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J/53  作者: 池金啓太
五話「五月半ばの家族の一日」

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ランニング

「マスター、明利様、よろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「なんですか?」


二人が反応するとオルビアは二人の間に立ってこほんと咳払いする


「マスター、最近メフィストフェレスと邪薙に釣られ菓子を食すことが多くなってきたと聞きます、そしてその分脂肪も増えるのではないかと」


「あぁ、まぁ捨てるのももったいないから仕方ないな、なんか運動でもすりゃ良いんだろうけど、スポーツなんてやってないし」


今まで菓子など食べる習慣のなかった静希にとってこの差は大きい、単純に食べる量が増えただけなのだから


「そして明利様、以前より体力がない事を懸念しておられるとか」


「は、はい・・・長時間走ってるとすぐによたよたになっちゃって」


明利の身体能力の低さは昔からだ


彼女自身身体を動かすのが苦手というのもあるのだろうが、それを差し引いても体力の低さは目に見えずとも明らかだ


「そこで、マスターと明利様、一緒に毎朝ランニングなどしてはいかがでしょうか?」


「「ランニング?」」


シンクロして疑問符を飛ばす静希と明利にオルビアは続ける


「はい、マスターは適度な運動の為、明利様は体力強化の為に、一人では続きにくいものも二人であれば続けることが容易であることが多いと聞きます」


「で、でもランニングって」


「それほどたいしたものではありません、最初は散歩程度のものから徐々に本格的にしていけばよいのです、距離や速さよりも続けることが大事なのです」


静希と明利に気付かれないように雪奈が親指を立てたのをオルビアは笑みを持って返す


「いいんじゃない?私も太ったシズキなんて見たくないし」


「うむ、健全な精神は健全な肉体に宿る、適度な運動は必要不可欠だ」


居候二人もこの案には賛成のようだ


この二人は走る必要もなくただだらけるだけなのだろうけど


静希は明利に視線を向け断れる空気でないことを悟ると渋々納得する


「それでいつからやるんだ?まさか今日からか?」


「いえ、決まった時間にやることが大事なので明日の早朝から始めましょう、マスターが明利様の家まで走って迎えに行くか、はたまた明利様がここまでマスターを迎えに来るか、それはお二人にお任せします」


オルビアの言葉にようやくその意図を理解したのか、そしてオルビアにそうするように差し向けたのが誰なのか察したのか、明利は雪奈を軽く睨む


睨むと言っても力も迫力もない、そんな目に睨まれても雪奈はまったく痛くも痒くもないが、上手くない口笛を吹いてごまかしていた


「だ、だったら雪奈さんも一緒にどうですか?適度な運動は身体にいいですよ?」


「何言ってるんだい明ちゃん、私は常に動きまわるのが仕事だよ、運動なら十分している、今更走り込みなんてする必要はないのさ」


せめてもの仕返しなのか、雪奈を巻き込もうとするがそれさえも軽々しくかわされてしまう


そう、雪奈の身体能力は折り紙つきだ


もともと身体能力を底上げするタイプの能力であるが雪奈は頭脳労働より肉体労働の方を得意分野とするため昔から走り回ったり運動したりは日常茶飯事


静希が巻き込まれたことも数知れないが、そのおかげというべきか、そのせいというべきか、雪奈の身体能力は能力なしでも結構高い


走力で具体的に挙げるなら五十mを六秒台で走り抜けるくらいに速い


彼女の言う通り今更走り込みをする必要など皆無だ


「じゃ、じゃあオルビアさんどうですか?一緒に走りませんか?」


「私はすでに肉体という枠から解放されています、疲労もないので走るという行為には移動以上の意味はありません」


「あぅ・・・」


せめて立案者たるオルビアを巻き込もうかとも思ったのだがオルビアは霊装、すでに人ではない


人でないものが早朝にランニングするというのもある種珍しい光景だが本題からは外れる


重要な目的はダイエットと体力強化


他にそれらしい名目でもなければ誰もわざわざ走ろうとはしないだろう


「とりあえずあれだ、ウィンドブレーカーでも用意しとかなきゃな」


「それだけじゃないよ静、しっかりした運動靴も、ついでに静の家学校から近いんだから明ちゃんの制服とかも置いとけば?」


「え!?何でですか!?」


唐突な雪奈の発言に明利は珍しく声を大きくする


「だって汗かいた体で学校なんて行きたくないでしょ?静の家でシャワー借りてここで着替えていけばいいんだよ」


「・・・っ!」


明利は何かを想像したのか顔を真っ赤にしてしまう


「いやさすがにそれは・・・だったら雪姉の部屋隣なんだからそっちに置けばいいじゃないか」


「あ・・・それもそうか」


雪奈が明利に聞こえないように舌打ちをしたのを静希は見逃さなかった


「あ、そういえばね静希君、実は」


明利が何か言いかけた時静希の携帯に着信が入る


「悪いちょっと待ってくれ、電話入った・・・・・・げ・・・」


着信先は『城島』と記されていた


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