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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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大剣の威力

静希の合図とともに全員が動き出す


主に動くのは鏡花と陽太


他の班員は目標が飛び出してきたときにすぐ囲めるようにすでに配置についていた


まず洞窟の出入り口を薄い土の壁で覆う


そしてその中にある水で洞窟いっぱいに大量の水素を作る


「よっしゃ、離れろ!」


あとは昨日の再現


陽太から火の一部を移してもらい、小さく開けた穴から着火する


中にわざわざ入る必要などない、洞窟内ごと爆破してしまえば済む話だ


着火した瞬間轟音とともに洞窟から炎が噴き出す


全方位にはじけるような爆発ではなく、まるで大砲のように炎が入り口から放射された


薄い壁を簡単に突き破り土と鉄片をまき散らしながらその凄惨さを際立たせた


全体が同じ強度であるなら全方位に爆発の衝撃と炎が巻き上がるが、今のように洞窟のような堅牢な空間に一部薄い壁があれば炎と衝撃はその方向に突き抜ける


まさに大砲のようなものだ


吹き飛んできた鉄片を拾い上げて眉間にしわを寄せていると水の音とともにゆっくりと目標、巨大ザリガニが滝を割って現れる


その外殻は炎によって赤く変色しているが徐々に戻りつつある


再生速度はまさに化け物級といったところか


一晩かけて足も治したのだろうが、その回復は微妙にまだ終わっていないようで足の先端がまだ再生しきっていない


裂傷を負わせたうえで火傷の症状にさせれば再生は著しく遅れるというのが確認できた


作戦に変更はなさそうだった


「まずは雪姉の武器の様子見だ、交代しながら攻撃、絶対に怪我しないように」


了解と全員が動き出す


鏡花は地面を変形させ足止め、熊田はハサミに向けての拘束と音を使った内部への攻撃


この二人の行動によりザリガニはほんの数秒だがその場から動けなくなる


明利は自分の役割である切札の発動まで待機、こうすることしかできないのが彼女にとって一番の苦痛であった


そして陽太の打撃と熱による攻撃と静希の視界を飛び回るトランプと自身による剣の攻撃


この二人は目標に向けて致命的なダメージを与えられない


だがこの二人の目的はあくまで撹乱


一番大きな動きをしたのは本命である大剣を抱えた雪奈だった


まず第一撃


ザリガニの側面に躍り出た雪奈は鏡花の作った剣を軽々と振り回す


まるで野球のスイングでもするかのように足を踏ん張り、腰を回転させてザリガニの脚部めがけて鋼鉄の大剣を振り抜く


それは斬ったというにはあまりにも荒々しく、砕いたといった方が正しい表現だった


今までの雪奈の斬撃は斬った部分があとから遅れて落ちるような美しさと精密さがそこにはあった


だが今の斬撃は違う


いや斬撃というのもおこがましいかもわからない


刃による切断ではなく、ただ襲いかかってくる運動エネルギーに耐えかねて瓦解した


雪奈の身体は強烈な速度により振り抜かれた剣自体の重さに僅かに流されながら踏ん張って第二撃を今度は胴体に向けて叩きつける


甲殻の縫い目に正確に走らせた巨大な剣は甲殻の隙間を裂き砕きながらその体に明確にダメージを与えていた


だが途中で刃が止まる


思い切って叩きつけた瞬間は問題なくその甲殻を砕いた


だが甲殻の強度が予想以上に高かったのか、大剣を振り抜けない


とっさに突き刺さったままの大剣を引き抜いて距離を取るがその表情は僅かに焦りの色を見せていた


「まっずいなぁ・・・静!この剣じゃ甲殻相手に振り抜くことができない!途中で止まっちゃうよ!」


「見てたよ!面倒なことになったな・・・」


本来ならそのまま剣を振り抜けたなら剣を振った勢いのまま雪奈にはその場を離れてもらい、その場に陽太が突っ込み傷口が治る前に焼いて塞ぎ、静希が仕込みをする予定だった


だが剣が降り抜けないのでは作戦を実行できない


「ちょい予定変更だ、このまま時間を稼ぐ、雪姉!武器が送られてくりゃ何とかなる?」


「それは任せてよ、あの甲殻くらい軽くぶち抜いてやる!」


「OK、行動を雪姉の攻撃専念から足止めに変更!距離を取らないように、なおかつ接近しすぎないように相手の攻撃を封じながら時間を稼ぐぞ!」


全員が返事をして攻撃に移る


こうなっては雪奈の武器が送られてくるまで待つしかない


胴体の甲殻を破壊できないのでは作戦を実行に移せない上に雪奈を危険に巻き込んでしまう


今静希達ができるのはこの死なない巨体相手に時間を稼ぎ続けるしかないというゴールの見えないデスレースを続けるだけ


肉体も精神も削られていく中静希達はそれでも攻撃をやめない


攻撃と足止めをやめればその瞬間にザリガニの巨体が静希達に襲いかかるだろう


この体格差では静希達に勝ち目はない


だからこそ策が最も重要視されるのだ


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