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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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戦闘後の小会議

だが落ち込んでもいられなかった


目標は今も生きている


逃げかえったということは巣が近くにあるということだ


幸い明利のマーキング済みの種も取り付けられた


「明利、あいつが今どこにいるかわかるか?」


「うん、もうだいぶ移動してる・・・このずっと先・・・地図で言うと・・・この辺りかな」


明利が指さしたのはここからさらに上流


もうすでに静希達が到達した場所を通り過ぎてしまっている


「あ、止まった、ここで止まってる」


そこは地図上では急に傾斜の変わる場所だった


資料の上ではここには滝があることになっている


「一応そこになにがあるのかだけ確認しておくか?」


「でも時間的に余裕もなさそうね」


時刻は十六時を回っている


ここまで来るのに慎重に移動しすぎたというのもある、急いで帰れば一時間とかからずに町までは戻れるだろうが、戦闘するとなると微妙だ


すでに山に入ってしまっているためにもともと少なかった日光の光は遮られ薄暗くなっている


雨雲のせいもあってここからさらに暗くなっていくだろう


このまま巣の所在までを確認するかどうか、それとも一時撤退するか


「どうする班長?このまま進行か、それとも撤退か」


「・・・皆の意見を聞きたいわね、皆はどう思う?」


鏡花は班長としてこの状況を判断しなくてはならなかった


最悪自分の判断で全員を危険にさらすことにもなるのだ


「俺は一時撤退を上申する、少し情報も整理したいしな」


「巣を確認するだけならいいんじゃねえの?いざとなれば逃げればいいし」


「わ、私は一度戻った方がいいと思う、もし町の方に来ても私の能力で感知できるし」


「私は一時撤退、こんな装備じゃあいつを殺しきれないよ」


「遠くから目標を確認する程度なら問題はないと思うが、危険もある、判断は任せよう」


全員の意見を聞いたうえで鏡花は腕を組んで眉間にしわを寄せる


時間はない


こうしている間にも刻一刻と日没が近付いてきている


「一時撤退しましょう、今夜は町に目標が入らないように牧崎村の時のように見張りを立てる、できるなら目標の情報を改めて収集したいわね」


鏡花の指示に全員が頷く


今回の目標は地形把握とできるなら目標に接触


最低限の目的は達した


無理に進行して怪我でもしたらたまったものではない


明利のマーキングもすでに終え、静希達は一度町に戻ることにした


「にしてもあれだな、あの町の人よくあんなもんに対峙して生きてたよな」


「対峙って言うか一方的にやられてただけ見たいだけど」


「あの大きさだと俺達も餌くらいにしか見えてないんだろうな・・・」


今更ながらあの大きさのザリガニを見たという恐怖から身体に震えが来る


そもそも奇形種というのにあれだけの大きさというのは異常だ


「てか雪姉や熊田先輩はああいうのに遭遇したことは?」


「ない、変な形ばっかのやつはいたけど、あんなでかいのは見たことない」


「俺もないな、帰ったらその旨報告して城島女史に聞いてみよう、何か知っているかもしれないしな」


「はぁ、雪姉はともかく熊田先輩も知らないんじゃ仕方ないですね」


正直情報源として雪奈は全く役に立たない


何せ自分がなにと戦っているのかもしっかりと理解しないような人なのだ


「ちょい待ち静、まるで私が役立たずとでも言いたいような感じじゃないのかい?」


「んなわけないだろ、こと接近戦において一番攻撃力があるのは雪姉なんだ、これでも頼りにしてんだぞ」


「そ、そうか?全く静はしょうがない奴だな、私がいないとだめなんだから」


内心舌を出しながらも静希が言ったことは本心だ


先ほどの戦闘を見ても思ったが雪奈は未知への攻撃手段への模索が非常に早く的確だ


甲殻を切り裂けないと判断するや否やすぐに攻撃対象を甲殻からその隙間や関節へと変更


そしてその攻撃を一度で成功させている


これは能力による技術会得などではなく自らの身体と刃のみで奇形種と戦ってきた雪奈の経験からくるものだろう


自分がどのような攻撃ができ、相手に対してどの攻撃が有効かを瞬時に判断して実行できる


陽太のような考えなしの猪突猛進タイプとは違い、思考したうえで最善の攻撃をする


陽太を狂戦士とするなら雪奈は精錬された騎士か兵士といったところか


「でも静希、一度戻るって言っても何か策はあるの?あのままじゃじり貧よ?」


「わかってるよ、とりあえず戻ったら雪姉は武器を送ってもらえるように電話して、俺達はその間に明日の行動を決める、特に切札を切らなきゃまずいっぽいしな」


静希は眉間にしわを寄せながらため息をつく


「切札って・・・硫化水素はまだできてないんじゃ」


「それは俺の切札だろ、そうじゃなくて明利の切札だ」


「・・・明利の?」


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