雪奈はすでに警戒と攻撃のできる体勢に入っていた
「あのザリガニがこの施設から逃げ出したんだとして、どれくらい時間が経ってるか分かんないけどこの施設にはまだ実験動物がいる可能性がある、生きてるか死んでるかは別だけどな」
奇形種のザリガニの巣にあった下水管のような道をたどったら奇形種の研究所にたどり着いた
これは偶然などではないだろう
鏡花の言う通り面倒事の香りが濃厚に漂ってきた
「どうするの静希?このまま帰る?」
「いやこのまま探索する、もし奇形種がまだいるならここで駆除しておかないとまたあの穴から川に出てくるかもしれない、それにここがもし地上に出てたなら他の区域にも被害が出る可能性がある」
奇形種の研究所であり、そこから実験動物が逃げ出している以上、話は町一つからこの区域全体まで広がっている
このまま放置は危険すぎると判断した
「でも探索って言ったって、なにを探すのよ」
「まずこの施設の主要情報から、名前、構成、何時まで稼働してたか、それがわかればまだ対処もできる」
これが十年以上前に閉鎖されたものなら安心して町に帰れるのだが、それが確認できるまでは帰るわけにはいかない
「明利、このファイル群は全部実験の資料か?」
「うん、いくつか読んだけど、今のところ全部」
「なら別の場所を探そう、いつものチームに分かれて行動だ、ちょうど光源も二つあるしな」
「まってよ、戦力二分はまずくない?」
「室内で六人かたまってどうするんだよ、三人の方が動けるしフォローもしやすいだろ?それに携帯も通じるみたいだし、何かあればすぐ連絡できる」
広い屋外ならば六人での戦闘も容易だが今は室内、しかも何人も自由に動けるほど運動に適した空間とは言えない、下手に人数が多ければ逆効果にもなりえる
「そんじゃ探索開始」




