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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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現場検証

「それじゃ今十一時ちょい前だから、十三時にはここに戻ってくること、二時間あればそれなりに情報も集まるだろ」


「わかったわ、行くわよ陽太」


「わかってんよ、お前らも気をつけろよ」


「では行ってくる」


三人を見送った後に静希たちも用意を始める


「とりあえずその破壊されたフェンスを見に行こう、場所どこだっけ?」


「資料に地図と一緒に載ってるよ」


「おぉそうか、んじゃいくか、雪姉は戦闘準備をしておいてな」


「了解了解、任せてよ」


ようやく出番が来るのが嬉しいのか、先日貸し付けたナイフを用意しておいた愛用のベルトに取り付け腰に装着する


こうして六本のナイフが彼女の身体にとりつけられるのを見るとさすがに壮観だ、本当に戦闘態勢に入っているのだとわかる


「それにしても本当に田んぼか畑しかないんだな」


途中すれ違う人とあいさつをかわしつつ静希は地図を頼りに目的のフェンスの場所まで来ていた


場所は村の西の端、ここからぐるっと村を覆うように二重の金網が設けられていることになる


写真で目にしてはいたものの実際に目にしてみると写真以上に凄惨なものに見える


柵が破壊された後に張ったバリケードらしき残骸が無残に周囲に散乱している


写真と同じように地面に衝撃でも受けたのだろう、その場に陥没し、小規模なクレーターのようになっている


「思っていたより酷いなこりゃ」


手に取ったのは恐らくバリケードに使われていた角材だった物だろう、無残にもへし折れあちこちに散らばっている


「明利、さっそく同調してみてくれるか?」


「うん、この近くだけでいいの?」


「あぁ、とりあえずはな」


周囲の状況を確認するためにもフェンスの近くの木々に明利の能力を発動させて周囲の状況を把握させる、どうやらひとまず獣の存在は確認できないようだ


「んじゃとっとと調べますか」


トランプの中から軍手を取り出しなぎ倒されているフェンスを持ち上げる


足場はわずかではあるがコンクリートで固定され、ちょっとやそっとでは倒れないだろうフェンスは根元から見事に湾曲している、柱の部分も変形し元の形に戻すのは困難そうだ


クレーターは二つのフェンスの間を中心に存在しており、そこから両側に衝撃が伝わったようで内側のフェンスは村の方へ、外側のフェンスは山の方へひしゃげている


「ふむ・・・・・・ん?」


フェンスを見ていると、写真では気付かなかった部分が見て取れる


「雪姉、これ見て」


「ん?どうした」


雪奈を呼び出してフェンスの一部を見せる


フェンスの一部、いや縦に裂くように、鋭利な刃物で切りつけ切断したような跡がある


綺麗に断面図がそろって一直線に続いている、明らかに刃物か、刃状での切断面だった


普通フェンスが圧力で千切れたらこんな綺麗な断面図は生まれない


刃物の断面図などに関しては雪奈はスペシャリストだ、ここにいる誰よりも上手く物を切り分けることができる人物である


「雪姉、これ、どう思う?」


「・・・ただの刃物じゃないな、刃先があたった部分に変形が見当たらない、達人が切った時の断面図に似てるけど、獣相手だとすると」


「能力か・・・」


獣が達人並みの技と刃物を持っているとは考えにくい、状況から察するに確実に能力による破壊だろう


「順当に発現系統か、二番手に付与、大穴で変換かなぁ」


「発現や付与はわかるけど、変換なんてあり得る?」


「単純な形状変換ならこれもあり得るよ、ただ一つの物質を二つに分ければいい、あ、でもそうするとクレーターが説明つかないか」


単純な形状変換の場合なら質量保存の法則は無視できない、つまりクレーターによりめり込んだ地面を必ずどこかに押しのけなければならないことになる


相手が獣の場合すぐそばに盛り上がった地面があれば確定なのだが、その様子はない


周囲の地面を見回しても獣の足跡らしきものや体毛も落ちてはいないようだった


「資料には爆発音を聞いた村人がいるって書いてなかったっけ?それだと変換はないんじゃ」


周囲の同調準備を終えた明利が小走りでやってくる、確かにそのようなことも書いてあった、となると変換は除外、目標の能力は発現か付与ということになる


「刃か何かの形状、またはそれだけの能力を持っていて、なおかつこのクレーターを作りフェンスを大破壊できるだけの爆発、衝撃、またはそれに近い現象を起こす能力か、これが焼き切られてたなら炎の発現系統で即解決なんだけど、焼け焦げた跡はなし・・・どうしたもんか」


考えてみてもある程度の推察はできるがどうにも確信には至らない


能力判別にしては資料が少なすぎた


「そうだ、明利、周囲を探知してみてどうだ?なんか気になるものあったか?」


「あ、うんあったよ、こっち」


明利の案内で連れてこられたのは一本の木だった


何の変哲もない木のように見える


「あそこ、傷があるの」


明利の指さす方向を見つめると、わずかに木の表面が鋭利なもので削られているように見える、その傷は四本、まるで獣の爪の痕だ、だがその位置はおおよそ高さ二m近くの場所に残されていた


「マーキングみたいだな、動物とかがよくああいうの残しておくけど、似たようなもんかな」


ここら辺が自分の縄張りであるという証明、野生動物にしばし見られる行動だ


だが問題はその位置が異常に高いこと、普通の四足歩行の動物ではまず届かない


「一応写真撮っておくか」


用意していたカメラをポケットから取り出して状況が分かるように写真を撮っていく


後で情報収集している陽太達にも見せてやらなければ


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