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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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強制連行

その日の授業が終わり放課後、予定通り班の班長が集まって職員室に任務の資料を受け取りに行っている間、以前ほどではないが少しそわそわしたような空気とともに静希達は自分達の班長が戻ってくるのを待っていた


静希達は三度目とはいえこうして待たされる時の緊張感は実戦とはまた違う独特の空気を持っている


「何かあれだな、歯医者の待合室みたいな空気だ」


「何かわかるけど、歯医者ほど絶望感漂ってるわけじゃないだろ、ドリルの音も子供の泣き声も聞こえないんだから」


静希が歯医者の世話になったのは二度、どちらも乳歯の抜歯の為だったが幼いながらにトラウマを残すには十分な空間だった


独特な薬物の匂い、妙な音楽、申し訳程度においてある雑誌、そして子供の泣き声と悲鳴


それに比べればこの空間は十分に穏やかだ、何せ楽しみだという感情を持っているものもいるのだから


教室の扉が開き、生徒の何人かが立ち上がると各班の班長が戻ってきた


そしてそれに続いて担任教師城島も教壇前に姿を現す


「えー、各班資料をよく読んで実習にあたるように、週末だからな?体調管理もしっかりしておくこと、以上解散」


それ以上言うことはないらしく城島はさっさと退出してしまうと教室内は一気に騒がしくなる


二度目の実習がどんなものであるかを話し合っている班がほとんどだ


「さて、それじゃあ前回と同じように静希の家でブリーフィングでいいかしら?」


「あぁいいぞ、ついでにもう雪姉達にも声かけに行こうぜ、どうせあとで話すなら今話しても一緒だろ」


「そうね、メール送るの?」


「迎えに行った方が早くね?すぐ近くだしさ」


「そうだね、二年B組だっけ?」


「おう、んじゃ迎えに行くか」


静希達はとりあえず資料を鏡花に預けたまま二年B組に向かう


小学校から共通して言えることなのだが他学年の領域に入ると強烈な違和感というか圧力のようなものを感じてしまう


場違いと言い換えてもいいがなんだか自分がいてはいけないのではという感覚になる


二年生もすでに授業は終わっているらしくHRの最中だった


何やら伝達事項があるらしく、少し待っていると数名の生徒が教室から出ていくのが確認できる


それを見計らって教室内を覗くと静希はすぐに雪奈を見つけることができた


「雪姉、ちょっといいか?」


比較的大きな声で話しかけながら近付くと雪奈はすぐに気付いたが驚いた顔をしていた


「静、なんでここに?」


「ちょっとな、このあと時間あるか?」


「っ!あ、あぁ、暇だけど」


雪奈が少しドギマギしながら対応していると彼女の背後から一人の女子生徒がその首に絡みつく


「なに雪奈、この子知りあい?」


「前話した私の担当してる一年生だよ、ほら、トランプの」


「あぁ・・・でも『雪姉』なんて言わせてるんだ?」


「うるさい!で、静、何の用だ?」


どうやら同じ班の人間らしく仲の良い二人に少しだけ気圧されながら静希はもう一人の目当ての人物を探す


「熊田先輩も一緒だといいんだけど、どこいるか知らないか?」


「え・・・あいつなら・・・いた、あそこにいるぞ」


雪奈が指さす先に熊田はいた


何やら一人の男子生徒と話しているようだった


「でも静、なんであいつも?」


「なんでって、今度ある校外実習のブリーフィングしようと思って、いっぺんにやっちゃった方がいいだろ?」


「・・・なんだ、そういうことか」


雪奈は目に見えてがっかりしているようだった


そしてその様子を見て先ほどまで絡んでいた女子生徒がニヤニヤと笑う


「えと、君が雪奈の担当してる子?」


「あ、はい、初めまして五十嵐静希です」


「初めまして、雪奈と同じ班の井谷紅葉、静希君か・・・静なんて呼んじゃって、仲良さそうじゃない?」


「うるさい!昔からこの呼び方なんだ仕方ないだろ!」


「昔から?なにそんなに長い付き合いなの?」


「・・・!もういい、さっさとあいつ引きずって帰るぞ!」


雪奈が怒りながらそして恥ずかしがりながら熊田の元に歩いていきその首根っこを掴んで引きずっていく


「お、おい深山!?なんだ!?なにごと「あ、熊田先輩ちーっす」おぉ?響?それに清水に幹原も、なんだなんだ?どういうことだ?」


状況を上手く理解できていないのだろう、混乱している熊田の荷物を回収し静希もその後に続く


この状況を熊田に説明したのは静希の家についた後のことだった


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