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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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支倉町

雪奈が目覚めたのは静希の読み通りジャスト二時間後


そろそろ目的の駅に着くから乗り換えなくてはというところだった


「んあ、あれ?静?」


「おはよう雪姉、そろそろ乗り換えだ」


「んん・・・もう少し・・・・・・っ!?」


まどろみの中に沈もうとしている雪奈が枕を抱き止めようと顔をうずめた数秒後、自分がなにを枕にしているのか気づいたらしく跳び起きて静希から離れる


「し、静?なんで私は静に膝枕を・・・!?」


「雪姉が寝たから仕方なくだよ、ほら降りる準備しろ」


他の班員はすでに下車準備を終えて雪奈の様子を見ていた


中でも鏡花と熊田はニヤニヤと雪奈の様子をうかがっている


「あ・・・あぁぁぁあ!そこの二人何故笑うかぁぁ!」


雪奈が荷物を振り回すのをひらひらとかわす二人はにやけ顔をやめようとせず羞恥で顔を赤くする雪奈を下車しても微笑ましく見ていた


「いやはや、深山の貴重な弱みを握れた、感謝するぞ五十嵐」


大変満足したようで熊田は思い出し笑いを浮かべている


「構いませんよ、だいたい雪姉はあんな感じですから」


「確か昔馴染みなのだったな、昔からああなのか?」


「えぇ、子供のころから寝起きはあんな感じで、最近少しはまともになってきたと思ってたけど変わってないですね」


「昔はもっと激しかったよな、静希に抱きついたまま寝たり、明利を枕にしたり」


「静!陽!余計なこと言わないの!」

家が隣というだけあって静希は昔から雪奈の面倒を見てそして面倒を見られてきた


陽太や明利と一緒に昼寝をしたことも数知れない


昔は恥ずかしげもなく抱きついてきたり、抱き枕にされたりと色々されたものだが、どうやら成長した今は恥ずかしさが優先されるようだった


「いやぁ、雪奈さんのああいう姿は新鮮ですね、これからいい話のネタにさせてもらいます」


「鏡花ちゃん?それは宣戦布告と見なしてもいいのかな?」


「ゆ、雪奈さん落ち着いて」


「酷いよ明ちゃん!皆がいじめるんだ!お姉ちゃんの心を癒しておくれ!」


「そこまでだ、そろそろ行くぞ」


明利に被害が行くのを食い止めて静希達は乗り換えるために降車しとりあえず目的の駅へと向かう


各駅停車でついた駅はやはり雨


ここからバスで数十分ほど移動したところが今回の実習地、支倉町である


中心に流れる川が町を両断し、川の先は海へと、川の上流は山と別の町へとつながるように二分される


町の間には大きな橋がかかり、川の周囲にはいくつもの住宅街や建造物が並ぶ


川を中心に作られた町であるとすぐさま判断できた


川の水量はやはり多くなっている


雨のせいか土が混ざり茶色の水となって勢いよく流れている


だが川幅が広いせいかそれほど水位が高くなっているわけではないようだ


「とりあえず民宿に荷物を置いてから行動開始するぞ、昼食は全員持ってきているな?」


城島の言葉に全員が間延びした返事をする


時刻は十一時過ぎ、昼食には少し早い時間だ


今回世話になる民宿にたどり着くと従業員が二つの部屋へと案内してくれた


男部屋と女部屋、さすがに一つの部屋は情操教育的によくない


以前のような大広間を二つに分けたような空間ではなくしっかりと二つの部屋をあてがわれた


荷物を置いてとりあえず全員集合する


「それじゃ、当初の予定通り情報収集から始めましょう、静希、今回はどういう班わけでいく?」


もはや行動の具体内容を考えるのは静希が担当となってしまっているようで班長鏡花が直々に指示を聞く始末


静希も頭脳労働が性に合っているため文句はない


静希は少し思案したうえで口を開く


「二手に分かれるのは前回と同じ、でも漁業組合の詰め所があるところまでは一緒に行く、そこでまずは破壊された船の調査、これは鏡花、陽太、熊田先輩にお願いする、俺、明利、雪姉は人に聞き込みだ」


「一応聞いておくけど、もうその組分けは決定なのね?」


陽太と一緒になるのが気に食わないらしいがその嫌悪は以前ほどではない、鏡花自身陽太の評価を改めているようだった


「船が破壊された写真から何らかの圧力が加わったか、それとも別の攻撃か俺と雪姉、明利じゃ判断ができない、鏡花と熊田先輩で詳しく調べてほしいってのが一つ、川が近いから万が一の為に陽太は護衛だ、一切不明の能力に対抗できるのは鏡花の盾と陽太の身体だけだからな、防御重視っていうのが一つだ」


理路整然とした内容に鏡花はため息をつく


「わかった、わかったわよ、それで?他にすることは?」


「十三時くらいに一度民宿に集合、あとできるなら船を直すところの写真も撮っておいてほしい」


「はいはい、また私の仕事が増えるわけね」


「頼むよ、この中じゃお前しか変換系統がいないんだ」


「わかってるわよ、それじゃ行きましょうか」


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