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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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牧崎村

その後任務内容を確認しながら雑談、各駅停車の終点に着いたのでバスに乗り換え、延々と山道を走り、たどり着きたるは牧崎村


時刻は十時三十分、まだ太陽が昇り切っていない時間帯である


あたり一面水田や畑、点在する建物は近代的なものから木造のものまでよりどりみどり、山に囲まれ植物が喜々として茂っている


道路もほとんど舗装されておらず、土がむき出しでところどころ小石や大きな石も目立つ


「うっわ、本当に畑とか以外何もないな・・・」


「すごいな」


「うわぁ・・・」


「なんて田舎・・・」


荷物を担いであたりを見回しても何もない、その様子に陽太は非常に驚いている


それは静希も同じだった、みる限り一面に緑が続いているのは一種の感動すら呼ぶ


普段コンクリートで固められた灰色の地面を歩いている静希たちにとってこの光景は新鮮の一言だった


「では移動するぞ、これから依頼主の家に行く、呆けていないでついてこい」


さすが元軍人だけあって舗装されていない道も難なく進む、それに引き換え慣れていないのか、明利は小石をよけながらふらふらと歩いているように見える


小さな体に三日分の荷物、慣れない足場に長時間乗り物に乗った後のストレス、悪条件はそろい踏みだ


「明利、荷物持つよ、乗り物酔いまだ残ってるんだろ?」


「あ、ありがとう、静希君」


少々ふらつきながら明利の荷物を持ち上げてさくさくと明利の先を進む


「明ちゃん辛かったらいっていいからね?お姉さんがお姫様だっこしてあげるから」


「だ、だいじょうぶ、です」


お姫様だっこなどされた日には何をされるか分からない、さすがに明利も理解しているらしく足早に静希の近くに退避する


ある大きな家の前で城島が止まり呼び鈴をならす


木造の二階建の家で周囲にある家よりひときわ大きい、塀に囲まれている敷地だけで軽く野球ができそうだ


しばらくすると扉が開き、中から穏やかそうな顔の初老の女性がやってくる


「喜吉学園の方々ですね?遠いところありがとうございます」


「今回害獣駆除の依頼を受けまいりました、喜吉学園一年B組一班引率役、城島美紀と申します、今回は滞在中ご厄介になります」


城島が頭を下げた瞬間、全員がよろしくお願いしますと声をあげ頭を下げる


「ご丁寧にどうもありがとう、ここまで来るのに疲れたでしょう、お茶でもごちそうしますよ?」


「いえ、すぐに調査にあたりますので、お気持ちだけ頂いておきます、つきましては彼らを本日から使わせていただく部屋に案内していただけませんか?」


「えぇ構いませんよ、ではみなさん、何もない家ですがどうぞ上がってください」


物腰柔らかな対応に対し城島のいつもと違う何ときっちりした対応なのだろうか、今までの姿がまるで嘘のようだ、実は多重人格なのだと言われても今なら信じそうな勢いだった


木造の建物だけあって非常に独特な空気を持つ屋内だった、日光の入るスペースが限られているからか、それとも漂ってくる木の匂いからか、静希たちは自然と背筋を伸ばさざるを得なかった


「失礼ですが、ご主人は?」


「はい、今は村の若い者たちと見回りを、みなさんが来るまでは毎日していたんですよ」


「そうですか」


どうやらこの問題は依頼主だけの問題ではなく、村全体で取り組んでいるようだ


それだけ重要であるという事実が任務初挑戦の四人の肩にのしかかる


「ここが客間です、好きに使っていただいて構いませんよ、二部屋でよろしかったのでしょうか?」


「ありがとうございます、男女分けるだけなので十分です、お前達、荷物を置いたら行動開始しろ」


「「「「はい」」」」


全員が返事をして荷物を部屋の片隅に置き調査用の道具を取り出す


「それじゃあまずは聞き込みね、ここ最近あった被害とその作物、後時間帯とかも聞きたいわね」


「あとは破壊されたフェンスも見たいな、二手に分かれるか」


時間は有限だ、確実に事を進めていかなくてはならない、特に今回は獣相手なのだから


「俺と明利と雪姉はフェンスを、陽太、鏡花、熊田先輩は村の人たちに聞き込みを、俺たちも終わり次第すぐ駆けつける」


「ちょっと待ちなさいよ、何で私とこいつがチームなわけ?」


「まったくだ!チームがえを要求するぞ」


また始まった、いちいち構っていられないと静希はうんざりしながらため息をつく


「人当たりのいい陽太と頭のいい鏡花、上手く話をまとめてくれそうな熊田先輩、聞き込みならこの三人だろ」


臆病な明利、行き当たりばったりな雪奈は明らかに聞き込みには向かない


「それに鏡花、お前には作物に残った歯形から歯の模型を作ってほしいんだ、同調すればできるだろ?」


「そりゃできるけど、じゃあなんでフェンス側はあんたたちなのよ、この二人と仲良くしたいだけじゃないの?」


「そうだ、破壊とかなら俺得意だぞ」


こいつらは本当にまじめに考えているのかと本当に疑いたくなってくる


鏡花も陽太とのチームに頭に血が上ってしまっているのか、やっかいな二人だ


「何が起こったのか分からないだけじゃなく、そこから獣が通過したことがある以上、万が一調べている間にその獣が出るかもしれない、その場合奇形種討伐経験のある雪姉ははずせない、同調を持ってる明利は周囲の状況判断に適してるし、俺は細かい調査道具とか持ち歩いているからそっちの方がいい、それよりなによりお前たちだ!」


「あ!?」


「なによ?」


さすがにこの状況に腹が立ったのか、静希が二人をさして声をあげる


「どっちがチームだとかそういうことでもめてるんじゃねえよ!今は任務中だ、私情は後回し、せっかくチームメイトで能力の相性いいんだから少しは仲良くしろ」


本当の理由はどちらかというとこの二人の不仲だ


これから任務をしていくならチームワークを崩してしまっては困る、比較的簡単そうなこの任務の間に少しでも仲良くなってくれれば御の字だ


「そういうことで熊田先輩、二人をお願いします」


「任されよう、ああいった二人はなかなか見ていて飽きないからな」


「先生、そういうことで行動開始します、先生はどうしますか?」


「あ?私?私はそこら辺で適当にぶらぶらしてるよ、ある程度情報が集まったらここに戻ってこい」


先ほどまでの凛々しい姿はどこへやら、すでにやる気をなくして倦怠モードだ、本当に多重人格ではないかと疑いたくなる


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