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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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可能 不可能

「そもそも何故目標を生け捕りに?」


「そんなこともわからないのか?保護だ」


その言葉に再度全員が絶句する


「あれはただ生き物として自然のままに生きているだけ、殺すなどもってのほかだ、だがこの場にいては近隣にも迷惑がかかってしまうだろう、そこで君達が捕獲し、私が迷惑がかからずに過ごせる場所に移動させる、何か問題が?」


「問題しかないってのが分かんないのかこのおっさんは」


「・・・陽太、ここは抑えろ」


さすがに二度目は小声で言ったのだがさすがの静希も呆れる他ない、そして熊田でさえも額に手を当ててしまっている


動物愛護


要するにそういう話だ


殺すのはかわいそう、保護してあげるべきだと言っている


それは理解できる


「では、仮に捕獲したとしてどこにどうやってあれを移送するつもりですか?」


「それを知るのは君達の仕事じゃない、君達の仕事は捕獲するまでだ、あとは私に任せればいい」


明らかに無茶苦茶な発言に周りにいる町の人も気の毒そうにしていた


「おーい静~、何だここにいたのか・・・ってなに?お話中?」


「なになに?どゆこと?」


「どうしたのこれ?」


どうやら長風呂だった女子たちも上がってきたようで、静希達のいる城島の部屋に続々と集まってきた


「あぁ、すこし問題があってな」


「あのザリガニを生かしたまま捕獲してほしいとか言ってる人がいるんだよ」


「はぁ!?誰よそんなこと言ってるバカは!?」


歯に衣着せないとはこのことだろう、陽太といい雪奈といい、前衛型の人間はオブラートに包むという言葉を知らないのだろうか、陽太と城島は雪奈の言い草に笑いをかみ殺している、きっと城島も前衛タイプの人間だったのだろう


「君、年上に対して・・・」


「あぁ貴方が捕獲しろとか言ってる人?あのね言うのは簡単ですよ、でもねこっちは命がかかってるんですよ?最悪死ぬかもしれないような状況で戦ってるんです!相手の生き死になんて考えてる余裕なんてないです!」


「君達は能力者だろう、それくらいのこと」


「そのそれくらいのこともできないで他人任せにしてるのは誰です?能力者を魔法使いか何かと勘違いしてないですか?私達は能力を持っただけのただの人間です、傷を負えば血が出るし死にます、そんなこともわからないんですか」


吉岡に肉薄して堂々と反論する雪奈、その姿を見て静希は幼き日のことを思い出していた


自分が間違っていると思ったり、自分の頑張っていることを馬鹿にされるとああやって雪奈はどんな人間にも自分の意見を言ってきた、自分が正しいと思うことを言ってきた


同級生や、上級生、先生にだって自分の言葉をぶつけていた


変わっていないなと呆れながら、半ば嬉しく思いながら静希は立ちあがる


「雪姉、そこまで、少し言いすぎだよ」


「でも静!」


どうやら言い足りないらしいが、このまま雪奈に対応させては話がこじれる上に問題が起きかねない


「でも吉岡さん、雪姉の言うことも正しいです、現場で戦うのは俺たちなのに貴方はそれを言うだけというのは虫が良すぎます、俺達が依頼されたのはザリガニの駆除、それ以上を求めるのなら貴方も協力してください」


「・・・協力?」


「はい、貴方がザリガニを捕獲する案を考え、そして現場までついてきて俺達に逐一指示を飛ばして下さい、俺達はそれに従いましょう」


「・・・な・・・なにを馬鹿な!」


吉岡は明らかに動揺していた


まさか自分に火の粉が飛んでくるとは思っていなかったのだろう


「馬鹿な?それをやらせようとするんですから何か策があるのでしょう?俺達の能力も教えましょう、知恵も貸しましょう、だから現場までついてきて下さい」


「策を考えればそれでいいだろう!?何故ついていく必要がある!?」


「策は一つ二つで足りるものではない上に全てメンバーが理解しているとは限りません、作戦を正しく理解している人間が指示をするのは当然です、それに作戦が実行できない状況に陥った際、バックアップ案を、それも通じないのなら最悪目標を殺すことになる、その許可を貴方に出してもらわなきゃいけなくなる」


「・・・だがそんなもの携帯で連絡すれば」


「実際のその時刻の地形を見てもいない人間に現場の何がわかるんですか?それにいちいち携帯で連絡していては時間のロスだけでなく俺達が危険になります、わかっていただけますね?」


「・・・う・・・だが・・・」


吉岡はそれ以上何も言えないようだった


どうやら彼は最初から安全なところでものを言うだけのつもりだったのだろう


まさか自分が命の危険にさらされるかもしれないとは思っていなかったようだ


「目標はどんな手段を用いても駆除します、自らを危険にさらす覚悟もないのなら俺達の仕事に口出ししないでください」


静希の言葉に吉岡はその場にいることが耐えられなくなったのか足早に部屋から退出していった


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