情報収集開始
城島に行動内容を知らせ静希達は行動を開始する
「先生もついてくるんですか?」
「依頼人には顔を見せておかなくちゃいけないんだ」
要するにそれ以外はほとんど何もしないということだ
なんとも城島らしい
資料の地図を頼りに町を散策していると、町の中央に位置する川、そして町をつなげる大きな橋、そのそばに漁業組合の建物はあった
二階建のそれほど大きくない事務所のようだった
とりあえず中に入り誰かいないかあたりを見回していると四十そこらあたりの男性が二階から下りてくる
「おや、君達は?」
「初めまして、依頼を受けてまいりました、喜吉学園の者です」
「おぉ、お待ちしておりました、どうぞ上へ」
相変わらず大人相手だと非常に丁寧な対応だ
目の前にいるのが実は城島ではないと言われても今の状況なら信じこんでしまうかもわからない
建物の上は事務所兼応接室になっているらしく二つのソファと机がいくつか置いてあった
そして事務員らしき人がパソコンに向かって仕事をしているのも見受けられる
「どうぞおかけください、遠いところからどうもありがとうございます」
「いえ、こちらも生徒の実習という名目で行動している身、どうかお気になさらず、喜吉学園一班引率兼審査員城島です」
「おぉ、失礼しました、私支倉町漁業組合組長を務めさせてもらっています、荻野と申します」
大人だ、大人の対応だと生徒全員が苦笑いを浮かべている中城島が全員に視線を向ける
「ここからの行動はすべて生徒に一任してあります、できるのであれば彼らに協力していただければ幸いです」
「もちろん、できうる限りの協力を約束します、ですがなにをすれば」
荻野が思案するところでそこから班長の鏡花に引き継ぐことになる
「初めまして一班班長清水鏡花です、まずは破壊された船を見せていただいて資料にもありました写真を撮影した人物、そして捜索時目標を視認した方々にお話を伺えればと」
「なるほど、では船の方は私が案内しましょう、撮影者と目撃者についてでしたら今は町の詰所のほうにいると思います、船の後でご案内しましょう」
年下でありただの子供に見える鏡花にも敬語を使うところを見ると非常に礼儀正しい人物のようだ
いまどき珍しい人柄をしている
「地図か何かを書いていただければ自分たちが向かいます、できる限り時間を短縮したいんです」
静希の申し出に荻野はおぉそうですかと少し驚いた様子で印をつけた地図を静希に渡す
「この印の場所が町の詰め所です、川の反対側ですので行けば分かるかと、そこにいない人物もいるでしょうが事情を話せば引き合わせてくれると思いますよ」
「ありがとうございます、鏡花、俺達は聞き込みに行ってくる、船の方は任せた」
「了解よ、では荻野さん案内よろしくお願いします」
静希達は橋を渡って町の反対側へ、鏡花達は川の近くにある倉庫へ向かうことになる
そして城島は挨拶が終わるとさっさと民宿に帰ってしまった
荻野に案内され鏡花達は破壊された船を置いてあるという倉庫にやってきていた
中は暗いが荻野が倉庫内の電気をつけると僅かに照らされ、倉庫の隅においてある破壊された船を見つけることができた
「これがその船です、破片などもできる限り集めてあります」
「うわ、結構ひどいな」
船を見た陽太が眉間にしわを寄せる
それもそのはず、写真で見ただけでは分からなかったがその船は大破というにふさわしい程に壊れてしまっている
片側から見れば衝撃で半分になっているだけに見えるが、もう反対側は抉られているかのように大きく破砕されもう船としては役に立たないであろうことを物語っている
「とりあえずお仕事しましょうか、熊田先輩もお願いしますね」
「任されよう」
鏡花が直に触れて構造理解、熊田が音による超音波でどのような状況になっているかを調べる
「どうだ?なんかわかったか?」
理解を終えて鏡花は唸り始める、それは熊田も同じだった
「わかったにはわかったわ、でもずいぶん強い力で押しつぶされたってことくらいね、しかも片方じゃなくて両方から挟むように潰されたって感じ」
「うむ、片方だけがつぶれていることから、同じ力ではなく片方の方が強い力か、または片方は支え、もう片方で潰すといった力だということが分かるな」
鏡花と熊田の解析に陽太は首をかしげる
「なんかハサミみたいだな、今回の敵ザリガニだし」
「自分の身体と同じ動作で念動力を発生させる能力かもね、でも少なくとも炎とか雷とか、そういう類の能力でないことは確かよ」
鏡花は懐からカメラを取り出し三百六十度全ての角度から写真を撮り始める
「荻野さん、この船を直しておきたいんですが構わないですか?」
「え?あぁ、それは構いませんけど」
「そいじゃお仕事お仕事」
鏡花が破砕された船に触れ能力を発動すると見る見るうちにその形を変え恐らくは壊される前の船が再現される
「おぉ、すごい!」
「材料が足りなかったので少しだけ小ぶりになってます、他に目標に壊されたものなどはありますか?」
「でしたら漁の道具がいくつか、お願いしてもよいですか?」
「えぇもちろん」
鏡花は営業スマイルを向けて荻野についていく




