表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
五話「五月半ばの家族の一日」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/1032

陽太の感情

「よし落ち着こう、なにはともあれ行動だ、動き続けていれば見つかることもないかもだろ」


あらかた後悔を終えた後陽太はなにはともあれ行動を開始することにしたらしいのだが具体性がまったくない


「ていうかこの街適当にうろついてればみつからないんじゃないの?そうそう一人の人とピンポイントで遭遇することなんてないわよ」


「それが実月さん以外ならな」


鏡花の認識はおおよそ正しい、だがそれが普通の人間だった場合の話だ


「さっきも言ったけどあの人は恐ろしく頭がいい、その上能力者、しかもその能力が異常でな・・・物体に対して同調するのはいいんだけどその同調は電子機器が主でネット環境さえあればほとんど街一つ監視下におけるくらいだ」


「なにそれ、ただの同調じゃないってこと?」


「んん、そうだなただの同調ではない」


響実月の持つ能力について静希が知ることはさほど多くない


パソコンなどの電子機器に同調しその内部に在る情報と機能を全て自分の手足のように操れること、そしてノートパソコン程度の処理能力さえあれば街に設置されている監視カメラや警備機能の全てを掌握できるということ


彼が知るのはこれくらいだ


そしてそれは陽太も知っている、だからこそこうして焦っているのだ


いくら陽太の姉とはいえ電車を止めたり周囲に実害を出すようなことはしない


つまり陽太がこの街から逃げられるか、それとも実月が追い詰めるか、突き詰めればそういう話なのだ


「ちなみに陽太が今まで逃げられた例はないな、今まで全部見事に捕まってる」


「捕まった後どうなった訳?」


「さあな、姉弟の間に水を差すほど野暮じゃないよ」


あわてまくっている陽太をさておいて小学生達を眺めている静希は完全に傍観モードに入っている


自分はこの件に関わる気はないよと無言で示しているようだ


「こ、こんなところにいつまでもいられるか!俺は逃げるぞ!」


「わざわざ死亡フラグを立てなくても・・・」


相当混乱しているようで右往左往しながらもその場から走り去っていく姿を静希はため息交じりに見送った


「・・・私、後を尾行してみようかな」


「ほう?またどうして」


「だって気になるじゃない、あいつのお姉さん見てみたいし」


単純な好奇心から来る行動ではあるが、この場合はプラスに働くだろう


最もその結果がプラスになるかは分からないが


「じゃあ二つアドバイス、一つ、公共機関は使わない方がいい、二つ、あいつが急に冷静になったら気をつけろ」


「なんで?冷静になったならいいじゃない」


陽太が冷静になるというのがあまり想像できないのだが、それをさておき静希は続ける


「あいつの能力は感情と意志で発動するのは知ってるよな?訓練してある程度感情が上がってもスイッチを入れなきゃ能力が発動しないようになったんだけど、感情が一定以上に上昇すると自動的に能力が発動する、んでもって陽太は感情にある種のリミッターを付けてるんだ、いや付けられたって言った方が正しいか」


「どういう意味よ?」


陽太の訓練、感情を抑制する訓練であれば鏡花もいくつか聞いたことがあるが、陽太がそれを行っているとは思えなかった


元来気性の激しい陽太が肉体ではなく精神的訓練を行っている姿も想像しにくい


「あいつは感情が一定以上になると自分で自分をクールダウンさせるようにしたんだ、言ってみれば冷静になるってこと、さっきまで怒ってたのに急に冷静になったらそれは危険信号だ、感情が爆発する寸前、言いかえれば能力が暴発する寸前ってこと」


「今回それがあり得るってこと?」


「今回の場合怒りじゃなくてパニックでそうなるかもな、まぁ周囲に迷惑かけないように見てやってくれよ」


「・・・了解」


静希の言葉を頭の隅に置きながら鏡花は走り去った陽太の後を追う


陽太の走る速度は本来班の中では一番速いのだが、気が動転しているためか直線的ではなくどの道に行こうか迷いながら走っているため追いつくのは容易だった


「ちょっと陽太、少しは落ち着きなさいよ」


「おぉ!?何だ鏡花か、驚かすなよ」


「だから落ち着きなさい、思い切り挙動不審になってるわよ」


あちらこちらを気にしながら周囲に姉の影がないかをしきりに確認している


巡回中の警察がいれば職務質問と任意同行をされそうなほどに気色が悪い


見る人が見れば通報しそうな程に不審者の装いを醸し出している


「だってよ、もうこの街は丸ごと姉貴の掌の上だ、動きまわるって言ったけどどこに行けばいいのか」


やはり具体性も計画性もまったくない行動だったかと半ばあきれながら鏡花は頭の中でこの街の地図を広げる


「陽太確認させて、お姉さんの能力は電子機器に同調してその機能を乗っ取ることに在るのね?」


「あ、あぁ、それだけじゃなくて自分からいろんなところにハッキング仕掛けて情報収集できる」


「つまり彼女自身に強烈な移動手段や行動能力はないわけね」


それだけ聞いて鏡花は頷く


「よし、それじゃあ逃亡生活開始と行きましょうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ