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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」

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雨天決行

六月、梅雨前線が活発に動き出し日本が全国的に雨の多い天候となるその季節に喜吉学園の生徒は何ら変わりなく演習を繰り広げていた


雨の降る中でも関係なく、むしろ雨が降っているからこそ彼らは積極的に演習をしなくてはならない


それは静希達も同じことだった


砕けた岩から身を守りつつ静希は後退し状況を確認している


轟音を響かせながらあたりに破壊をもたらしている目標は岩の上で悠々と静希達が襲いかかってくるのを待っていた


静希達が受けている授業内容は圧倒的強者との戦闘法


多対一においてのみという限定された状況設定だが、これが非常に骨が折れる


静希達が今いるのは岩石地帯演習場、クラスを三つの演習場に分け各班に一人教員が対峙する


今戦っているのは担任教師であり校外実習の目付け役城島である


その両手にはトンファーと呼ばれる打撃用の武器が握られており明らかな戦闘態勢を取っていることがうかがえる


「ほらほらどうした!?攻撃しないと相手は倒れてくれないぞ!」


安い挑発に陽太が能力を全開にして突っ込む


全力で振りかぶる拳が命中するその刹那、城島の足が陽太を高々と蹴りあげる


城島の陽太に対する戦法は先ほどからまったく変わらない


攻撃を加えられる寸前に見切り、上空へ蹴りあげ距離を作る


これが陽太にとって最も効果的な戦法だ


陽太の能力は炎に依存した身体能力強化


だが体積が増えることはあれどその体重が変わることはない


陽太は炎の操作が圧倒的に苦手であり、自らの周囲に纏わせる程度しかできず炎を噴射しての姿勢制御や浮遊などはまったくできない


故に空中に打ち上げられては落下するまでほとんど無力になってしまう


しかも空中高く打ち上げられてから落下するまでの時間経過、状況は雨、常に陽太の能力は水によって減衰され続けている


接触は一瞬、だが戦闘時間は長くなる


現状において陽太に対して行う行動として最善とも言える策を城島は何度も繰り返している


足にわずかな炎がともるが、そんなものはないものと同じとでも言うかのように足を何度か振って消してしまう


「さっきから突っ込んでばっかで、それ以外に戦い方がないのかお前は!?」


「んなもんないですよ!正面突破!それ以外に俺の辞書に四文字熟語は載ってません!」


空中で何とか体勢を整えていともたやすく着地するも定期的に気力をあげなければ炎の維持が難しい


いかに高温といえど連続して温度を下げられていては必ず炎は消えていくものだ


陽太も同じ、雨は陽太の天敵とも言える天候だった


一見劣勢に見える状況だが静希とてなにも策を講じなかったわけではない


城島の周囲に突然大量のトランプが顕現し何本ものナイフが城島に襲いかかる


だが一本たりとも城島には命中しない、刃が身体にあたる寸前に何かの力がかかり軌道が変化させられてしまう


だが本命はナイフではない


背後からオルビアの剣を握り城島に向けて斬りかかる


それと同時にトランプによるナイフの攻撃は継続


トランプによる視界制限、そしてナイフによる撹乱、最後に自ら剣を使っての白兵戦


城島のトンファー相手に静希は絶え間なく白銀の剣を打ちつけ続ける


その動きはわずかではあるがオルビアの剣筋に似てきていた


毎晩のようにオルビアに剣の指導を受け少しずつ剣技を自らの物としている


だが城島の身体にはかすり傷一つ付けられない


全て見切られ受け流される


埒が明かないと察したのか陽太が背後から突進をかけるがまた先ほどのように天高く打ち上げられてしまう


そしてそのついでとでもいうかのように静希の腹部にも深々と蹴りがめり込み数m吹っ飛ぶと同時に鏡花の能力が発動する


城島の周囲の岩を形状変換し以前の陽太のように地面に埋めようとする


だが地面が融和した中に城島の姿はない


「いい手だが、いかんせん詰めが甘い、こんなんじゃ数秒でお陀仏だぞ」


いつの間に移動したのか、先程いた地点から数メートルも離れた場所を城島は悠々と歩いている


「んなこというなら・・・ちょっとは手加減してくださいよ・・・!」


「ふざけるな、十分手を抜いている、お前達を殺さないようにびくびくしてるぞ」


城島がけらけらと笑いながらそんなことを言うがまったく冗談に聞こえない


いや実際城島は自分達を殺さないように最低限の手加減をしている


それなのに彼女の言った言葉は「殺すつもりで来い」だ


静希達の実力では彼女を本気にさせることはできないということでもある


「静希!キャンドルサービス使おうぜ!このままじゃ勝てる気しねえよ!」


「馬鹿言うな!あんなもん先生相手に使えるか!」


「あんた私には使ったわよね?」


「あれは壁があったからノーカンだ!」


静希と陽太の連携技の水素爆発なら確かに城島に対して有効であると静希は理解している


だが仮にも授業で死傷者を出すわけにはいかなかった


「ふむ、そろそろ時間だな・・・後一分以内に終わらせる、せいぜいあがいて見せろ」


城島の言葉が終わると同時に、その体を水平に跳躍させた


静希に向けて急接近しトンファーを叩きつけ剣を弾き、首に足をかけそのまま岩めがけて投げつける


強烈な痛みが静希を襲いその直後強烈な圧力が上から加わり静希を地面に押し付ける


静希が捕縛されたのを確認して鏡花が能力を発動し一斉に拳を作り出して城島に襲いかかるが、そのすべてを高速で移動することで容易にかわしていく


鏡花の眼前にたどり着くと関節技を決め地面に押し付け先ほどの静希と同じように圧力を与え動けなくする


「くっそ、後戦えんの俺と明利だけかよ」


「えと・・・私に戦うのは無理だと・・・」


先ほどから物陰に隠れているしかない明利は静希に駆け寄りながらまずは傷を癒している


明利には戦闘力はほぼ皆無である、身体能力が高いわけでもなく戦闘向きの能力でもないためにこういう時行えるのは退路の確保と索敵くらいだ


「安心しろ、あと五秒でチェックメイトだ」


「ああん?先生俺をさすがに舐め過ぎなんじゃ」


ないですかと言いかけた瞬間陽太の頭上から大量の水の塊が降り注ぎ陽太の炎を消した


そして同時に陽太に強烈な圧力がかかり静希達と同じように捕縛される


「戦闘を行える人員全て行動不能、状況終了だ」


六話スタートです


今回は校外実習のお話


これからもお楽しみいただければ幸いです

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