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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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保護の為には

「他に何か決めておくこととか気になったことある?何でもいいけど」


今のところ決めることのできる事柄をひとしきり決定したところで班長鏡花が全員に号令のように問いかける


「じゃあ一つ、目標の行動っていうか、攻撃なんだけどさ、どう思った?」


「どう・・・ってどういう意味です?」


「いや、なんかこう、動きとか行動とかザリガニっぽくないって言うか・・・」


雪奈が言いたいことはその場にいた全員が何となく理解できた


ハサミを地面にたたきつけたり足踏みしたり、果ては尾を動かして攻撃してきたりとおおよそザリガニらしい行動ではない


「なるほどね、そう言われればそうかも、ザリガニ博士からしたらどう?ああいう習性って言うか行動は」


「んー・・・たしかにザリガニらしい行動は少ないよな、外敵にしても天敵にしてもああいう動作はしないはずなんだけど」


「目標にだけ見られる特異行動というわけか」


本来ザリガニの狩りなどの行動は一定している


獲物を見つけたらゆっくりと近づき、ハサミで一気に掴み、捕獲する


だが今回のザリガニの場合そういった動作が全く見られない


わざわざ音を立てたり力まかせにハサミを振り回したりと目立つ行動が多い


「あのでかさで見つからないってのも難しいし、少しずつ行動を変えたってことかな?」


「そりゃ無理だ、俺らみたいな考えられる生き物ならまだしも動物は生まれた時から自分の動きが決まってるんだぞ、生まれてから少しくらいで変えられるもんか」


草食動物などが生まれてすぐに四本足で立つように、蜘蛛が誰に教えられたわけでなく巣をあの形に作るように、生き物は遺伝子に刻まれた記憶を本能で読み取り動く


人間のように意志によって自分で行動する生き物とは根本的に違う


その生き物が動くにあたって最適な動作を受け継いで生まれてくるのが野生動物だ、どんな経緯で生まれてきたかは分からないが一朝一夕で変えられるほど遺伝子の束縛は弱くない


「明確な行動として確認できたのは一定距離離れると尾を使って突進してくるってところだな、あれは本来どういう動きなんだ?」


「ただの脱出だったり急いで移動したり、普通の移動手段だよ、俺らが小さいから攻撃に見えるだけだ」


「そう考えると、あいつから私達はほんとに餌くらいの認識しかないのよね、食べられなくてよかったわ」


その言葉に全員が同意する


あの大きさで雑食性の強い生き物なんて普通に人間を食いだしても何ら不思議ではない


何せザリガニは共食いさえするような生き物だ、そこら辺の市街地に放てばちょっとした生物災害になること間違いなしだ


そんなことを考えていた時静希はふと思い出す


「そういやさ、あのザリガニを保護しろとか言ってきた吉岡さんだっけ、あのバカでかいのをどこで保護するつもりだったんだろうな」


それは何とはなしの雑談のつもりだった


特に何か思ったわけではなしの気になっただけの発言、その内容になぜか全員が乗ってきて考え始めてしまった


「そうだな・・・あのザリガニを保護しておけるだけの環境って例えばどんな感じ?」


「広さは必要だよな、身体より少し大きいくらいの穴か隙間があって、水温は二十度くらい、自由に動けるだけのスペース、そしてあいつに破られないだけの壁か柵」


「・・・なに?装甲板でも持ってくればいいわけ?」


軍用の装甲板を溶接しても何度か突進されたら破壊されてしまいそうだ


あれにぶつかるということはダンプカーと正面衝突するのに等しい衝撃を受けることと同義だ


人間だったら全身の骨がバラバラだ


「あれだけの大きさだと餌の量もすごくなりそうよね・・・博士、普通のザリガニってどんなもの食べるの?」


「さっきも言ったけど基本何でも食べるぞ、一応、市販されてるザリガニの餌がある」


「一日摂取量ってどのくらいなの?主成分とかわかるかな?」


いつの間にかザリガニ保護に必要な条件を模索し始めた班員にザリガニ博士陽太は頭をひねりだす


「えっと・・・有名な餌は・・・タンパク質三十%、脂肪と繊維が両方とも五%くらい、灰分十五%、水分が十%で残りがその他、物によっちゃカルシウムとか入れてるのもある、基本一日二回くらいで・・・自分の身体と同じ位食うんじゃないかな」


「お前ザリガニのことに関してだけ妙に博識だな・・・」


「そんな褒めんなよ」


褒めてねえよと言いながら静希は思考を巡らせる


「じゃあ、一日自分と同じ体積または重さ分食べるとして、一日何トン食べる計算だ?つか餌代だけで相当金かかるぞ」


「あの大きさだと相当あるよね・・・何でも食べるなら生ごみを全部上げるとか?」


「あんまり小さすぎても食えねえぞ、あの大きさなら・・・そうだなこのくらいあれば食えると思う」


陽太が手で表した大きさは直径三十センチほどの大きさだ、そんな生ごみはこの世界に存在しない、そんな生の食材があれば普通に売れる


「どうも保護って言うのが現実的じゃないな、あんなの保護できるとこがあるとは思えないんだけど」


「たしかに、あれを保護するならもっと別なことした方が有意義だわ」


「それじゃ改めて、可哀想だけどあのザリガニは殺処分ということで、決定だね」


異議な―しと全員が挙手する


誤字報告を受けたので複数投稿


熊田が能だになっていたようです


名前に関しては特に気をつけていたのですが、これからもいくつか誤字はあると思います


これからもお楽しみいただければ幸いです

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